編集長コラム | ||
信頼は情報公開の努力から | 農業経営者 11月号 | (1998/11/01)
【「農業経営者」編集長 昆 吉則 -profile
】
先日、デパートの名店街にも店を出している老舗の果実店の梨を頂いた。化粧箱の中には、その果実店の歴史と店の看板(ブランド)への誇り、そして品物へのこだわりを書き記したしおりが入っていた。しかし、梨の一部は芯が傷んでいた。生理障害ではないかと思われた。平年だったら素晴らしい梨なのだろうけど、今年の天候ならあり得ることだとも思った。不良品の返品を受け付ける旨のシールも入っていたが、その気にはなれなかった。そして、もしその箱の中にもう一言「今年の天候は異常であり、選ばれた優れた生産者であっても外からは見えぬ不良品の発生がありえます」旨のお詫びの断りが入っていたとしたら、むしろそこに高級果実を扱う老舗のプライドと責任を感じたであろう。単に高級な果物を綺麗に包装して高く売るだけではなく、最高級の技術を持った栽培者が管理した「自然の恵みの有難さ」を伝える商売であればこそ、老舗の果物店ではないかと思ったからだ。それが、宝石店でも洋服店でも家具店でもない、果物店であればこその暖簾なのではないのか。
一方、今年の春、ポテトチップのカルビーが、春先の異常天候のためにバレイショが不作となり、そのためポテトチップの供給に支障をきたすという「欠品のお詫び」広告を新聞各紙や一部の量販店の店頭に掲載した。国産のバレイショを使い、イモの鮮度を売り物にしたポテトチップでは代替品や貯蔵品でそれに置き換えることは許されない。当然のことながら、大方の流通業界からは非難を浴びたが、一部の量販店がそれに呼応して、店の棚から全てのポテトチップを外した。
消費者の反発も予想されたが、改めて店にポテトチップが並ぶようになると、その量販店チェーンでは前にも増してカルビー製品が売れたという。
不良品も欠品もあってはならないことである。しかし、農家と共に生産から商品開発、マーケティングまで、自らの手で手掛けるカルビーだから、顧客に対する「善意の欠品」を語ることができたのではないか。
どんなに技術が進んでも、農産物は天の恵みなのである。人間が管理できる自然には限りがあるのだ。それを正しく伝えるのもプロの農産物流通業者の役目のはずである。生産者、顧客双方のために。
農産物の生産と流通・消費のシステム合理化を求めるあまり、そこにかかわる人々がそれぞれの仕事のプロであることを放棄し、あるいはプロであることを求められない流通構造ができてしまっているのではないか。農家が単なる種播きや収穫をする農作業ロボットになり、卸業者や量販店や外食のバイヤーたちが数量合せしか頭にない食材の調達ロボットであり、店でお客の前に立つ人が単なるレジスターか自動販売機でしかなくなりつつあるのではないか。
流行りの「有機農産物ブーム」も、元を正せば消費者の農業生産技術への不安、あるいは農家と農産物販売業者に対する消費者の不信が産み出したものだということを忘れてはならない。
有機農産物の認証や表示を云々することも無駄だとは言わないが、それよりも先に、農業生産と農産物の流通・消費にかかわる者が、それぞれの場所でプロとしての役割を果すと共に、農業の生産から流通、消費を通したトータルな改革のために協力し、そして何より、農業生産についての正しく解りやすい情報を消費者に公開していくことが必要だとは思わないだろうか。
そのために、農業経営者は、まず、地元で目の前にいるお客さんと、そして近くの八百屋さんやスーパーや食堂の人々と手を組んで、新しい農業の生産と消費の姿を作り出して行くべきである。
本誌では、外食業界の団体である社団法人日本フードサービス協会が約10万人(前回来場者数)の消費者と外食・流通業界関係者を集めて2年に一度開催する「98ジャパン フードサービス ショー」(平成10年11月20日~23日・於パシフィコ横浜展示ホール)に、伊藤忠商事(株)と共に共同出展する。また、展示会場では農産物の流通・消費業界および消費者の方々に対する農業理解を求め、合せて本誌読者の販売先を求める小冊子を無料配付する予定である。
同展示会に関心のある方、あるいは新たな出荷先の開拓を考える読者は、返信用封筒に切手貼付の上、本誌までお申込み頂きたい。入場券(500円)を無料でお送りする。
消費者の反発も予想されたが、改めて店にポテトチップが並ぶようになると、その量販店チェーンでは前にも増してカルビー製品が売れたという。
不良品も欠品もあってはならないことである。しかし、農家と共に生産から商品開発、マーケティングまで、自らの手で手掛けるカルビーだから、顧客に対する「善意の欠品」を語ることができたのではないか。
どんなに技術が進んでも、農産物は天の恵みなのである。人間が管理できる自然には限りがあるのだ。それを正しく伝えるのもプロの農産物流通業者の役目のはずである。生産者、顧客双方のために。
農産物の生産と流通・消費のシステム合理化を求めるあまり、そこにかかわる人々がそれぞれの仕事のプロであることを放棄し、あるいはプロであることを求められない流通構造ができてしまっているのではないか。農家が単なる種播きや収穫をする農作業ロボットになり、卸業者や量販店や外食のバイヤーたちが数量合せしか頭にない食材の調達ロボットであり、店でお客の前に立つ人が単なるレジスターか自動販売機でしかなくなりつつあるのではないか。
流行りの「有機農産物ブーム」も、元を正せば消費者の農業生産技術への不安、あるいは農家と農産物販売業者に対する消費者の不信が産み出したものだということを忘れてはならない。
有機農産物の認証や表示を云々することも無駄だとは言わないが、それよりも先に、農業生産と農産物の流通・消費にかかわる者が、それぞれの場所でプロとしての役割を果すと共に、農業の生産から流通、消費を通したトータルな改革のために協力し、そして何より、農業生産についての正しく解りやすい情報を消費者に公開していくことが必要だとは思わないだろうか。
そのために、農業経営者は、まず、地元で目の前にいるお客さんと、そして近くの八百屋さんやスーパーや食堂の人々と手を組んで、新しい農業の生産と消費の姿を作り出して行くべきである。
本誌では、外食業界の団体である社団法人日本フードサービス協会が約10万人(前回来場者数)の消費者と外食・流通業界関係者を集めて2年に一度開催する「98ジャパン フードサービス ショー」(平成10年11月20日~23日・於パシフィコ横浜展示ホール)に、伊藤忠商事(株)と共に共同出展する。また、展示会場では農産物の流通・消費業界および消費者の方々に対する農業理解を求め、合せて本誌読者の販売先を求める小冊子を無料配付する予定である。
同展示会に関心のある方、あるいは新たな出荷先の開拓を考える読者は、返信用封筒に切手貼付の上、本誌までお申込み頂きたい。入場券(500円)を無料でお送りする。
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