提言 | 視点 | ||
担い手は構造改革の旗手か? | 農業経営者 6月号 | (2006/06/01)
志の低い現状固定策
政府は、外形基準によって都府県4ha・北海道10ha・集落営農20haという線を引き、要件を満たす担い手を品目横断的経営安定対策の対象として囲い込んだ。
4haに達せず、担い手にならなかった農家も優遇税制と農地転用期待がある限り、簡単には農地を手放さないだろう。歪んだ農地私有は解消されず、よどんだ構造は今後も温存されることになる。
直接支払い制度はあたかも世界の潮流のように語られる。しかし、1戸当たり30ha以上の規模を実現している欧州と違って、日本農業の生産規模は平均わずか1〜2haにすぎない。農水省は直接支払いの導入目的を「諸外国との生産条件の格差を是正するため」と説明するが、現状の所得に下駄を履かせても生産性は向上しない。
私は政府介入には批判的だが、介入するならば「手厚く短く」が原則だと思う。期限を明確に区切って手厚く保護し、農業者自身が体質強化のプランを立てられて、変化に耐えうる人だけが残っていく。そのような政策こそ求められているのではないか。
大洪水を前に
集落営農も担い手政策に歪みをつくり出した。従来、一応はマーケットで地代が決まっていた農地の貸借に「ムラの論理」がもち込まれ、ダブルスタンダードが生じてしまった。
現実に貸しはがしは至る所で起きている。能力のある農業者が規模拡大したくてもできず、自らビジネスチャンスをつぶさざるをえない状況だ。
昨年の総選挙で小泉自民党は圧勝した。だが、小泉首相は農業に関心がなく、担い手政策はすべて官主導で進められてきた。「戦後最大の農政転換」どころか、官僚たちは肝心な部分では族議員を説得していない。農地所有の根本的な問題には触れず、外国人労働者の受け入れなど緊急の課題にも手がつけられていない。
現状が固定され、体質強化がなされないまま、WTO(世界貿易機関)農業交渉が決着したらどうなるか。関税引き下げという大洪水を目の前にして、農水省はもはや日本農業に将来はないと見越してしまったのだろうか。
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