農業技術 | Made by Japaneseによる南米でのコメ作り | ||
ウルグアイでコメ作り(1)
良質日本米で世界市場を席巻しよう! | 農業経営者 2月号 | (2006/02/01)
本誌はかねて“Made in Japan から Made by Japanese へ”というテーマを掲げてきた。日本の農業が持つ、優れた品種、生産技術、人的能力を、海外の恵まれた自然条件や経営条件の中で活かすことが出来るなら、我々には世界の食市場に大きな役割を果たす力があるという呼びかけである。同時にそれは、海外からの農産物輸入の増大を恐れて、国境に壁を立てるだけでなく、これまでの余りに恵まれた環境に安住し、我が農業人たちの自らが持つ能力と可能性を自覚しようとしない敗北主義への批判でもある。そして、この連載では、南米・ウルグアイで、日本農業の中核作物というべきコメによる“Made by Japanese”をテーマにして、これから数回に渡り、三人の読者とともにカリフォルニア在住のコメコンサルタント田牧一郎氏の案内によるカリフォルニアとウルグアイ視察の報告をしていきたい。
筆者は昨年11月末から12月初旬にかけて読者3人と案内役の田牧一郎氏を交えて、ウルグアイの日系農場(AGRIDAIMOND社)を訪ねた。同農場は、同地のインディカ種栽培の技術で、あきたこまちの乾田直播に取組んでいる(約700ha)。しかし、同農場の現在の収量は籾収量で約3t/ha(玄米で約210kg/10a)に過ぎない。
今回の視察は、同農場の水稲経営改善を、コンサルタントとして依頼を受けている田牧氏の紹介で実現したものである。そして、現地の様子を見た筆者と同行者たちは、日本で乾田直播に取り組む農業経営者が行えば、同地での良質日本品種生産が可能なのではという大きな可能性を感じた。
我々がウルグアイに注目するのは次の理由からだ。まず、同国が日本とは真反対の南半球で、日本とほぼ同緯度の南緯30~35度に位置し、しかも平坦な農地と水に恵まれた水田が広く存在すること。
同国では、牧畜との輪作でインディカ種水稲が栽培されている。中国やタイ、ベトナムなどでの日本人あるいはその指導を受けた日本品種生産はあるが、それらの地域で良質日本品種を低コストに生産するには、様々な問題点が存在する。政治体制的に危うさのある中国。緯度が赤道に近過ぎ、さらに降雨や温度ゆえの穂発芽など、タイやベトナムは良食味米を低コストで作る条件としては必ずしも最適地とは言えない。また、水の問題や日本人が新規にコメ生産を行なうには規制の多いカリフォルニアやオーストラリア。その意味で、南半球の日本とほぼ同緯度にあるウルグアイやチリの一部は、Made by Japanese によるコメ作りにとっては注目すべき地域なのだ。しかも、そこで日本品種を乾田直播で作るという技術革新と伴にそれを実践できるなら、日本のコメ産業が世界市場を狙うベースにもなりうる地域なのである。
今、我が国の政府は、政治家たちによる「現地視察」というセレモニーを含め、農産物輸出の促進を呼びかけている。とりあえず結構なことである。しかし、そこに1993年のウルグアイラウンド農業合意以前、彼らが三回も全会一致で「一粒たりともコメは入れさせない」と国会決議した政治家たちの農業界向けリップサービスと同じものを感じるのは筆者だけだろうか。
たしかに、守りだけでなく農産物輸出という攻めの農業が話題に挙がることは良いことだ。しかし、いかに中国を中心とするアジアに富裕層が存在すると言えども、現在の日本のコメはあまりにも価格が高く、ニッチな市場は狙えても、多くを期待できるものではない。
であればこそ、Made in Japan ではなく Made by Japanese による海外産地でのコメ作りに取り組むべきであり、そこに日本のコメ産業にとっての大きなビジネスチャンスがあると筆者は考えるのだ。
次の逸話は1月号の特集にも書いたが、地球を半周してウルグアイの旅から帰った晩、時差で目覚めて食べた日本のコメの美味さに、筆者はコメによる Made by Japanese の可能性を確信した。それは家人が水加減を間違えたオカユ状の冷や飯だった。それも、良質米産地とはいえない読者のおコメであった。
世界のマス・マーケットを狙う限り、価格の競争力が問われるのは当然である。しかし、最後に勝者となれるのは高品質を提供できる者である。筆者が知る米食の食習慣を持つ国々の人々は誰もが日本のコメの美味さを語っていた。また、日本に長期滞在した欧米系の人々のうち、半分くらいの人は炊飯器をお土産に買うという。
日本は世界に誇るべきコメの文化を作って来た国であり、優れたコメ作りの技術と感性を持つ農業者の国なのだ。日本のコメの美味さは、コシヒカリに代表される良食味の品種を開発しただけで実現しているわけではない。生産者段階から玄米でコメを流通させてきたのは、世界の中で唯一日本だけである。生産者自身がコメの品質を問われ続けてきた歴史を持っているのだ。しかも、この間の食味が問われるコメ流通で鍛えられた農業経営者は、他のどの国にもない高品質コメ市場でのビジネス体験を経験していると言える。
それだけでない。日本品種は、カリフォルニアの中粒種で行なわれている湛水直播では収量も良質米生産も望めない。南米や米国南部の長粒種生産でこそ乾田直播は一般的だが、日本品種を乾田直播で栽培する技術は日本を含めてまだ確立されているとは言えない。
しかし、本誌読者の中には、日本品種にとっては技術革新とも言うべき乾田直播で、安定した収量と品質を実現している人々がいる。限られた者だけが実現できる技術であればこそ、そこにチャンスがあるのだ。
