編集長コラム | ||
業種越え目線の揃う人々の連合を | 農業経営者 12月号 | (1997/12/01)
ところで、今回の経営者ルポにご登場願った瀧島秀樹さんも、茨城県の石川治男さん(21号経営者ルポで紹介)、山形県の叶野幸衛さんのお二人とともに、共同で同フェアにご参加いただいた。
3氏は、本誌の読者であるだけでなく、住む地域を越えてそれぞれに機械や技術そして出荷先を共有しながら経営の発展を目指している方々なのである。今後の農業経営者のネットワークによる農産物供給のありようを消費企業に理解してもらう意味も含め、本誌が共同での出展をお願いしたものであった。
我々は、すでに徒歩や荷馬車で移動し、物を運んでいるわけではない。様々な交通手段や通信手段を前提に生産や暮らしや流通を成り立たせているのである。
瀧島さんと石川さん、そして叶野さんは、すでに同じ集落の住人だと考えるべきなのである。
例えば、叶野さんと石川さんとの関係は、たまたま僕が、叶野さんがバレイショの収穫に困っているという情報を石川さんに伝え、それを聞いた石川さんが自分のハーベスタを叶野さんに貸していただいたのが切っ掛けであった。それは、お二人が農業経営者としての目線が共通しているからできることだった。
単に石川さんの善意だけではなく、石川、叶野の両氏が仲間として組んでいくことの意味を、電話でのわずかな会話のなかでも感じ得たからではないか。叶野さんの経営への意志や土への思いは、距離を越えて石川さんが求める仲間たる者そのものだったのではないか。お二人はその後、生産物の流通チャンネルを共有するようになった。
問題は、それが誰と誰であるかということなのである。目線の揃わない同じ地域の人々以上に、彼らは様々なものを共有できるのだ。
一方、瀧島さんと石川さんは、ともにスガノのプラウユーザー仲間として以前から情報交換をしている間柄だった。それを先頃、千葉県内に1枚1.5ha、合計15haの転作対象の水田があるのを聞きつけた瀧島さんが、大型のポテトハーベスタを持つ石川さんに共同で借り受けないかという相談を持ち掛けたことに始まる。本誌の紹介である産地卸を通じて量販店へのルートも開拓できた。そしてさらに、3氏は高い技術知識と経営者としての責任能力を前提に、様々な作物について地域が異なればこその作期の違いを活かした流通チャンネルの開発を共同して行おうとしているのである。
3氏を結びつけているのは、知識や技術だけでなく、そうした距離を越える経営者としての意識が共有されていることなのだ。
それぞれに得意、不得意の分野があるだろう。あるいは、農業経営者だけでは果し得ないものもあるだろう。であるなら、同じ目線を共有できる川上・川下の企業が手助けすればよいのである。彼らこそ農業経営者の存在を必要とする者だからだ。力の有るものが力の分だけの義務を果たせるのなら、その見返りも得てしかるべきである。
今は、単なる農家、農民ではなく自負を持つ農業経営者たちが、その存在を主張するとともに、関連業界が彼らの擁護に心を砕くべき時なのである。
政治家や行政や農協だけでなく、農業経営者の取引先であり顧客である農業の川上、川下にいる企業人の多くは、これまで語り続けられてきた農業や農業生産についての「思考の枠組み」から自由になれていないために、「農業経営者」という農業経営主体の歴史的な意味を充分には認識できないでいる。
農業関連企業の間にあるその認識の差や意識のズレは、企業の大小を問わず今後の盛衰を予感させるものである。
しかし、一部の企業においては農業のこの基本的変化に注目し、それへの対応を進めようとしている。
今こそ、そんな距離的な隔たりや業種の違いを越えて「目線の揃った」人々と企業が共同して新しい時代を切り開いていく必要があるのではないか。
本誌では、こうした農業経営者という新しい農業の経営主体を中核とした農業生産の在り方と、それに呼応する川上・川下の全ての関連業界企業が、その企業規模にかかわらず一つのテーブルにつき、新時代の農産物の生産・流通・消費、そしてそのための技術やサービスの供給のあり方を考える実演会とシンポジウムを、平成10年2月4、5日の両日に茨城県で開催する。詳細は本号「リーダーズ・スクエア」覧(121頁)をご覧の上、本誌までお問い合せ願いたい。
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