農業経営者取材 | スーパー読者の経営力が選ぶ あの商品この技術 | ||
千葉県旭市 (株)向後農場 向後武彦氏が選んだ商品 | 農業経営者 2月号 | (2006/02/01)
■労働構成 / 本人、妻、両親、社員1名(周年雇用)、パート25名
■売り先 / 出荷組合(農)和郷園を通し、生協、スーパー、加工所など約50社。
隣接する70aほどのハウスに供給する水のろ過設備。向後氏の圃場は江戸時代に竣工した干拓地であるため、少し掘ればすぐに水が沸くものの、鉄、カルシウムの含有量が高く灌水設備のバルブやチューブの目詰まりを引き起こす。そこでBMW(バクテリア・ミネラル・ウォーター)協会の指導を仰ぎ、同設備を作った。
汲み上げた水を落とすろ過層(写真A)には、花崗岩、軽石、珊瑚の化石が敷き詰められており、その出口には菌体ペレットが置かれる。菌体を置く理由は「溶け出た菌に元肥や堆肥、ワラを分解させ、地温を上昇させる」ため。このやり方だと手間もなく、絶えず土中微生物の活性を高いレベルで維持できる。
写真Bは、ろ過した水を貯留するタンク。1本5000L入り、それが18本(9万L)配置されている。乾燥を好むセンチュウの繁殖を防ぐため、夏場、作の合間にスプリンクラーで一斉に水を流すが、これぐらいの貯水量が最低必要とのこと。
写真Cは、ろ過設備の出口に付着する鉄とカルシウム。
中間に1.6mmの空気層を持つ3層保温フィルム。原油高でリッター30円台で推移していた重油が倍の60円台になったことを受けて、燃料節約のため導入した。折りしも昨年12月、暖冬の気配を一変させる寒波に見舞われ、事前の準備が功を奏す結果となった。
農薬のカギ付き保管庫。これを備えることは、ユーレップギャップ(ヨーロッパ適正農業規範)の必須課目の筆頭に上がる。向後氏によればGAPの取得は「清掃の記録を残す、ありえない事故でもそれが起きたときの対処法をマニュアル化する、など少しのお金を出せば誰にでもできること。汲み取り式便所でもきれいなら構わない」とのこと。「できることから」その基準をクリアするため、自身が理事を務める(農)和郷園が補助金を出して推奨した。
前略
我が家では、大地の会、ラディッシュぼうやと長くお付き合いさせて頂いておりましたが、一昨年から生協の野菜も戴いています。
向後様のトマトは、美味しく戴いておりました。マルハナバチに受粉させているということは減農薬栽培していることが分かります。
農業高校に勤めていますので、農薬を減らすハウス栽培がどれほど大変なことなのか、想像できます。
しかし、今後は、生協さんの野菜は買わないことにしました。原発の近県の野菜を納入するなんて無責任だからです。
有機栽培や減農薬栽培にこだわる消費者は、リスクマネジメント派ではなく、予防原則派だからです。
原発事故が起こる前の、日本は、予防原則派だったので、中国野菜や米国産牛肉が敬遠されていたのだと思います。
何グラム食べても大丈夫ではいやなのです。
危ないかもしれないものは口にしたくないから、高い代金を支払って大地の会や生協の食品を購入しているわけです。
生協は、そうした自分たちの支持者の消費者の気持ちを軽視して、近県の野菜を供給しており、これは、とても認容できません。
はっきり、申して、中国産の野菜の方が、放射能で汚染されていない分、安心できます。
放射能は現時点でも、漏えいを続けているわけですから、早晩、前品種が、規定値を超えることになるでしょう。
姉の日本茶屋では、静岡茶が売れないので、鹿児島から急遽取り寄せています。かなりの高値がついていますが、それでも飛ぶように売れていくそうです。
はっきり申して、減農薬栽培にどれほどの価値があるか、今となっては疑問です。
鹿児島県の農薬暦にしたがって、薬剤を散布した野菜と、茨城や福島の減農薬栽培の野菜と、どちらが市場価値があるとお考えですか。
というわけですから、この地で農畜産業は諦めた方が良いと思います。
まだ、余力のあるうちに、沖縄や小笠原、または、ニュージーランドなどで土地を租借し、あちらで、技術力の高い農業を始めることをお勧めします。
福島近県では、いくら努力しても、報われないと思います。
これまで培ってきた技術を亡くしてしまわず、遠隔地で遺伝子を残してください。
例えば、ニュージーランドやオーストラリアで、おいしくて安全な食物を栽培して、日本に逆輸入すれば、これまで通り、日本の消費者に安全な食べ物を供給できますし、検疫で燻蒸したりする必要が出てくるなら、オーストラリア近隣の富裕層に販売することも可能ですし、何より、その高い技術を伝播できるので、現地の人々には喜ばれるでしょう。
ここらで一つ飛躍なさってみてはいかがですか。皆が日本脱出を始めてしまっては、土地が暴落してしまうので、オーストラリアで農業を始めるための原資が賄えません。
このあたりの相談は、オーストラリア大使館で懇切に対応してくれます。
向後さんほどの実績がおありなら、小笠原町も、諸手を挙げて、迎えてくれることでしょう。
憤懣やる方ないのは、これまで、農協の言うままに農業を営んで来た人も、向後様のように、試行錯誤しつつ精進して農業を営んできた方も、放射能汚染下では、同じく「価値のない農産物」に成り下がってしまっていることです。
どうか、余力がある間に、その技術を生かす道を探ってください。
チェルノブイリは半200kmで農産物が無価値化してしまいました。福島は、今後、もう一度、爆発でも起こしたら、おしまいですが、その可能性がゼロでないことが恐ろしいです。導火線に火がくすぶっている間だがチャンスです。爆発して、皆が避難し始めてからでは、避難先が確保できません。
第一号が出れば、後に続く者も出ます。
日本の優れた農業を死なさないでください。
突然、失礼いたしました。