【「農業経営者」編集長 昆 吉則 -
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先頃、ダイエーの中内功会長兼社長が同社の経営不振を理由に社長の座を降りた。そこに一つの時代の終焉が示されているのではないだろうか。
中内氏と言えば、流通業界を「生産者(メーカー)の販売窓口」という存在から「消費者利益の代弁者」に変えていくことで、わが国を先進国型消費社会へと導いた担い手であった。当時の中内氏あるいはダイエーをはじめとする新しい形の小売業の出現が、それまでのわが国の生産者中心の生産・消費構造を大きく変えていったのだ。
それは、終戦の混乱期が終わり、日本人にとっての「消費」の意味が「欠乏」あるいは「空腹」を満たす「生き延びるための消費」から「豊かさを求める消費」へと変化していく過程でもあった。同時にそれは、生産者ではなく消費者が物の生産・消費の構造をリードする消費者中心の社会への変化だった。