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第二の農地解放が始まった | 農業経営者 7月号 | (2005/07/01)
【作家 猪瀬直樹】
道路公団の民営化を巡る議論では、高速道路の建設費を当初の約20兆円から半減することができた。ただし、国民経済の観点からは改革が必要だが、建設費を削れば、困る人たちが出てくる。日本の建設業は約600万人の雇用を抱えている。全就業人口は6400万人なので、1割に相当する。バブル期の建設総投資額は年間84兆円あったが、現在は52兆円まで下がった。つまり3分の2に減ったわけだから、200万人の雇用が過剰となっている。
農政の大転換はとめられない
地方経済を活性化するためには、雇用の移転が欠かせない。そのカギを握るのが農業だと私は考えている。現在の農業界は後継者不足や遊休農地の拡大などの問題があり、荒廃した農地への産廃投棄も深刻さを増している。
他方、建設業者は立派な重機を所有し、その扱いにも慣れている。すでに一部の業者が農業に活路を見出そうとしているが、こうした動きを広げることで、地方で余った労働力を吸収できる。
今国会では農地のリース方式を構造改革特区から全国に拡大するための法案が成立した。株式会社が農地を借りることが可能になり、今後は様々な異業種が農業に参入しやすくなる。
荒廃した農地があれば、半ば強制的な措置もとれる。今、起きていることは、「第二の農地解放」と言える。農水省まで舵を切った以上、この流れはもう止められない。自民党の農林族議員も抵抗勢力になるのではなく、風向きを読んで態度を変えつつある。
江戸期の農民から何を学ぶか
江戸時代には農工商に境目はなかった。「貧農史観」も固定観念にすぎない。当時、大坂には世界初のコメ先物相場があったほどで、農民は生産から流通・販売までプロセス全体を考えて市場経済を生き抜いた。
また、狭い土地からいかに商品を生み出すかが問われ、田畑には職人的な努力が傾注された。その創意工夫は、ものづくりの伝統としてトヨタ自動車の「カイゼン」など現代に連綿と続いている。
日本の農業には今でも、他国に真似のできない高付加価値な農産物を作る力がある。現在の輸出額はまだ年間1600億円程度だが、適切な輸出戦略を立てれば、1兆円も不可能ではない。
だからこそ、個々の経営者はどう作るかだけではなく、どう売るかを考えるべきだ。農業はいかようにも絵が描けるフロンティアになったのであり、大切なのは、未来を先取りする発想だと思う。「ダサいけれども大事な産業」から「格好よくてもうかる産業」へと変える。そんな波を作り出せば農業の魅力はさらに強まる。
(インタビュー・まとめ 秋山基)
猪瀬 直樹(いのせ なおき)
1946年長野県生まれ。「ミカドの肖像」で大宅壮一ノンフィクション賞。「日本国の研究」で特殊法人の実態を描き、02年道路関係4公団民営化推進委員会委員に就任。委員会での攻防を「道路の権力」に著した。近著「ゼロ成長の富国論」では人口減少・労働意欲減退・財政赤字に対する処方箋として農業の重要性を説く。政府税制調査会委員。東大客員教授。
昭和21年に父親の郷里鹿沼市武子に近在の農家より、木材伐採ごの山林を借り受け開墾(約1町歩)帰農しました。
私はその2代目です、父はすでに20年前に没し私も相応の年齢を重ねてきましたので現在農業に従事しています(100%小作)。
私は若い頃より1つだけ疑問に思うことがあります、なぜ自分の所だけ農地解放の恩恵を受けられなかったのか?父の話では自分が当時、開拓農協の組合長に就任中だった為と...
現在私が守っているには訳が2つ有ります。
1 父が苦労した開拓して切り開いた農地を手放すに忍びない と言うこと。
2 世間には、このような境遇の者もいる現実の為
以上