【「農業経営者」編集長 昆 吉則 -
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先日、デパートの名店街にも店を出している老舗の果実店の梨を頂いた。化粧箱の中には、その果実店の歴史と店の看板(ブランド)への誇り、そして品物へのこだわりを書き記したしおりが入っていた。しかし、梨の一部は芯が傷んでいた。生理障害ではないかと思われた。平年だったら素晴らしい梨なのだろうけど、今年の天候ならあり得ることだとも思った。不良品の返品を受け付ける旨のシールも入っていたが、その気にはなれなかった。
そして、もしその箱の中にもう一言「今年の天候は異常であり、選ばれた優れた生産者であっても外からは見えぬ不良品の発生がありえます」旨のお詫びの断りが入っていたとしたら、むしろそこに高級果実を扱う老舗のプライドと責任を感じたであろう。単に高級な果物を綺麗に包装して高く売るだけではなく、最高級の技術を持った栽培者が管理した「自然の恵みの有難さ」を伝える商売であればこそ、老舗の果物店ではないかと思ったからだ。それが、宝石店でも洋服店でも家具店でもない、果物店であればこその暖簾なのではないのか。