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ファイナンシャル・プランナー 藤田秀一郎
【プロフィール】千葉エフピー協会組合代表理事。事業オーナー、医師、未亡人、退職者などに実践的な経理・財務・法務・労務コンサルティングを行う。著書に「FPの知恵袋」(BKC)他がある。

藤田さん

第6回 確定申告を有利に行うテクニック(その4)

 前号では、所得税、住民税、健康保険税の3種類の税金に着目し、事業主が配偶者に支払う専従者給与の金額により家庭として負担する税金の総額がどのように違いその結果 、家庭としての使用可能資金(可処分所得)がどう変わるのか分析しました。
 少し復習しますと、配偶者に支払う専従者給与は多ければ多い方が良いということではなく、事業主の収入によって適正な金額があるということでした。  この事業収入に関連して考えなければならない他の視点があります、それは青色申告が良いのか?白色申告が良いのか?という考え方です。今回は青色申告と白色申告について分析していきます。
 「青色申告とは?」「白白申告とは?」その違いに青色申告は色んな税制上の特典ある反面 帳簿が大変だというイメージがあり、儲かっていないから白色申告でいいという考え方がされているような感じがあります。本当にそうなのか?両者のメリット・デメリットを分析しながら考えて参りましょう。
 この時、青色申告のメリットが白色申告のデメリットであり、青色申告のデメリットが白色申告のメリットという考え方ができますので、主に青色申告についてご説明させていただきます。

【青色申告とは】

 不動産所得、事業所得または山林所得がある人が一定の帳簿書類を備え、「青色申告承認申請書」を提出し、税務署長の承認を受けている場合の確定申告の方法です。確定申告書A, 確定申告書Bに変わるまではこの申告方法の確定申告書の用紙が青色だったので、今も青色申告と呼んでいます。

【青色申告のメリット】

 表1をご覧いただくと、青色申告の様々なメリットに気づきます。

表1 青色申告と白色申告の違い
1 所得税法上
内容 青色申告の場合 白色申告の場合
専従者給与 原則として、事前の届出書の金額の範囲内ならば全額必要経費にできる 控除額は専従者1人につき最高50万円が限度(配偶者は86万円)
現金主義
前々年の不動産所得の合計金額および事業所得の金額の合計が300万円以下の人は現金主義により所得計算できる
純損失の繰越控除 翌年以降3年間は繰り越して控除することが可能 制限されている(変動所得または被災事業用資産の損失に限って繰越控除ができる)
更正の理由付記 更正される場合には、更正通知書にその更正理由が付記される 更正の理由の付記は必要とされていない
更正の制限 帳簿調査に基づかない推計課税による更正を受けない 推計課税による更正を受ける場合がある
引当金特別償却 引当金や準備金、特別償却費(貸倒引当金、償却引当金、退職給与引当金など)を必要経費に算入できる
棚卸資産の評価方法 低価法 原価法のみ
2 租税特別措置法上
内容 青色申告の場合 白色申告の場合
青色申告特別控除額 所得を計算する際、最高55万円を差し引くことができる
準備金 輸入製品国内市場開拓準備金などの準備金を必要経費に算入できる
減価償却費 特定設備等の特別償却、中小企業者の機械等の特別 償却等の特別償却費を、必要経費に算入できる
所得税額の特別控除 試験研究費の額が増加した場合や特定の設備を取得した場合には、所得税の特別 控除が摘要される
3 国税通則法上
内容 青色申告の場合 白色申告の場合
更正の制限 更正があった場合に、異議申し立てか、直接審査請求かを任意に選択できる

 それでは主なメリットを取り上げ解説してまいります。

事業専従者給与

 白色の控除額は専従者1人につき最高50万円が限度(配偶者は86万円)であるのに対し、青色の場合は一定の条件を満たせば、事業専従者を全額必要経費にできることになっています。
 青色申告の場合は、以下の要件を満たす専従者について、「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出します。

  1. 不動産所得、事業所得または山林所得を生ずる業務を行っている
  2. 青色申告承認申請書」を提出し、税務署長の承認を受けている
  3. 税法で定められた帳簿書類を備え付け、適正な記帳・決算を行っている

 この届出書に記載した内容にしたがって事業専従者に支払った給与は、全額を必要経費にできます。なお、昇給など青色事業専従者に関する変更があったとき、青色事業専従者を追加するときは、必ず税務署に変更届を提出します。
 注意点は、配偶者が事業専従者になると、配偶者控除や配偶者特別 控除は受けられませんがこれは青色、白色に共通です。

純損失の繰り戻し
 損失を前年分の所得に対する税額から還付してもらえるという青色申告の優遇措置で大きな節税効果 を上げられる制度です。
 「損益通算」という制度ではある年度の事業所得が赤字になったとき、他の種類の所得で黒字があれば相殺します。それでも赤字が残った場合は、その赤字分は純損失として、翌年以降3年間に渡ってそれぞれの年の黒字から差し引くことができるというものです。
  新たに開業したときは、開業のためのさまざまな費用もかかり、事業が軌道に乗るまでは赤字ということが考えられます。1年目に大きな赤字が出て繰越控除を適用した場合、2年目、3年目に黒字になっても、開業時の赤字と相殺できるので大きな節税になります。
 ただし、新しく開業した年の確定申告で繰越控除を適用するには、開業後2か月以内に「青色申告承認申請書」を税務署に提出し、承認を受ける必要があります。また損失を繰り越す2年目以降の3年間も青色申告する必要があります。

