提言 | 視点 | ||
酒蔵の危機感、農家の資格 | 農業経営者 6月号 | (2005/06/01)
実際に栽培に協力した農家にも話を聞いた。自分が作ったコメが新酒に生まれ変わる手応え、結果が実感できるやりがいを彼らは語っていた。
農業を覆った無気力・無関心
高度経済成長は酒の世界を変えた。大手酒造会社が大量生産した酒が全国に出回り、小さな蔵は大手の真似や下請をせざるをえなくなった。今でも蔵元や杜氏は減り続けている。頑張っているのは、危機感と情熱をもつ一部の蔵だ。
また、人間をダメにするものは無気力や無関心であり、そのことは農業に端的に現われている。農家個々の問題でもあるし、減反に見られるように、政治が農家からやる気を奪ったとも言える。機械化で作業は楽になっても借金は膨らみ、農産物輸入はなし崩し的に拡がった。その流れの果てに休耕田が広がっている。
状況を変えられるのは、まったく新しい形で酒造りを極め、あるいは農業に参画しようとする人たちではないか。それが「夏子の酒」で私が描きたかったことだ。
酒もコメも人間の才能が生み出すものであり、ポリシーをもって良い酒を造っている蔵元には、多くの若者が働きに来る。「この蔵で酒造りがしたい」という素朴で当たり前の感情が彼らを動かす。
私が取材でうかがった有機農業を実践する農家の元にも、研修生が次々とやってくる。経験を積み、周囲にも認められ、就農に至るケースが増えている。むしろ今ではそれらの人が町のリーダーシップを担う程に成長してきている。
独自の手法と思想を
漫画の中で私は、これからは農家にも「資格」が必要だと書いた。百姓に生まれるのではなく、百姓になっていく。そのための資格をつかまなければ、農業を続けられないという意味だった。何がなんでも有機栽培を、と言うつもりはない。大切なのは、農業の本質的な思想を確立し、自分の規模に合わせた独自の手法を手に入れることだ。
復活米は、酒蔵が農家に依頼して作ってもらう場合が多い。本来は逆で、農家自らが優れた酒米を見つけ出し、蔵元に持ち込むべきなのだと思う。農家こそがコメの専門家なのだから。
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