編集長コラム | ||
エア・ドウの精神と北海道土を考える会 | 農業経営者 7月号 | (2000/07/01)
その原因は、航空業界に競争が無いから。であれば、道民出資の航空会社を設立することで競争が生じ運賃が下がるのではないかという、ある会合での浜田氏の発言で火が着いたのだった。初めは単なる「面白そうだね」「できたらいいね」という面白がりだった。この種の話しは「だれかがやってくれたらいいね」で落ちとなってしまうのが常であるが、浜田さんたちは違った。
やがて、一人5万円から参加できる「北海道国際航空支援持ち株会」を通じて広範な道民や全国から寄せられた個人株主からの資金の他、大手企業の資本参加、道や各自治体からの融資や資本参加なども得て、着実に資本は拡大していった。
「鶏が空を飛べるか?」(浜田氏の本業は養鶏業)と揶揄されたエア・ドウは、98年10月に定期航空運送事業の路線免許(羽田~新千歳間)を取得する。浜田さんたちは、それを文字通り「ゼロから挑んだ航空会社」で実現し、ついに1998年12月20日午前7時37分、新千歳空港行きのエア・ドウ一番機を羽田空港から飛び立たせたのだ。そして、今年7月からは従来の3.往復6便体制から6往復12便となり、一段と使いやすくなる。
莫大な資本と技術と社会的信頼を必要とし、運輸行政という壁を考えてみれば、それはほとんど奇跡の成功ともいえた。そして、民間人自らが、お上の指導や力の有る者に頼るのではなく、その夢と自負心、誇りにおいて未来を創り出していこうという意思と行動がそれを実現させたのだ。それこそが、日本という国のあらゆる局面に存在する困難を克服する唯一の道なのではないか。上目遣いに「お上」の様子を眺め、その指導を求めてしか動けず、お金持ちであっても誇りなく、変化を恐れ、保身と利権探しに躍起となって自らの未来を狭めている開発途上国日本をそろそろ卒業しよう。
エア・ドウの成功は、航空業に何の利権も持たない人々であるから果たし得たことだともいえる。ところで、農業に係わる者たちが自らの農業界を改革しようという時の最大の困難は、我々が農業の当事者であるということなのだ。我々は当事者として自らの中に利権の垢を溜め込んでしまっている。我々は真摯に「自らを問う」ことの中からしか未来は生まれないのだ。
今年も7月7、8日の両日、北海道の上富良野町において『北海道土を考える会』が開催される。例年の最新畑作機械の紹介とともに、今回は府県での水田転作(というより畑作経営の本格的導入)も意識して、北海道の畑作農業の中で培われた大豆作の技術と農法を伝える実演会も行われる。また、同会では昨年度に日本フードサービス協会と共催で行った『農業は食べる人のために、お店はお客様のために』というテーマのシンポジウムの精神を受け継ぎ、さらに参加者を広げ、農と食に係わる全ての人々が『食べる人のために』という前提で『目線の揃う人々で儲ける手前の話をしよう』と題した、大座談会(円卓会議)を企画している。
浜田氏立ちが演じた未来への飛翔を一人一人の農業者や各産業人たちが果たしていく夢と自らの責務を語る場になるのではないか。
なお、浜田氏の手によるエア・ドウ飛び立ちの記「エア・ドウ ゼロから挑んだ航空会社」(WAVE出版刊・1、500円+税・電話03.・3.261・3.713.)は、僕が久しぶりに読んだ勇気の沸く快著だ。
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