青色申告特別 控除
 青色申告者は原則として「適正な記帳・決算を行っている」ことが条件ですが、これを奨励する特典として青色申告特別 控除があります。
 控除額は55万円、45万円、10万円の3段階ですが、記帳・決算をきちんと行っている人ほど優遇される措置です。但し、業務を事業規模で行っていない場合の特別 控除は、自動的に10万円となります。
  新たに開業したときは、開業のためのさまざまな費用もかかり、事業が軌道に乗るまでは赤字ということが考えられます。1年目に大きな赤字が出て繰越控除を適用した場合、2年目、3年目に黒字になっても、開業時の赤字と相殺できるので大きな節税になります。
 ただし、新しく開業した年の確定申告で繰越控除を適用するには、開業後2か月以内に「青色申告承認申請書」を税務署に提出し、承認を受ける必要があります。また損失を繰り越す2年目以降の3年間も青色申告する必要があります。

控除額55万円の適用要件

  1. 事業所得または事業的規模の不動産貸付による不動産所得がある
  2. 「正規の簿記の原則」にしたがって記帳している
  3. 損益計算書と貸借対照表を添付して、期限内に確定申告書を提出する

控除額45万円の適用要件

  1. 事業所得または事業的規模の不動産貸付による不動産所得がある
  2. 「簡易な簿記の原則」にしたがって記帳している
  3. 損益計算書と貸借対照表を添付して、期限内に確定申告書を提出する

控除額10万円の適用要件

上記の控除額55万円または控除額45万円の適用要件を満たさない青色申告者


 その他注目すべき青色申告のメリットには、売上が発生したときの金額ではなく、実際に回収したときの金額を売上金額とする現金主義、2種類の評価法から、得なほうを選べる棚卸資産の評価、特定の設備について、特別 償却や耐用年数の短縮ができる減価償却の特例、貸倒引当金、退職給与引当金などを必要経費にできる各種引当金の繰り入れ等があり、法人との有利不利の比較も次号以降で行っていきたいと思っています。

【青色申告のデメリット】

 青色申告のデメリットは、今まで述べてきたメリットを享受するための帳簿や手続きが中心になります。

青色申告者に必要な帳簿類
 青色申告者は、税法で定められた帳簿書類を備え付け、適正な記帳・決算を行うこと、とされています。確定申告する際、提出を義務づけられているのは、確定申告書と決算書(損益計算書、貸借対照表)ですが、それらは適正に記帳された帳簿類に基づいて作成されている必要があります。帳簿類は税務署から求められれば、提示しなければなりません。また一定の期間、保存しておく義務があります。必要な帳簿類と保存期間は表2のとおりです。

表2 青色申告に必要な帳簿類と保存期間
帳簿の種類 名称 保存期間
記帳/作成する帳簿や書類 仕訳帳/総勘定元帳/現金出納帳/預金出納帳/売掛台帳/買掛台帳/受取手形帳/支払手形帳/固定資産台帳/棚卸表(棚卸資産一覧表)/決算書(損益計算書・貸借対照)など 7年間※
その他必要な資料/証明書 小切手控など/預金通帳など/借用控など/相手方からの注文書/送り状など/領収書など/その他上記に順ずる書類 7年間※
契約書/見積書/請求書 5年間※
※保存期間は申請した年の3月16日が起算日

 青色申告のメリットに青色申告特別控除で控除額55万円というのがあり、その要件に、「正規の簿記の原則にしたがって記帳している」とありますが、この正規の簿記とは、複式簿記をいいます。複式簿記ではすべての取引を「貸方勘定科目」と「借方勘定科目」に分けて記帳します。 簿記には単式簿記という方法もあり、白色申告でも前々年または前年の申告で、事業所得、不動産所得、山林所得の合計が300万円を超える場合は、記帳と帳簿類の保存の義務がありますが、白色申告では単式簿記でもよいとされています。
  とはいえ、青色申告者は原則として複式簿記による記帳を要求されますが、売掛帳、買掛帳、現金出納帳、経費明細帳、固定資産台帳などの簡易帳簿での記帳も認められています。
 青色申告では、さまざまな優遇措置がある代わりにこうした帳簿類をそろえる義務があります。

 

【結論】

 青色申告を選択するかどうかのポイントとしては、白色申告でも前々年または前年の申告で、事業所得、不動産所得、山林所得の合計が300万円を超える場合は、記帳と帳簿類の保存の義務があるという部分です。
 前号の比較では明確に300万以上の収入がある場合、事業専従者給与の計上金額により、家庭としての使用可能資金が増やせるという事は説明しておりませんが、比較表を基にご自身の状況に応じて試算していくと、一般 的にはご理解いただけると思います。
 白色申告では、専従者給与の金額に限界があります。是非現在の収入と支出を再度確認いただき、専従者給与の見直しにより、家庭としての使用可能資金が増やせると判断され場合には、青色申告も前向きに検討いただきたいと思います。
 試算したい場合は「農通コンサルテイング」までお問い合わせください。


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