編集長コラム | ||
農家減少を望ましい変化と言おう | 農業経営者 11月号 | (2005/11/01)
【「農業経営者」編集長 昆 吉則 -profile
】
農林水産省は9月21日、2005年の「農林業センサス」の結果(暫定値)を発表した。それによると農業生産法人などの生産組織と販売農家を合わせた農業経営体数は、2000年に比べ15.9%減の198万9000戸(うち販売農家戸数194万9000)となり200万の大台を割った。また「農産物販売金額規模別農林業経営体数」は、2000年と比べて売上金額3千~5千万円層が11%増え、5千~1億円層で33.3%増、1億円以上層では29.2%増えている。一方、3000万円未満の階層は減少し、とりわけ50万円から100万円の階層では23.4%減少している。
今回の農林業センサスにおける大きな変化は、これまでの調査の対象が「世帯」を単位とする「農家」調査であたものが、「経営」を単位とする「経営体」調査に変ったことである。これまでの「暮らし方」としての農家・農業から、やっと農業の経営実態に着目した「産業」あるいは「職業」として農業や農家を見る視点が取り入れられたわけだ。
本誌は、この変化を当然のことと思うし、そこに農業の未来を感じている。しかし9月22日付け日本農業新聞は「農家200万戸割れ」「生産基盤弱体化進む」との見出しで一面に取り上げ、「個別経営体の販売農家数が38万8000戸減の194万9000戸に大きく減ったことで、総体の農業経営体数は減った。また、経営耕地面積も368万haと5年間で7.1%も減り、農業生産基盤の弱体化は止まらない」と嘆息を込めて伝えていた。
この日本農業新聞の嘆息とは、これまで長年にわたり農業関係者一般が語り続けてきたことでもある。農家数や農業就業人口の減少を農業の衰退に結び付ける議論である。
しかし、「農家数が200万戸を割った」こと、あるいは経営耕地面積が368万haと5年間で7.1%減ったことをもって「農業生産基盤の弱体化」したなどと心配する必要などないのだ。
今次のセンサスで調査対象とされている「農林業経営体(207万1000経営体)」を「農産物販売金額規模別」で分類した統計でも、通常の商売で売上金額に相当する一年間の「販売金額」が50万円に満たない経営体が42.9%、100万円未満でも16.3%も存在し、この二つの階層で59.2%に達するのである。
売上金額だけでその経営を評価できない。また、サラリーマンの息子や孫たちに囲まれて老人が趣味の延長線上の農業をするのも否定はしない。その中には「農家であること」という「利権」を得んがために手間の掛からぬ米作りを続けている場合もあるだろう。既得権としてそれに執着する農家がいても不思議ではない。
でも、約6割に達するそれらの経営体(あるいは農家)が、農業の未来を創造し、農業生産基盤の維持していくとは考え難いし、彼らを農業政策の中で守ろうとする思想はいかにも時代錯誤ではないか。むしろ、それは意欲を持って農業に取り組もうとする農業経営者たちの活動にブレーキをかけ、健全なる農業の発展を阻害しているのである。
農家数の減少は農業の発展にとっては望ましいことである。農業の歴史が始まって以来、農業に依存する生活を止める人が増えてこそ農業は発展してきたというあたりまえの事実を認めるべきだ。そして、日本が豊かな非農業国であればこそ、日本の農業経営には他の国では想像もつかないような大きなビジネスチャンスがあるということをくどいようだが繰り返し申し上げておく。
本誌は、この変化を当然のことと思うし、そこに農業の未来を感じている。しかし9月22日付け日本農業新聞は「農家200万戸割れ」「生産基盤弱体化進む」との見出しで一面に取り上げ、「個別経営体の販売農家数が38万8000戸減の194万9000戸に大きく減ったことで、総体の農業経営体数は減った。また、経営耕地面積も368万haと5年間で7.1%も減り、農業生産基盤の弱体化は止まらない」と嘆息を込めて伝えていた。
この日本農業新聞の嘆息とは、これまで長年にわたり農業関係者一般が語り続けてきたことでもある。農家数や農業就業人口の減少を農業の衰退に結び付ける議論である。
しかし、「農家数が200万戸を割った」こと、あるいは経営耕地面積が368万haと5年間で7.1%減ったことをもって「農業生産基盤の弱体化」したなどと心配する必要などないのだ。
今次のセンサスで調査対象とされている「農林業経営体(207万1000経営体)」を「農産物販売金額規模別」で分類した統計でも、通常の商売で売上金額に相当する一年間の「販売金額」が50万円に満たない経営体が42.9%、100万円未満でも16.3%も存在し、この二つの階層で59.2%に達するのである。
売上金額だけでその経営を評価できない。また、サラリーマンの息子や孫たちに囲まれて老人が趣味の延長線上の農業をするのも否定はしない。その中には「農家であること」という「利権」を得んがために手間の掛からぬ米作りを続けている場合もあるだろう。既得権としてそれに執着する農家がいても不思議ではない。
でも、約6割に達するそれらの経営体(あるいは農家)が、農業の未来を創造し、農業生産基盤の維持していくとは考え難いし、彼らを農業政策の中で守ろうとする思想はいかにも時代錯誤ではないか。むしろ、それは意欲を持って農業に取り組もうとする農業経営者たちの活動にブレーキをかけ、健全なる農業の発展を阻害しているのである。
農家数の減少は農業の発展にとっては望ましいことである。農業の歴史が始まって以来、農業に依存する生活を止める人が増えてこそ農業は発展してきたというあたりまえの事実を認めるべきだ。そして、日本が豊かな非農業国であればこそ、日本の農業経営には他の国では想像もつかないような大きなビジネスチャンスがあるということをくどいようだが繰り返し申し上げておく。