農業技術 | Made by Japaneseによる南米でのコメ作り | ||
ウルグアイでコメ作り(2)
「攻め」を含めた戦略思考が日本農業を守る | 農業経営者 3月号 | (2006/03/01)
前号で述べたとおり、南米ウルグアイでのコメ生産には大きな可能性がある。風土・経営条件の整ったウルグアイで"Made by Japanese"による良質日本米生産に取り組めば、欧米やアジアの短・中粒種市場を席巻することも不可能ではない。日本の農業もトヨタやホンダと同様に世界ブランドになれるのだ。
ウルグアイでの乾田直播によるコメ生産を呼びかける理由はそれだけではない。「日本農業を守れ」、「水田農業を守れ」と叫びながら、政府や農水省、その他農業界は、守りの貿易交渉と国内対策以外なんら戦略的に有効な施策を打ち出していない。それでは、仮に貿易交渉での先延ばしができたとしても、結局は稲作農業を安楽死に導くこと以外、行き着く先はないだろう。今後、貿易交渉は、ジリジリと壁を崩されていく時間稼ぎでしかないのだ。
我々は、「守る」だけで「攻める」ことはできないのだろうか。むしろ、日本の農業や稲作経営者たちが、自ら国境の壁を越えて海外適地で自らが持つ力を発揮するなら、海外に第2農場を構えた経営者にとっての話だけではなく、それが日本農業の大きな防衛作に成り得ないか?
国内の生産構造改革とともに、海外の適地での Made by Japanese による生産に取り組むべきなのだ。そこでカリフォルニアやオーストラリアの短・中粒種と同程度かそれより安い価格で販売できる生産体系を実現する。スシや和食のブームが起きているとはいえ、国際的に見ればマイナークロップに過ぎない日本米を、文字通り世界のブランドとして定着させるために。
敗北主義の象徴のような我が国のコメ農業であるが、日本のこんなに美味しいお米、日本人だからの技術やセンス、日本の機械であればこそ、そうすることが可能なのではないか。
本来であれば、農水省や全農が率先してそれに取り組まねばならないはずなのに、内向きの保身しか頭にない戦略なき敗北主義ではこうした考えは出てこないようだ。
筆者は次のような日本稲作の終末予測も想像してしまう。
食味の高い日本品種は、カリフォルニアなどで行なわれている湛水直播では作り難い。たこ足苗になり倒伏するし、脱粒性の悪さから普通型コンバインでは収穫ロスも大きいからである。そのため、現在のところ、カリフォルニアの生産者の多くは、それに取り組むメリットが少ないと考えている。
しかし、カリフォルニアでさらに品種改良が進んだらどうであろうか。むしろ、彼らにとってそれは当然の選択である。コシヒカリの食味をそのままに、ばら撒きが可能になるよう根の直根性を持たせる。短稈化し倒伏しない作りやすい稲にする。脱粒性を改善して、同地で使うコンバインでも収穫ロスを軽減する。
そうなれば、カリフォルニアの稲作生産者は日本市場を目指すためではなくとも、良食味のコシヒカリを作るようになるだろう。
同様の品種は豪州でも使われるようになり、やがては中国でも直播で良質米生産が可能になるだろう。その時、日本稲作はどうなるのか。
さらに、除草剤耐性、各種の病害耐性などの遺伝子組換えを使った品種開発も進むであろう。コストはさらに下がるのだ。
遺伝子組換えの不安を煽る報道もやがてはそれを肯定する常識的なものに変っていくだろう。となれば消費者も現在のようなナイーブな消費者のままではあるまい。その時、日本のコメ市場はどのようになっているだろうか。
しかし、彼らがそれを実現していない今ならまだ間に合う。ただし、現在の日本の田植機稲作を海外に持っていくだけではだめなのだ。そこに乾田直播という日本品種生産における技術革新とともに、それを実現することでコメによる Made by Japanese を実現するのだ。
マスマーケットにおいても、安さだけの競争の時代はやがて終わる。市場が納得する価格で、しかも食味(品質)が良いコメを供給できる者が競争に勝ち残るのである。ここにコメによる Made by Japanese のもう一つのポイントがある。海外の消費者と言わず、外食産業を始めとする事業的需要者も日本品種の食味の高さをまだ、十分には知らないようだ。カリフォルニアの生産者たちは、食味を追求するよりは作りやすさを優先させている。
コメコンサルタントの田牧一郎氏によれば、カリフォルニアでも日本品種を作付けする生産者は限られるが、実験的にであれ乾田直播での日本品種栽培に取り組む生産者は、まだ2、3人に過ぎないだろうと話す。
田牧氏の案内でサクラメントの精米所を見た。日本輸出向けSBS米(コシヒカリ)の精米過程を見ていると、混入している小さな土の粒の多さなど選別レベルの低さに驚かされる。稲の倒伏しているなかを、普通型コンバインで無理に収穫している姿が想像される。また、古くから玄米で流通してきた日本とのコメ文化の違いも感じた。事情を知らぬ日本の業者が日本の常識で玄米で日本へ輸出して、クレームがよく起きているという話にもうなずけた。
さらに、カリフォルニアスタイルのスシバーは、欧米諸国の外食ビジネスの一ジャンルに成長している。そして、日本人の寿司職人たちには思いつきようもなかった寿司の新メニューを創作している。
しかし、そこで使われているコメの食味は、読者の多くもご存知のとおり、決して高くはない。スシ店経営者は、日本品種の味の良さを知らないわけではないが、現在、カリフォルニアから供給される短粒種を含めて、彼らを納得させる価格を提示できていない。そもそも、外食に供給するだけの量もないのである。ここにコメによる Made by Japanese の可能性があるのだ。 (つづく)
「攻め」の戦略で日本農業を守る
ウルグアイでの乾田直播によるコメ生産を呼びかける理由はそれだけではない。「日本農業を守れ」、「水田農業を守れ」と叫びながら、政府や農水省、その他農業界は、守りの貿易交渉と国内対策以外なんら戦略的に有効な施策を打ち出していない。それでは、仮に貿易交渉での先延ばしができたとしても、結局は稲作農業を安楽死に導くこと以外、行き着く先はないだろう。今後、貿易交渉は、ジリジリと壁を崩されていく時間稼ぎでしかないのだ。
我々は、「守る」だけで「攻める」ことはできないのだろうか。むしろ、日本の農業や稲作経営者たちが、自ら国境の壁を越えて海外適地で自らが持つ力を発揮するなら、海外に第2農場を構えた経営者にとっての話だけではなく、それが日本農業の大きな防衛作に成り得ないか?
