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ファイナンシャル・プランナー 藤田秀一郎
【プロフィール】千葉エフピー協会組合代表理事。事業オーナー、医師、未亡人、退職者などに実践的な経理・財務・法務・労務コンサルティングを行う。著書に「FPの知恵袋」(BKC)他がある。

藤田さん

第8回 緊急!税制改正のワンポイント(2)

 先月号では本年度税制改正の注目度1ともいえる「相続時課税清算制度」について解説いたしましたように、今年度の税制改正は眠れる個人金融資産およそ1600兆円(そんなにないかも知れませんが…)を動かそうという政府の願いと今号で解説する「直前の課税期間の年税額が4,800万円(地方消費税込6,000万円)を超える事業者は、中間申告納付を毎月(現行3月ごと)行うこととし、原則として、前年確定税額の12分の1ずつ申告納付する。事業者の選択により課税期間を3月とする特例制度について、新たに課税期間を1月とする特例を設ける。」といった消費税改正のように税収不足を何とか補いたいとする政府の野望が入り乱れた大幅な改正となりました。早速今までは関係なかった事業者の方も注目しなければ消費税の改正について考えて行きますが、改正前と改正後の内容を比較表(表1)にまとめてみましたのでまずはご参照ください。

表1 消費税改正の概要
    改正前 改正後
事業者免税点制度の適用上限 3,000万円 1,000万円
簡易課税制度の適用上限 2億円 5,000万円
その他改正後の重要な事項(下記)
消費税法において、事業者がその相手方である消費者に対して商品の販売、役務の提供等の取引を行うに際し、予めその取引価格を表示する場合には、その商品や役務に係る消費税等の額を含む価格を表示することを義務付けることとし、平成16年 4月1日から適用する。

 それでは具体的に消費税の改正について解説して参りましょう。まず「事業者免税点制度の適用上限」の改正とはどういうことか?簡潔に表現しますと、3,000万円以上の売上でなければ消費税は関係なかったが、この3,000万円という基準が1000万円に減額されたということです。1000万円の売上(正確には課税売上といい、売上の内非課税とされる売上が表2にありますのでご参照の上、ご自身の売上が課税対象なのかご判断ください)の事業者は消費税を各負担に応じて支払う事になったのですから、大勢の方が消費税の納税業者になってしまったということです。今まで課税業者でなかった場合でも、消費税を徴収していたケースがあり、徴収するものの税務上は非課税業者であれば徴収した(預かった)消費税は納税する必要がなくこの部分がもらい得とされてきたのですが、実際に非課税業者で消費税をもらっていない事業者も存在します。今回の改正で課税業者として消費税納付義務が発生した事業者の方が、消費税を徴収できれば良いのですが、支払う方からすれば支払い先が非課税業者で消費税を徴収しない場合は内税(税込)で処理されていましたから消費税分(5%分)支払額は少なく済んでおり、課税業者から購入するより5%安い(値引き)という潜在的イメージはあったのです。従って今まで課税業者なかった事業者の方で消費税を徴収していなかった場合は購入者に対し値上げというイメージを与えないように注意を払ってください。

 

表2 非課税取引
非課税取引とは、消費税の性格から課税の対象とすることに馴染まないもの、社会政策的な配慮により非課税とするものがあります。

1 .土地の譲渡、貸付けなど

2. 社債、株式等の譲渡、支払手段の譲渡など
3. 利子、保証料、保険料など
4. 郵便切手、印紙などの譲渡
5. 商品券、プリペイドカードなどの譲渡
6. 住民票、戸籍抄本等の行政手数料など
7. 国際郵便為替、外国為替など
8. 社会保険医療など
9. 社会福祉事業など
10. 学校の授業料、入学検定料、入学金、施設設備費など
11. お産費用など
12. 埋葬料、火葬料
13.  身体障害者用物品の譲渡、貸付けなど
14. 検定済み教科書等の譲渡
15. 住宅の貸付け

 では課税売上が3,000万円未満のため今まで課税業者なかった事業者の方はいつから消費税を納めるのか?

 改正前は課税売上が3,000万円以上になった事業年度の翌々事業年度の決算が消費税の対象となっていました。「今回の改正は平成16年4月1日以降の事業年度から適用する」とされており、この意味は課税対象となる基準年度は前前年ですから、平成14年4月1日以降の事業年度で課税売上が1000万円以上であれば翌々年つまり平成16年4月1日以降に始まる事業年度の決算を対象として消費税を支払うことになります。 個人事業であれば平成14年4月1日以降の事業年度は年度平成15年1月1日〜12月31日の課税売上が1,000万円以上になった場合平成17年1月1日〜12月31日の期間に対応する消費税が発生するということになるのです。

 それでは、納税額はどれくらいになるのでしょうか?

