田牧一郎氏のウルグァイ米作り報告
【講師/株式会社水稲生産技術研究所 代表取締役社長 田牧一郎(たまき・いちろう)氏】
今回は、先日、NHKのETVで放送された、田牧一郎氏によるウルグァイでの日本米作りについての報告を行う。
田牧一郎氏は、本誌上でカリフォルニアの米生産とその経営に関してだけでなく、様々の連載をお願いしてきた。
とくに本誌が乾田直播の重要性を指摘する中で、あえてカリフォルニア在住の同氏に日本国内での乾田直播技術についても取材をお願いした。 そこに海外での米生産・流通コンサルタントとして海外の日本米生産の状況を良く知る田牧氏ならではの視点があると考えたからだ。
さらに、2007年2月にはカリフォルニアで堪水直播をする稲作経営者を招き、本誌読者とのシンポジウムに協力していただいたこともあった。 さらには、同氏の案内で数名の読者とともにウルグァイの農場に視察にも行ったこともあった。
それを踏まえ、日本の品種と機械技術を使ったウルグァイでのコメ生産(Made by Japanese)を行うための会社設立を田牧氏と私で呼び掛け、その準備段階までに至ったこともあった。しかし、最終的に農地借用がままならず話は中断してしまった。
今回のNHKでの放送は、その後に同氏が別の現地生産者やカリフォルニアの稲作農家らとともに改めての日本米生産にチャレンジする様子を伝えたものだ。
同氏は、まだ食糧管理法があった時代の1989年にカリフォルニアに渡り、同地で精米業者として事業を始め、同時に現地での日本米生産に関わってこられた。
田牧氏は日本にいる頃から現在の米農業の状況を予測し、一刻も早く日本の稲作経営者と農業界の意識改革を進める必要があると語っていた。そのためにこそカリフォルニアに渡り、生産者というより精米業者として同地で活動することで、自らも学びつつ日本からの研修生を受け入れるなどして我が国のコメ農業界の変革に繋げたいと活動してこられた。 「田牧米」は世界に通じる日本米ブランドになったが、その後、同氏は田牧米を生産する精米業者の立場を離れ、日本米の生産技術から国際流通にいたるまでを指導できる唯一と言ってよい存在になっている。
海外の人に日本のお米の美味しさを分からせるためには、海外で高品質な日本品種を安く海外マーケットに供給し、それを食べさせねばならない。さらに、米生産者だけでなく、日本の外食業者や小売業あるいは農業機械メーカーがコンソーシアムを組んで海外展開する必要があるというのが、私が考えているMade by Japaneseなのだ。
様々な作物の中でも日本のお米輸出こそが最も世界市場において将
来性の持てるもの。しかし、今の国内の米価格では本格的輸出は有り得ようもない。だからこそ、国内での米生産のコストダウンに取り組むと共に海外に日本米の市場を育てる必要があるということなのだ。
田牧氏がウルグァイでの米生産に取り組むのも、そうした背景がある。
また、田牧氏がかねて話している、日本やコンバインや乾燥調製技術があればこそ良食味米生産が可能だということも実体験に基づいて話していただく予定。
田牧氏によるMade by Japaneseへの関心をお持ちの方だけでなく、世界の米情勢と日本の米ということにご感心をお持ちの方まで奮ってご参加いただきたい。
『農業経営者』編集長 昆 吉則
講師プロフィール
1952年福島県生まれ。74年、米カリフォルニア州の国府田農場で1年間実習後、帰国、大規模稲作経営に取り組む。89年、カリフォルニアに渡米、コメ作りを開始する。同時に始めた精米会社で「田牧米」を作り、米国内にとどまらず世界中の良質米市場にブランドを定着させた。現在は、コメを生産しながら、コメ産業コンサルタントとして活躍する。
日時:2012年10月19日(金)15:30〜17:30
場所:
シチズンプラザ 2階Aルーム
〒169-0075 新宿区高田馬場4-29-27 TEL:03-3363-2211
会費:
・定期購読者:1,000円
(今回は、当社事務所での開催ではないため会場費として会費をいただきます。)
・一般参加者:6,000円
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