編集長コラム | ||
夢を見ようとしない若者 | 農業経営者 9月号 | (2004/09/01)
かつて、僕が出会ってきた農業経営者たちは、考え方や進もうとする方向性は人それぞれであっても、村に生きる個人としての葛藤や改革への意志あるいは事業者としての野心を持つという意味で共通していた。夢見る者であればこそ、農業経営者たろうとすればこそ村や農業界の論理との軋轢に苦しんだ。であればこそ、時代や農業や地域というものを見詰め、問い続ける人々であった。しかし、近頃、まさに夢見る者たちであった農業経営者の子供たち出会って感じることがある。
親父たちが単に乱暴なだけだったか、その子供が豊かさの中で教養や社会的常識を身に付けただけなのかもしれない。しかし、彼らが“唐様に売家と書く三代目”であっては欲しくない。
本誌は夢を見る者のための雑誌だと思っている。そして、かつてこう書いた。「夢」を見るのは誰に頼まれるわけでも、誰のためでもない。自分自身の勝手である。でも、経営者や親にとって、夢を見ることは「義務」であり「責任」である。そして、心を込めて思いこんだ夢は必ず実現する。同時に、成功者とは、人より強く夢見た人であり、何かを一心に思い続けることの出来る人だ」と。
夢見るがゆえに現実との葛藤に突き当る。でも、そこに安住することなく、夢を持ち続ける勇気を持つ者が事実を積み重ね新しい時代を作る。人々から「できるはずがない」とからかわれていた人が、夢を実現していく。人生は夢見た者が勝ちなのだ、と。
後継者たちは、親が困難を克服して創り上げた現在に満足するべきではない。間違っても与えられた安楽さに安住するべきではない。
実は、君の親たちにとっては、その困難こそが幸運であったと言うべきなのだ。困難に立ち向かえばこその人生だったのだ。きっと、君の親たちは現在の暮らしの満足や与えられる名誉より、夢を持ち続け、困難の中でその実現に向けて挑戦し続けてきたその生き方こそを大事に思っているはずだ。
君が受け継ぐべきは、親たちが夢を持てる者であったことであり、それゆえにこそ背負った困難でも、それに挫けなかった勇気であり誇りなのだ。親たちがそうであったように、改革者、創造者であればこそ歴史や誇りを受け継げるのだ。ただ、今を受け継ぐだけの君であるのなら、それは経営者とは言わず、単なる資産管理人に過ぎないのだ。
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