【「農業経営者」編集長 昆 吉則 -
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農業メディアや農水省、自治体の広報文書を見ていると「家族経営協定」という言葉が盛んに登場する。しかし、その報道は農家における家族経営協定締結が思惑通りに進んでいないというものだ。笛吹けども踊らずの状態であるらしい。
当然である。3、40年前ならともかく、今更、行政が個々の農家の家族関係に干渉し、指導するような時代ではないからだ。
商店経営の世帯や一般家庭向けて「家族経営協定」を結べなどという話は聞かない。なぜ農家だけの「家族経営協定」なのだろう。農水省の認識では農家は特別に民度が低いから、役人が指導して「家族経営協定」などというものを結ばせる必要があるとでもいうのだろうか。それとも、農村や農家は未だに封建社会の論理に縛られており、憲法第24条【家族生活における個人の尊厳と両性の平等】の精神を徹底させる必要を感じたのだろうか。協定を結んだという東北の稲作地域で大規模なライスセンターを経営する読者は「うちはちょうど就業規則を作ろうとしていたから……付き合いだね。ムラに住んでると役場や普及員の顔も立ててやらなきゃならんのよ。新しい制度ができるとその成果作りにノルマ課せられて彼らも可哀想だよ」と、大人の構えだ。また、こういう人もいた。