編集長コラム | ||
誰が日本のお米を守ってきたのか? | 農業経営者 11月号 | (2000/11/01)
実演を拝見し、米研ぎ器で研いだご飯も食べてみた。研いだお米を鍋に入れ水を注ぐと少し白濁している。しかし、それはヌカではなくデンプンの流出によるものだそうで、そのまま炊いてもヌカ臭さの無い美味しいご飯が炊けた。この家庭用米研ぎ器については、今月の「注目機・資材」覧(82頁)をお読みいただきたい。
ところで、電気炊飯器が商品化されたのは昭和28年。三洋電機が数ヶ月ナショナルに先んじたそうだ。しかし、その後ナショナルは一貫して炊飯器業界でトップシェアを維持している。さらに昭和63年、同社は電磁加熱方式の「IHジャー炊飯器」を開発。それはカマドで炊いたご飯の美味しさを実現させるものだった。同社はその特許を公開し、IH方式が現代の電気炊飯器の主流となった。
同社の炊飯器事業部は水田に囲まれた場所にあるという。そこで働く炊飯器事業に一生をかけた多数の人々。全国の米産地の米を食べ比べながら、ひたすらに美味しいご飯の炊き方を追求してきた人々。そして、日本中の電気店や炊飯教室に出向き、美味しいご飯の炊き方を伝え続けてきたO氏のような人々。我が国の米消費のレベルを守ってきたのは、米の生産にかかわる者だけではない。むしろ、こうした炊飯器事業に取り組んできた人々の営業者としての熱意と努力の結果でもあるということを、どれだけの農民や米関係者は自覚しているのだろうか。多くの農業関係者は、今こそ炊飯器メーカーの人々の努力と熱意から学び、その力を合わせるべきである。
もし、電気炊飯器が開発されていなかったら、お米が主食であるという我が国の文化すら失われていたかもしれない。品種改良や技術の向上で米の食味が良くなったとしても、電気炊飯器の改良と普及が無ければ食べる人々にそれを納得させることも出来なかったのだ。そして、ナショナルは今、家庭用米研ぎ器という商品の開発で、お米のマーケティングに強力な援護射撃を始めてくれた。
翻って農業界はどうか。この間の米生産・販売の当事者たる多くの農民、農林省や農協などの農業関係者たちが、米の需要拡大に対して果たしてきたこととは何だろうか。せいぜい能天気な『米消費拡大運動』。それは、炊飯器業界の人々がお客様に美味しいご飯を食べていただくために続けてきた、営業者としての真摯な努力と情熱に比べて、どうであったか。米価が急落していく今だからこそ、うろたえず勇気を持って米の消費拡大、本物のマーケティングに力を入れるべき時なのではないか。
米価の値下がりは今後さらに加速するだろう。それは外国産米の参入によってではない。原因は供給過剰であり、農業界の怠慢と国の保護に慣れ、それに依存し続けた者の弱さのためである。作るだけなら誰にでも出来、何処にでも在る米だからなのだ。
もし、これからも相も変らず政治家やお上が助けてくれるだろうと考える農業経営者がいるのなら、愚かとしか言いようが無い。農家や農業関係者にとって米作りは職業であり、営業であり商売ではないのか。農業はもう特別ではないのである。
農業の世界でも自ら生き抜こうとする者、顧客に必要とされ選ばれていこうと努力する者なら、素晴らしい顧客がおり、また農業の外部にこそ農業者を励ましながらともに食べる人のために働こうとする沢山の同伴者たちが待っているのだ。そして、農業は農民のためにではなく、食べる人のために在るのだ。
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