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Part2 主要企業キーマンに聞く品種の強みと成長戦略 | 農業経営者 8月号 | (2006/08/01)
【中島美雄商店】
やみくもな拡大避け、品種ごとに最適な産地を選び、高品質を訴求
【和穀の会】
ツヤとさっぱりした食感を武器に、
「米穀店だけのコメ」に育て上げる
【三井化学】
12~13俵とれるハイブリッドライス、外食業者も注目
【日本モンサント】
短稈、多収、かつ良食味の直播向きの品種。
コメのブランド化も狙う
【植物ゲノムセンター】
育種期間を従来の5分の1に短縮。有望品種を次々に開発する
【全農】
新商品づくりに直接つながる、特長ある品種開発を目指す
【中島美雄商店】
やみくもな拡大避け、品種ごとに最適な産地を選び、高品質を訴求
民間育種事業—その成功の鍵はどこにあるのか? 参入10年足らずで、主力ブランド「夢ごこち」を13万俵流通させるまでに成長させた、中島美雄商店の戦略から明らかにする。
民間育種の成功は、単に優れた品種を開発することだけでは実現しない。栽培から販売までをトータルに把握し、コントロールする戦略があってこそ、市場に浸透できる。その好例が、中島美雄商店の取り組みだ。(以下つづく)
夢ごこち |
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【特徴】「コシヒカリ」のプロトプラスト培養によって得られた再生植物体から選抜、育成。成熟期は「早生の晩」。やや長稈。穂長は「やや短」。粘りのある食味品質 【訴求ポイント】冷めてもおいしい。冷凍・再加熱しても食味が低下しない。単品、ブレンド適性ともに高い |
外食や消費者に直売。6800円/10kg
【湖南農産株式会社代表取締役 瀬川昌彦氏】
「夢ごこち」は、中島美雄商店が扱い始めた当初から栽培している。現在、自家と借地と作業請負の合計40haに、「夢ごこち」と「夢かほり」を主体とし、他に「コシヒカリ」「キヌヒカリ」「ニホンバレ」などを作付けている。ともに5月の播種で、「夢ごこち」は9月末に収穫、晩生の「夢かほり」は10月中旬に収穫する。(以下つづく)
【和穀の会】
ツヤとさっぱりした食感を武器に、
「米穀店だけのコメ」に育て上げる
民間品種の活用はまだ始まったばかり。他社が開発した品種の育成者権を買い取り、自社事業にフル活用しているのが和穀の会だ。どんなビジネスモデルを構築しているのか、責任者に話を聞いた。
米穀小売店活性化の切り札として民間育成品種を扱っているのが、(株)和穀の会だ。2004年に中島美雄商店から「花キラリ」の育成者権の譲渡を受け、現在、山形県、宮城県、富山県、福井県の生産者に種もみを供給。収穫したコメは全量買い上げ、米穀小売店に卸している。(以下つづく)
花キラリ |
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【特徴】「日本晴」のプロトプラスト培養突然変異系統「PR3」に「コシヒカリ」を交配してて育成。成熟期は「早生の早」。穂長は「やや短」 【訴求ポイント】やわらかめであっさりした食味。冷めるとしっかりしたもちもちの食感に。雑穀や発芽玄米にもよく合う 【販売先・用途など】和穀の会会員の米穀小売店(約1,500店舗) |
売り手・買い手が共に成長する関係
【山形おきたま農業協同組合生産販売部副部長 長谷川和郎氏】
「花キラリ」は2003年から栽培している。他産地米との差別化や産地名の消費者への浸透を考えていたところに、「夢ごこち」で取引のある(株)中島美雄商店から依頼があったのが始まりだ。(以下つづく)
【三井化学】
12~13俵とれるハイブリッドライス、外食業者も注目
米が余り始めて以来、“収量より品質”を重視する経営が叫ばれてきた。米価下落が必至の今、圧倒的な収量こそ収益確保の要である。これまでにない多収性を保証するハイブリッドライスに注目したい。
ハイブリッドライスとは、ジャポニカ種とインディカ種のように遠縁の品種を交配し、両親に比べて優れた性質を持つ雑種第一代(F1)の稲のこと。現在、国内で唯一ハイブリッドライスを販売しているのが三井化学クロップライフ(株)だ。同社の前身である三井東圧農薬、三井化学東圧の頃から肥料、農薬の製造販売とともに、野菜などの品種改良を行なってきた。(以下つづく)
みつひかり2003 |
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【特徴】「MHA23」を母系、「リバース422」を父系とする交雑品種。成熟期は「中生の晩」。長稈で耐倒伏性が強い。穂長が「極長」。イモチ病耐性「強」。反収は11俵以上。 【栽培のポイント】栽培しやすい 【訴求ポイント】極多収。あっさりとした食感で業務用米として好評 |
みつひかり2005 |
【特徴】「MHA25」を母系、「リバース422」を父系とする交雑品種。成熟期は「晩生の早」。長稈。穂長は「長」。イモチ病耐性「中」。反収は11俵以上。 【訴求ポイント】多収、極良食味 |
収穫時期の分散による経営メリット
【特定農業法人(株)グリーンちゅうず専務取締役 吉川義博氏】
「みつひかり」を始めた理由は収穫時期が他品種と重ならないこと。収穫は10月中旬頃で、主力のコシヒカリの収穫後に手を付けられる。作業時期の分散による経営的メリットは計り知れない。当社は、作業受託を含め200haを超える大規模経営であり、みつひかり導入により収穫時の人員配置の効率化ができるようになった。(以下つづく)
【日本モンサント】
短稈、多収、かつ良食味の直播向きの品種。
コメのブランド化も狙う
モンサントの育種目標は明確だ。「直播に適した品種開発」である。条件は「芽が出やすい、根が張りやすい、短稈、倒れにくい、食味がいい」。そして育成された「とねのめぐみ」の今後の展開は?
