農業技術 | 乾田直播による水田経営革新 | ||
Vol.10 矢久保農場の収穫作業 | 農業経営者 11月号 | (2006/11/01)
大型作業機械を活用して収穫の肉体労働を軽減
9月30日の夕方、大潟村に入った。週末でもあり、東北・秋田新幹線の車窓から見える水田では、稲刈り作業のコンバイン、そしてモミ運搬用の軽トラックがたくさん動いていた。大潟村でも半分程度の水田の刈り取りが終わったように見えた。ここでは大型のコンバインが大区画の水田で作業をしている。そのほとんどはモミ排出オーガ付きのグレインタンク仕様コンバインである。そしてモミ運搬用のトラックも軽トラではなく2tトラックが使われている。経営規模の違いが、機械装備にはっきり表れている。
トラックがからになると、新たなモミを受けるために道路にトラックを移動させ、コンバインで刈り取ったモミを受ける。1人での作業も可能であるが、モミを乾燥機に入れる時にコンバインを休めなくてはならず、作業効率が落ちてしまう。2人での作業ができれば、刈り取り作業と、モミの張り込みと乾燥機の運転状況の確認なども同時に進められ、効率よい作業となる。
この繰り返しで1日平均1ha強の刈り取りを行なっている。機械を使った作業体系のため、袋取りコンバインから重いモミ袋を集め、それを乾燥機に1袋ずつ空ける肉体労働はない。乾燥機および乾燥モミの一時保管場所も余裕を持たせて作ってあり、約1週間で10haの収穫作業は終了する。
たしかな手応えと予想通りの収量
田んぼに入ってイネを触ったとき、まず茎が太く強いことを感じた。この強さが、乾田直播で育ったイネの特徴である。正直なところ、私はこの感覚を忘れていた。毎年カリフォルニアにおける湛水飛行機播種の背が伸びすぎたイネばかり触っていたためである。自分の乾田直播で育てたイネも、これほどしっかりとした感覚はなかった。これがたくさん実を着けるために必要なイネの体である。頭では理解していたが、実際に触ってみて確認できた。収量構成要素は別表の通りである。千粒重は正確に測れていないため、おおよその見当で数字を入れた。収穫ロスおよびモミ摺り作業や精米作業に伴うロスも、私の経験からの作業ロスとして計算に入れてある。
茎数はほぼ予想通りの数字になっていた。無効分ケツが少なく効率よい太い茎になっている。千粒重は少し低くなるのではないかと思い、21g程度の予測数字を用いている。理由は矢久保さんの話から、収穫前の水不足と考えられる。登熟期間中に晴天が続いた。用水路からの入水も例年通りのタイミングで止めてしまったため、結果として最後の水が不足したと考えられる。
モミをむいてみた印象であるが、もう少し大きな粒になれるのではないかと感じた。したがって登熟歩合も巾選別を厳しく行なうことで、アミ下が増加すると考えられるため低い数字を使った。しかし穂の基の部分でも小さな未熟米は少なく、登熟の後半といえる大きさの粒に育っていた。
刈り取り時の平均水分が25%、軽度の胴割れが穂の先端1~2粒に見られたが、この胴割れは砕米にはならないはずである。乾燥時の急激な水分低下や過乾燥を避ければ、精米時にも割れずに残る粒である。
品質の良いコメに仕上がるイネに育ち、収量も収穫前の予想通り、10aあたり10俵と刈り取り時の数字も出た。
茎数の増加がもたらす飛躍的な増収の可能性
刈り取り時のイネを見ながら、矢久保さんと話をした。乾田直播で育ったイネの増収可能性についてである。太い茎にしっかりと実がついており、全体的にかなり余裕があるように見えるのである。実際にイネは幹長75cmで倒伏せずに立っており、まだまだ穂が多くてもしっかり実るであろうと予想できる。つまり単位面積あたりの茎数をさらに増加させることで、増収は可能である。播種密度を高めることが簡単な方法である。畝間25cmを20cmにつめても、現状の分ケツ数の確保と穂数の確保は問題ないと考えられる。単純な計算であるが、これだけで25%の茎数を多く確保できることになる。一穂の粒数と登熟歩合の低下を抑える肥培管理技術の対応で、反収を飛躍的に増加させることが可能になる。
今年の反省として登熟期後半に水を入れることができていれば、もう一段収量は増加したはずである。 今年も刈り取り時に水田にはまったくぬかるみがない。今年は水が早めに切れたということもあるが、土質の問題だけではなく、乾田直播水田の特徴ともいえる、ぬかるみのない圃場になっている。水田のぬかるみは刈り取り作業を困難にし、コンバインなどの収穫関連作業機の故障の原因にもなる。作業性の良い圃場で高収量を目指すことができるのも、乾田直播水田でのコメづくりの特徴である。
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