 消費税は原則課税、簡易課税(年商2億円以下の法人だけに適用されていました)の2種類があり、消費税対象となる経費の金額で有利な方を選択します。

表3 消費税の計算方法(原則課税と簡易課税の場合)

【原則課税の仕組み】

売上時に徴収した消費税額から仕入時に支払った消費税額を差し引いて算出します。

  1. 課税売上げ   価額10,000円+消費税額(A)500円=販売価額10,500円
  2. 課税品の仕入れ 価額 8,000円+消費税額(B)400円=仕入価額 8,400円
★原則課税による納付税額の計算方法
売上げに係る消費税額(A)500円から仕入れにかかる消費税額(B)400円を引きます。
◎消費税額(売上時)500円−消費税額(仕入時)400円=100円←納税額

【簡易課税の仕組み】

売上時に徴収した消費税額から一定率の「みなし仕入率」を計算して差し引きます。

  1. 課税品の売上げ 価額10,000円+消費税額(C)500円=販売価額10,500円
  2. 課税品の仕入れ 現実の仕入では各商品毎に粗利益率は異なるのですが、中小企業の事務を簡略化することを目的として簡易課税制度では各業種ごとに一定の「みなし仕入率」が定められています。

<みなし仕入率>
・第一種事業(卸売業)      90%
・第二種事業(小売業)      80%
・第三種事業(製造業等)     70%
・第四種事業(その他の事業)   60%
・第五種事業(サービス業等)   50%

例えば製造業の場合は、粗利益率を70%とみなして、課税売上げの70%を課税仕入れとして計算するため、仕入れにかかる消費税額(D)=500×70%=350円となります。

★簡易課税による納付税額の計算方法
売上げにかかる「消費税額(C)500円」から、仕入れにかかる「消費税額(D)350円」を引きます。
◎消費税額(売上時)500円−消費税額(仕入時)350円=150円←納税額
原則課税の場合、設備投資の額に応じた消費税の減額がありますし、課税売上を超える支出であれば、還付されることもあります。
つまり、簡易課税から原則課税に変更することで、還付対象となる場合があります。
◎消費税額(売上)5,000万円×5%=250万円
◎消費税額(支出)6,000万円×5%=300万円
◎250万円−300万円=▲50万円←還付額

 以上が消費税を理解するための基本事項である原則課税と簡易課税の概略ですが、どちらが自分にとって有利なのかの判断は課税対象となる仕入れや経費の金額とみなし仕入率による金額との比較で考えます。

  といってもわかりにくいと思いますので、簡単な比較方法をご説明しましょう。

 経費の内消費税が非課税となるものの代表は給与です。 前述の原則課税ケースで売上(収入)を3000万円、支出の内、仕入を1000万円、交通 費等の消費税がかかっている経費を1000万円、残った金額1000万円を専従者給与事業所得とすると消費税の計算は 3000万円×5%−仕入1000万円×5%−経費1000万円×5%=150万円−50万円−50万円=50万円の納付となります。

  これを数学的に逆算すると、課税売上−課税仕入−課税経費=給与や事業所得となり、消費税の計算は(給与や所得)×5%と概算を出せるのです。

  従って原則課税が有利なのか?簡易課税が有利なのか?判断したい場合は「売上−簡易課税のみなし仕入率」×5%と給与×5%を比較すればめぼしはつけられるのです。

 しかしながら、簡易課税が有利という試算結果になった場合でも、今回の改正は平成16年4月1日以後に開始する課税期間については「簡易課税制度の適用上限を5,000万円(現行2億円)に引き下げる」としましたので、それまでの命ということになりますが…。

  さらに面倒なことが「消費税法において、事業者がその相手方である消費者に対して商品の販売、役務の提供等の取引を行うに際し、予めその取引価格を表示する場合には、その商品や役務に係る消費税等の額を含む価格を表示することを義務付けることとし、平成16年 4月1日から適用する」というものです。

 この改正により、商品のパッケージやパンフレット等の修正が余儀なくされます。その分の費用負担が発生するということです。

 一体政府は何を考えているのでしょうかね! 農通コンサルの藤田を刺激する税制改正です!


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