編集長コラム | ||
お客様に試されて、お天道様に裁かれる | 農業経営者 4月号 | (1998/04/01)
本誌は次号、5月末発行分の第29号より月刊化させていただきます。平成5年5月28日の季刊発行での創刊以来、満5年目の月刊化です。わずか64頁の薄っぺらな創刊号(少なからぬ方々には「雑誌」ではなく「パンフレット」と言われました)を、今、手に持ってみると、ある種の感慨が込み上げてくるのを禁じ得ません。本誌読者になっていただいた農業経営者をはじめ本誌の発行にご協力いただいた方々に心よりの御礼を申し上げます。
創刊号からの連載執筆者である村井信仁様と関祐二様には、原稿執筆だけでなく本誌が開催する様々な実演会やセミナーでの中核的講師として、時には読者の圃場まで出向いて、専門分野の技術知識ばかりではないご指導を頂いてまいりました。一人ひとりのお名前は上げられませんが原稿執筆を、あるいはご登場願った多くの農業経営者の方々にも、沢山のことを教えていただきました。
また、農業からすればお客様の立場にある農産物の需要産業や流通にかかわる企業やその経営者の方々も、農業の中では取るに足らないほど小さな存在である我々に、様々なご支援を下さいました。
その他、企業や団体あるいは行政や研究機関に所属される多数の皆様に物心両面のご支援を頂いてまいりました。
本誌の5年間は、こうした皆様方と今は本誌の外で仕事をしているかつてのスタッフたちの努力があってのものでした。
ところで、本欄では何度も「語られる農業問題とは僕自身を含む農業関係者問題、あるいはその失業問題のすり替えに過ぎない」と書いてきました。そして「問うべきは我より他に無し」とも。我々は今、政治や行政や農協や企業や自分以外の誰かを糾弾しその罪を問うことでなく、それにかかわるすべての者たちが己れ自身の存在理由を問い、そして夢を語ることなのであると。権利を求めるのではなく歴史の責務を背負う自負を持つべきだと。
農業を職業とする者であるなら、行政や農協の下働きとして自ら借金をせねばならない作男のような立場に安住し被害者意識の炎を燃やすのでなく、事業の「経営主体」としての自覚を持つ農業経営者としての能力を高めること、その誇りを持つことを呼びかけてきました。
前号で「本誌の役割の一部は昨年の秋で終わったような気がする」と書きました。農業界のベルリンの壁が誰の目にも明らかに崩れたからです。
これまで本誌は「あたりまえ」とは何かを考えてきました。我々の問いも、もう一歩進めましょう。これから「お客様(市場社会)に試されて、お天道様に裁かれる」覚悟を持つ農業と経営者の在り方を問いたいと思います。
本誌は雑誌です。しかし、我々は単に言論や情報のメディアであるだけでなく、もっと立体的な機能を持ち、農業経営者の実利に役立ちたいと考えます。
26号から開始した商品の販売や斡旋もその一部であります。読者経営者を集めての実演会やセミナーなどの活動もさらに行なってまいります。また、昨年11月に行なった日本フードサービス協会主催の産品フェア参加など、読者経営者のマーケティングのお手伝いももっとやりましょう。読者を単なる観客やあなた任せのお客様にはせず、当事者として事業に参加いただきながら、農産物の生産・流通・消費の新しい形を再構築していく活動も進めるつもりです。本誌は、そんな需要者企業と農業経営者の接着剤になりたいと考えています。月刊化も、そうした新しい時代の役目を果すためです。
ベルリンの壁が崩れたという事実は、決して呑気に喜んでられる事態ではありません。本誌の経営も、また読者も少なからぬ余波を受けておられるはずです。
でも、うつむいてみたところで何になるでしょう。変革には痛みがともなうのです。「やればできる」ではなく「やらなければできない」のです。
どうぞ今後とも「農業経営者」をご支援いただくとともに、困難の中でも明るい夢を、ともに語れる同伴者として歩んで下さることをお願い申しあげます。
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