編集長コラム | ||
旬を冷凍する和郷園の取り組み | 農業経営者 7月号 | (2003/07/01)
和郷園は1991年に山田町の木内博一氏を中心にして千葉県北東部の5人の新世代農業経営者が集まって始まった産直団体である。その後の和郷園は、20代30代にの若い経営者たちに限って組合員を集め、現在では50農場以上の出荷者を束ねる組織になっている。単に供給する野菜の品質の高さだけでなく、食品や農産物に対する“信用不安”をもたらした様々な事件が発生する以前から、自ら“供給者責任”の自覚し、供給者責任を果たし得るシステム開発に自ら取り組んできた。その信頼性と情報公開への努力等が評価され、今では生協や量販および外食業者その他に幅広い顧客を持つに至っている。
彼らの冷凍工場設立に多くの関係者が注目するのは、和郷園によるこの取り組みが、農産物の市場開発に新しいテーマを提供するものでもあるからだ。
冷凍野菜工場といえば、中国等の産地で、生産コストの安さを前提にした開発輸入による冷凍野菜を想像する人が多いだろう。そして、多くの農業関係者はそれが日本農業を圧迫すると怯える。ところが木内氏とその仲間たちは、そうした冷凍野菜技術の進化を国内農産物の魅力を消費者に伝える手段として活かそうと考えたのだ。
和郷園が出荷する旬のホウレンソウやコマツナへの評価は高い。しかし、それを出荷できる期間は限られる。出荷時期を広げるためには無理な生産技術の採用も避けられない。それ以上に、旬こそ一番野菜は美味しいのであり、最高の品物を低コストで健康に育てることのできる時期なのである。であれば、和郷園のもっとも美味しい旬の野菜をそのまま冷凍して、一年を通してお客さんに提供できる条件を作ること。それが和郷園の冷凍工場設立への動機である。
旬の時期に思い切って生産し、それを年間通して出荷する。主体は外食や加工仕向けから始まるだろう。さらに、わざわざ冷凍工場に木内氏の愛嬢の名前に由来して「さあや’Sキッチン」と名前を付け、その商品イメージを含めた商品化を進めている。それは、量販店でも、消費者の生活スタイルの変化に合わせていつでも使える最高の生産者の旬を提供する商品となることを狙っているためだ。
多くの農業関係者は輸入野菜の増大によって国内生産が圧迫されるというが、すでに一部の市場では輸入野菜の方が国内産地のものより品質が優れている故に高い価格が付いている。しかしむしろ、売り場を失っている国内産地は、生産コストではなく市場の変化への鈍感さや品質の悪さゆえに顧客に愛想尽かしをされているのではないか。
もちろん、量販店や外食業などによるご都合主義の調達が産地を圧迫することがないとはいえない。しかし、最後の答えを出しているのは消費者なのである。日本人は、生理のレベルで国産に手がいくのだ。例えばブロッコリーなど、輸入の多い農産物で明らかな価格差があるものでも、品質さえ確かであればスーパーの棚は国産品から売れていく。
大きなチャレンジに取り組む若い彼らに、需要者であるとともに、であればこそ本物の支援者である顧客たちは口々に話していた。和郷園の発足段階から単なる需要者としてではなく彼らの農業経営者として成長を励ましてきた生協理事長は、夜を徹して和郷園の未来を語り合った思い出を語り、今回の事業を我が事のように喜んでおられた。大手外食業の経営者であり外食業界団体の会長でもある人は、わずかの時間を割いてお祝いに訪れた。そして、冷凍工場やその製品を見て、ロス低下のための管理方法や今後の品質改善の方向性や出荷基準へのヒントなどを若い木内氏に伝えておられた。
すでに誰も腹を空かしてはいないのだ。また、消費者は価格だけを評価の基準としているのではなく“満足”を求めているのである。そして、その満足の市場には多様な可能性があり、日本農業だからこそ、日本人の農業経営者だからこそ演じることのできる農業経営があるのだ。成長するアジアを市場としようとする“Made in Japan から Made by Japanese へ”という提案も、同じ論理のものなのである。
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