【「農業経営者」編集長 昆 吉則 -
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先月号でも書いた農業および食品の流通業界の”嘘”の告発がさらに続いている。全農の関連企業の嘘が告発されるが、僕は「さもありなん」と笑っても、「こともあろうに、云々…」などと書く正義のジャーナリズムになるつもりはない。むしろ、同時進行している政界や行政の不正や怠慢あるいは欺瞞の告発に関しても、我々は、疑惑や権力を糾弾することだけではなく、それに連なる己自身を問うべきなのであり、雪印食品のあのサラリーマンとは自分自身なのではないのかという、”問い”を持つことなのである。
さらに、告発される企業人や政治家や官僚たちによる様々な”事件”も、彼等が演じる”犯罪”や”腐敗”というより、その”想像力の欠如”や”感覚麻痺”に由来するものであることを、より深刻に受け止めるべきなのだと僕は思う。そして、彼らがその糾弾を受けてもカエルの面にナントカを決め込めるのは、彼等の振る舞いが彼等の”悪意”からではなく、自らが背負っている”責務”を果たすべく行っているのだと認識しているからである。彼等がそれを通して利殖の手段や天下り先を確保し得たとしても、彼等の意識の中では責務を果たすための手段であり結果だと信じて疑わないのである。そして、我々もまた、彼等がもたらす恩恵に与ってきた者の一人だと自覚すべきなのである。