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「非必要」社会のモノ作りとは | 農業経営者 5月号 | (2006/05/01)
必需品経済の縮小は「非必要経済」化だと私はとらえる。「必ず要るに非ざるモノ」。つまり、なくても生きていけるが、あれば生活を快適で文化的にしてくれるモノなら買いたいと人々は思い始めた。
快楽度が支配する経済
非必要経済社会の第1の特徴は、あらかじめ需要が存在しないことだ。したがって需要を創出できる供給者だけが伸びていく。第2に、需要と供給の結合が弱い。一時的に流行したモノがすぐに飽きられる。第3に、需要供給曲線が成り立たない。安いから売れるのではなく、高いからこそ売れる現象が随所に見られるようになった。
食の世界はまさにそうだろう。日本人は生命を維持するための栄養をすでに十二分に摂取できている。肥満や生活習慣病が若年層にまで広がり、最近はペットまで病気になるぐらいだ。
この状態を単に「飽食」ととらえてしまうと、物理量だけの話で終わってしまう。しかし非必要経済と見れば、経済を支配しているのが快楽度だとわかる。善し悪しは別にして、非必要経済化は資本主義の必然だった。人々がより人間らしい暮らし方を志向するようになったとも言える。
文化的特性をいかに生かすか
こうした社会の本質的な変化に産業界はどう対応すべきなのだろうか。
戦後日本の製造業では、安価で良質な規格品の大量生産というビジネスモデルが中心的だった。それでいて「モノ作り」という聞こえの良い言葉が一人歩きし、過信が生じた。その成功モデルは近年、中国などの台頭で過去のものになった。
モノ作りへの過信は、農業界においてさらに強い。資本主義化が遅れ、競争原理にさらされなかったためだ。本当のモノ作りとは、供給側の勝手な思い込みではない。常に市場にテストされ、作り手自らが変化を遂げながら、多数の消費者に価値を認められるモノを生み出すプロセスなのだ。
非必要経済におけるモノ作りの道は険しい。供給側は知恵を絞り、今までになかったようなきわめて高度な知的産物を作らなくてはならない。と同時に、日本人の文化的特性やアイデンティティを自覚し、日本人にしか作れない価値を海外に発信することも重要になる。
一言で表せば、日本全体の丸ごとブランド化だ。中でも日本人の文化的特性を色濃く残す農業分野は、重要な位置を占める可能性がある。ただし、そのためには、高い見識と感性、洞察力を備えた経営者の存在が不可欠だろう。
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