【「農業経営者」編集長 昆 吉則 -
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自慢するような話ではないが「糞」という漢字を覚えた時のことをいまでも思い出せる。小学校の低学年だったと思う。僕にそれを教えたのは、父の田舎から年に何度か前ぶれもなく現れて数日から数ヵ月間我が家の住人になっていた人だった。以前は国鉄に勤めていたらしいが、当時は仕事をしている様子はなかった。
しかし、国鉄時代の習慣でか、退職後も文字通り風来坊の風体ながら当然のごとく敬礼で改札を通り田舎から東京まで無銭乗車してきたり、酔っ払ったまま頼みもされない小学生の交通整理をして車に礫かれたりしていた。字がとてもうまく、いつも「風来坊」という特大サイズの名刺を持ち歩いていた。