【「農業経営者」編集長 昆 吉則 -
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「江刺しの稲」というものを見た。昨年の九月、石川県小松市の水田でのことだ。江刺しの「江」は小川あるいは水路のこと、そして「刺し」は文字通り稲を「刺す」田植えのことで、畦の外側にある用排水路に田植えされた稲のことである。それを見たのは一枚の区画が3a程の小さな水田だった。約1m幅ほどの水路に稲は二条に植えられており、畦側一条分に自分の稲を植えるのだそうだ。
かつて、水路に植えた稲は年貢や小作料の対象とはならず、取れた米は作った人のものになったのだという。どこの農村にもあったであろう「江刺しの稲」も、今や水路がコンクリートになり、またそんな手間のかかる作業をする人もいなくなり、いつの間にか目に触れることもなくなってしまったのだろう。