そんな農業経営者たちの経験と技術を生かして、ウルグアイに第二農場を経営する。そして、カリフォルニアの中粒種生産に勝る、低コストで食味に優れた日本品種が安定的に生産することが可能なら、世界の短粒種市場と言わず、世界の中粒種市場を席巻することも不可能ではないだろう。
日本品種の乾田直播を成功させる重要な技術要素が、スガノ農機が開発した作土レベルで±2.5bの均平を実現するレベラ技術だ。また、日本品種をロスなく収穫するのには、日本で開発されたコンバインしかない。すでに、我が国の機械メーカーは十分な耐久性を持った汎用コンバインを開発している
まさに、日本人、日本品種、日本の機械で実現するコメだから Made by Japanese が可能なのだ。 (つづく)
今回の視察は、同農場の水稲経営改善を、コンサルタントとして依頼を受けている田牧氏の紹介で実現したものである。そして、現地の様子を見た筆者と同行者たちは、日本で乾田直播に取り組む農業経営者が行えば、同地での良質日本品種生産が可能なのではという大きな可能性を感じた。
我々がウルグアイに注目するのは次の理由からだ。まず、同国が日本とは真反対の南半球で、日本とほぼ同緯度の南緯30~35度に位置し、しかも平坦な農地と水に恵まれた水田が広く存在すること。
同国では、牧畜との輪作でインディカ種水稲が栽培されている。中国やタイ、ベトナムなどでの日本人あるいはその指導を受けた日本品種生産はあるが、それらの地域で良質日本品種を低コストに生産するには、様々な問題点が存在する。政治体制的に危うさのある中国。緯度が赤道に近過ぎ、さらに降雨や温度ゆえの穂発芽など、タイやベトナムは良食味米を低コストで作る条件としては必ずしも最適地とは言えない。また、水の問題や日本人が新規にコメ生産を行なうには規制の多いカリフォルニアやオーストラリア。その意味で、南半球の日本とほぼ同緯度にあるウルグアイやチリの一部は、Made by Japanese によるコメ作りにとっては注目すべき地域なのだ。しかも、そこで日本品種を乾田直播で作るという技術革新と伴にそれを実践できるなら、日本のコメ産業が世界市場を狙うベースにもなりうる地域なのである。
なぜMade by Japanese なのか?
今、我が国の政府は、政治家たちによる「現地視察」というセレモニーを含め、農産物輸出の促進を呼びかけている。とりあえず結構なことである。しかし、そこに1993年のウルグアイラウンド農業合意以前、彼らが三回も全会一致で「一粒たりともコメは入れさせない」と国会決議した政治家たちの農業界向けリップサービスと同じものを感じるのは筆者だけだろうか。
たしかに、守りだけでなく農産物輸出という攻めの農業が話題に挙がることは良いことだ。しかし、いかに中国を中心とするアジアに富裕層が存在すると言えども、現在の日本のコメはあまりにも価格が高く、ニッチな市場は狙えても、多くを期待できるものではない。
であればこそ、Made in Japan ではなく Made by Japanese による海外産地でのコメ作りに取り組むべきであり、そこに日本のコメ産業にとっての大きなビジネスチャンスがあると筆者は考えるのだ。
次の逸話は1月号の特集にも書いたが、地球を半周してウルグアイの旅から帰った晩、時差で目覚めて食べた日本のコメの美味さに、筆者はコメによる Made by Japanese の可能性を確信した。それは家人が水加減を間違えたオカユ状の冷や飯だった。それも、良質米産地とはいえない読者のおコメであった。
世界のマス・マーケットを狙う限り、価格の競争力が問われるのは当然である。しかし、最後に勝者となれるのは高品質を提供できる者である。筆者が知る米食の食習慣を持つ国々の人々は誰もが日本のコメの美味さを語っていた。また、日本に長期滞在した欧米系の人々のうち、半分くらいの人は炊飯器をお土産に買うという。
日本は世界に誇るべきコメの文化を作って来た国であり、優れたコメ作りの技術と感性を持つ農業者の国なのだ。日本のコメの美味さは、コシヒカリに代表される良食味の品種を開発しただけで実現しているわけではない。生産者段階から玄米でコメを流通させてきたのは、世界の中で唯一日本だけである。生産者自身がコメの品質を問われ続けてきた歴史を持っているのだ。しかも、この間の食味が問われるコメ流通で鍛えられた農業経営者は、他のどの国にもない高品質コメ市場でのビジネス体験を経験していると言える。
それだけでない。日本品種は、カリフォルニアの中粒種で行なわれている湛水直播では収量も良質米生産も望めない。南米や米国南部の長粒種生産でこそ乾田直播は一般的だが、日本品種を乾田直播で栽培する技術は日本を含めてまだ確立されているとは言えない。
しかし、本誌読者の中には、日本品種にとっては技術革新とも言うべき乾田直播で、安定した収量と品質を実現している人々がいる。限られた者だけが実現できる技術であればこそ、そこにチャンスがあるのだ。
そんな農業経営者たちの経験と技術を生かして、ウルグアイに第二農場を経営する。そして、カリフォルニアの中粒種生産に勝る、低コストで食味に優れた日本品種が安定的に生産することが可能なら、世界の短粒種市場と言わず、世界の中粒種市場を席巻することも不可能ではないだろう。
日本品種の乾田直播を成功させる重要な技術要素が、スガノ農機が開発した作土レベルで±2.5bの均平を実現するレベラ技術だ。また、日本品種をロスなく収穫するのには、日本で開発されたコンバインしかない。すでに、我が国の機械メーカーは十分な耐久性を持った汎用コンバインを開発している
まさに、日本人、日本品種、日本の機械で実現するコメだから Made by Japanese が可能なのだ。 (つづく)
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