【早稲田大学大学院教授事 前三重県知事 北川正恭】
三重県知事に就任したばかりの頃、「農林水産部の仕事とは何か」と県職員らに尋ねた。彼らの答えは「農林水産業を育成し、よい商品をよい流通に乗せること」だった。私はまったく違うと思った。それではまるで役所と生産側の癒着ではないか。
消費者サイドに立った農政へ
農政の仕事とは、まず消費者の側に立つことだ。農産物について言えば、おいしい、栄養豊富、あるいは安全・安心といった価値を創造することであり、消費者を見ずに生産者ばかりを見ていると、行政は必ず行き詰まる。