日本モンサントが稲の育種に乗り出したのは1994年。開発に先立って「日本の稲作が今後、どういう方向に向かっていくのか」、「求められる品種はどういったものか」についてかなりの時間を割いて議論をしたという。そして出した答えが「直播に適した品種を開発しよう」だった。(以下つづく)
とねのめぐみ |
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【育成地】茨城県河内町 【特徴】「どんとこい」に「コシヒカリ」を交配して育成。成熟期は「中生の中」。短稈。穂長は「やや短」。収量性はコシヒカリに比べて10%以上多収。極良食味。耐倒伏性強 |
地元産米のブランド化に活路
【(株)ながさお代表取締役 (株)ふるさとかわち取締役
小更孝史氏(茨城県河内町)】
日本モンサントから委託栽培の依頼を受け、2001年に「とねのめぐみ」の作付けを始めた。他産地米とどうやって明確に差別化していくか、考えていた頃だった。とねのめぐみを開発、育成した同社の研究農場が地元河内町にあるというご縁もあった。(以下つづく)
【植物ゲノムセンター】
育種期間を従来の5分の1に短縮。有望品種を次々に開発する
民間育種米業界に異色の企業がある。美濃部侑三氏が農水省退官後、2000年に設立した植物ゲノムセンターだ。設立5年で有望品種を育成、その後2年で普及面積1000ha超とその勢いは止まるところを知らない。
(株)植物ゲノムセンターは、「ゲノム育種法」という独自技術を用い、次々と有望な品種を開発している。短稈で良食味のコシヒカリ「コシヒカリつくばSD1号」の育成をわずか3年で達成した後、現在は短稈のミルキークイーンや北海道でも栽培できる良食味コシヒカリの実証試験に入っている。(以下つづく)
コシヒカリつくばSD1号 |
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【特徴】極良食味の「コシヒカリ」と背が低く倒れにくい「IR24」を交配して育成された固定品種。コシヒカリと比べて、稈長が短く、耐倒伏性に優れる。千粒重がやや重い。粒形はやや大きい。穂長は同程度またはやや短い。やや多収。葉の直立性が高く、受光性に優れる。良食味。(財)日本穀物検定協会が発表する食味ランキングで2年連続“特A”を獲得。2004年に品種登録を出願。昨年6月内閣府主催の第4回産学官連携推進会議で画期的な品種改良技術等が評価され、「科学技術政策担当大臣賞」を受賞 |
【全農】
新商品づくりに直接つながる、特長ある品種開発を目指す
“公的”品種米の取扱いが最も多い業者である全農は、品種開発を始めて20数年になる“民間”育種業の老舗でもある。自前の品種を用いどのようなビジネス展開をしているのか、育種責任者に聞いた。
全く新しいコメ商品のマーケット開発を目指して、独自の育種計画を立てているのが全農だ。平塚にある営農・技術センター生産システム研究室が、その開発を担当している。(以下つづく)
民間育種米で特定マーケットを開拓
米アレルギー患者向け米製品の流通を図る
日本全国でアレルギー体質を持っている人は約180万人。そのうち30~40パーセントを食物アレルギーが占めているといわれるが、その中にはコメに対するアレルギーも存在する。その割合は食品アレルギー患者の数からすれば、10数パーセントにとどまるものの、患者にとっては主食であるコメが食べられないことは日常生活を営む上で大きなハンデとなる。しかも、米アレルギー患者の数は近年増えつつあるという。このような状況に対して、アレルギーの原因となるアレルゲンを低減化したコメ(AFTライス)の供給を目指しているのが「まざーずはーと」。同社では、アレルゲンを低減化した大豆や小麦製品を開発している。(以下つづく)
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