国内の生産構造改革とともに、海外の適地での Made by Japanese による生産に取り組むべきなのだ。そこでカリフォルニアやオーストラリアの短・中粒種と同程度かそれより安い価格で販売できる生産体系を実現する。スシや和食のブームが起きているとはいえ、国際的に見ればマイナークロップに過ぎない日本米を、文字通り世界のブランドとして定着させるために。
敗北主義の象徴のような我が国のコメ農業であるが、日本のこんなに美味しいお米、日本人だからの技術やセンス、日本の機械であればこそ、そうすることが可能なのではないか。
本来であれば、農水省や全農が率先してそれに取り組まねばならないはずなのに、内向きの保身しか頭にない戦略なき敗北主義ではこうした考えは出てこないようだ。
筆者は次のような日本稲作の終末予測も想像してしまう。
食味の高い日本品種は、カリフォルニアなどで行なわれている湛水直播では作り難い。たこ足苗になり倒伏するし、脱粒性の悪さから普通型コンバインでは収穫ロスも大きいからである。そのため、現在のところ、カリフォルニアの生産者の多くは、それに取り組むメリットが少ないと考えている。
しかし、カリフォルニアでさらに品種改良が進んだらどうであろうか。むしろ、彼らにとってそれは当然の選択である。コシヒカリの食味をそのままに、ばら撒きが可能になるよう根の直根性を持たせる。短稈化し倒伏しない作りやすい稲にする。脱粒性を改善して、同地で使うコンバインでも収穫ロスを軽減する。
そうなれば、カリフォルニアの稲作生産者は日本市場を目指すためではなくとも、良食味のコシヒカリを作るようになるだろう。
同様の品種は豪州でも使われるようになり、やがては中国でも直播で良質米生産が可能になるだろう。その時、日本稲作はどうなるのか。
さらに、除草剤耐性、各種の病害耐性などの遺伝子組換えを使った品種開発も進むであろう。コストはさらに下がるのだ。
遺伝子組換えの不安を煽る報道もやがてはそれを肯定する常識的なものに変っていくだろう。となれば消費者も現在のようなナイーブな消費者のままではあるまい。その時、日本のコメ市場はどのようになっているだろうか。
しかし、彼らがそれを実現していない今ならまだ間に合う。ただし、現在の日本の田植機稲作を海外に持っていくだけではだめなのだ。そこに乾田直播という日本品種生産における技術革新とともに、それを実現することでコメによる Made by Japanese を実現するのだ。
低価格・高食味の日本米作り
マスマーケットにおいても、安さだけの競争の時代はやがて終わる。市場が納得する価格で、しかも食味(品質)が良いコメを供給できる者が競争に勝ち残るのである。ここにコメによる Made by Japanese のもう一つのポイントがある。海外の消費者と言わず、外食産業を始めとする事業的需要者も日本品種の食味の高さをまだ、十分には知らないようだ。カリフォルニアの生産者たちは、食味を追求するよりは作りやすさを優先させている。
コメコンサルタントの田牧一郎氏によれば、カリフォルニアでも日本品種を作付けする生産者は限られるが、実験的にであれ乾田直播での日本品種栽培に取り組む生産者は、まだ2、3人に過ぎないだろうと話す。
田牧氏の案内でサクラメントの精米所を見た。日本輸出向けSBS米(コシヒカリ)の精米過程を見ていると、混入している小さな土の粒の多さなど選別レベルの低さに驚かされる。稲の倒伏しているなかを、普通型コンバインで無理に収穫している姿が想像される。また、古くから玄米で流通してきた日本とのコメ文化の違いも感じた。事情を知らぬ日本の業者が日本の常識で玄米で日本へ輸出して、クレームがよく起きているという話にもうなずけた。
さらに、カリフォルニアスタイルのスシバーは、欧米諸国の外食ビジネスの一ジャンルに成長している。そして、日本人の寿司職人たちには思いつきようもなかった寿司の新メニューを創作している。
しかし、そこで使われているコメの食味は、読者の多くもご存知のとおり、決して高くはない。スシ店経営者は、日本品種の味の良さを知らないわけではないが、現在、カリフォルニアから供給される短粒種を含めて、彼らを納得させる価格を提示できていない。そもそも、外食に供給するだけの量もないのである。ここにコメによる Made by Japanese の可能性があるのだ。 (つづく)
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