農業技術 | Made by Japaneseによる南米でのコメ作り | ||
ウルグアイでコメ作り(最終回)
世界に向けて動き出す次世代経営を考えよう | 農業経営者 7月号 | (2006/07/01)
マイナー作物だからのチャンス
以前、ウルグアイでのコメ作りプロジェクトの同伴者である田牧一郎氏と話したことがある。日本ですら米屋としての経験がない一農家の田牧氏が、なぜカリフォルニアで精米業者として成功し、田牧米というブランドを作り得たのだろうか。その問いに田牧氏は
「それは日本米がマイナーな商品であり、マイナークロップだからですよ」と答えた。
当時、日本人が好むお米あるいはご飯というのは、カリフォルニアでも極めて特殊なものだった。同氏が最初に扱ったのは日本品種ではなく国宝ローズのようなカリフォルニア品種である。同氏は、単に品種選択だけでなく、炊いた時に食味の差が出る高水分の籾を集め、日本人の好みに合う精米に心がけたという。
これまで5回にわたってウルグアイでのコメ作り、南半球でのコメによる“Made by Japanese”の可能性について語ってきた。日本品種の魅力を活かして、アジア地域だけでなく欧米諸国を含む世界にその市場を開拓する。そこに明らかなチャンスが存在するからである。
我々は、日本市場を狙って安い労働力や環境条件を求めて海外生産を語るのではない。日本米生産に乾田直播という技術革新を導入し、成立しようとしている日本米の世界市場で、それに取り組んだ先行者利益を得、日本米と“Made by Japanese”の農産物を世界のブランドとして定着させようと考えるからだ。
今や世界中のちょっとした町なら必ず「寿司バー」がある。アメリカではチェーン展開もすでに行なわれている。でも、そこで使われているコメはアメリカ産の中粒種だ。
繰り返し述べてきた通り、それらの寿司バーが使えるレベルの安い日本品種が存在せず、しかも、量的にもその市場を満足させていないからだ。
この通り、消費市場は成長しつつあるが、日本品種は相変わらずにマイナークロップのままなのだ。だからこそ、我々には大きなチャンスがあると言うべきなのだ。ウルグアイで中粒種並みの低価格で供給可能な良質日本品種を大規模に生産する。価格が同じならば中粒種市場のかなりの部分を奪うことができる。しかも、海外日系社会だけでなく、アジア諸国にも魅力的な市場が存在している。
日本農業は世界産業になれる
寿司が日本の食文化であるにも関わらず、なぜ、海外で寿司バーを経営するのは韓国人やベトナム人などの非日本人なのだろうか。一人200〜300ドルもかかる美味しいコメを使い、食材も日本から輸入したような高級寿司店や日本食レストランも海外にはある。でも、そうした店は相変わらず日本からの駐在員や旅行者あるいはその国のお金持ちしか入れない。
欧米諸国でも寿司ブームが起き、ダイエット食品としての日本食が注目されるのに、なぜ日本のコメや食材のマーケティングが行なわれないのだろう。吉野屋の牛丼以外の他の日本の外食業は何をしているのだろうか。ましてや“Made by Japanese”による海外生産への取組みに、なぜ人々は注目しないのだろう。
日本の全中が、アメリカでコシヒカリ料理コンテストをTV番組としてやっているのを、NHKのBS放送で見たことがある。全中が大層なお金をかける限りは、コシヒカリあるいは日本米の市場拡大を狙っているのだと理解したい。もっとも、その番組自体が日本国内向けの全中の自己弁護番組であり、それが本当にアメリカ国内で放映されているのかどうかは確かめてはいない。日本からコシヒカリを輸出しようと言うのだろうか。それでは海外の常識ではあまりにも高すぎるだろう。いくら宣伝しても売るべきコシヒカリはないではないか。
であればこそ、農業界そして農業経営者たちによる日本品種の海外生産が必要だと考えるべきだろう。
「海外で安いコメを作って日本農業を滅ばそうとするのか!」などという御託はもう聞き飽きた。そういう言葉を聞く度に、日本農業は外圧によって滅ぼされるのではなく、自ら安楽死を望んでいるのだと思えてくる。国内にも大きな可能性があり、深い共感を示してくれる顧客に囲まれた恵まれた環境にあることにアグラをかいてはいないか。農業人は次にすべきことに気付くべきだ。
その上で、これまでにはなかった壮大な世界市場が日本のコメを待ち受けていると考えよう。
日本農業は大転換の時代を迎えている。過去の結果に過ぎない現在にこだわるのか、未来から逆算する今日の選択が問われているのである。
この雑誌が読者に届く直前に、一部読者や関係者とともにウルグアイでのコメ生産に関する投資説明会の開催を予定している。さらに、範囲を広げた呼びかけも改めて行なう。
今後とも本誌は、ウルグアイのコメ作りに限らず、中国やオーストラリア、タイ、ベトナム、あるいはアメリカやヨーロッパ諸国などの消費市場への参入を含め、さらに、様々な作物で、農業経営者の関わり方も多様に、しかもマーケットに連動した“Made by Japanese”を提案していきたい。そして、情報として提供するだけでなく、現実的なビジネスの呼びかけをしていこうと思う。
本誌が語る“Made by Japanese”に興味を持たれた方は本誌編集部までお問い合わせ願いたい。
また、7月には成長する中国市場に向けて、各種の農業生産に取り組むための調査を、現地企業人および商社関係者とともに行なう予定である。併せてお問い合わせ願いたい。(終わり)
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