*編集部より | ||
日本農業新聞による「農業経営者」広告改ざんについて (2006/11/27)
(改ざん後)日本農業新聞の掲載原稿(2006年11月3日付け)
1.事実概要
「日本農業新聞」11月3日付け一面に掲載された『農業経営者』の広告はご覧になられましたでしょうか?
本誌では、11月号において集落営農に関する記事を4本掲載しました。それを伝える日本農業新聞紙上の本誌広告では、「犠牲者」「貸しはがし」「矛盾」他の文言がスミで塗りつぶされています。以下にその経緯を報告します。さらに12月号においても、この一連の記事を取り上げることとなった、北上市における読者が受けているいわゆる「貸しはがし」事件についての続報を掲載しています。併せてご注目ください。
11月号掲載の北上市における貸しはがし事件の概要をご理解いただくために、同記事の全文を当ホームページ上でも公開しました。
http://www.farm-biz.co.jp/2006/11/01-063000.php
2.経緯説明
10月31日19時、日本農業新聞広告部から「集落営農」推進に伴う経営者被害を伝える本誌の広告内容に対して、「表現が好ましくない。農協組織が進めている集落営農を推進する運動の利害に反する」という理由から、広告表現を変更するよう求めてきました。また、本誌が変更できないのであれば、同新聞サイドで表現を変える旨の打診もあり、その要求に応じなければ掲載自体を認めない、という条件を通告してきました。いずれも本誌編集部は断りました。
「どのような記事を作成し、どのようなタイトルをつけるか」というのは、当然ながら、本誌編集部の読者に対する責任において行なわれるものであるからです。仮に「この記事が農協の利害に反するほど事実無根というのなら、事実でない根拠を日本農業新聞上で表明し、必要ならば本誌への抗議の声明を出すのが筋である。広告主としてそのままの形での掲載を求める」と返答しました。
日本農業新聞から「変更できないのなら掲載はできない」という回答があったため、本誌編集部では、同新聞が「『農協組織が進めている集落営農を拡大する運動の利害に反する』という理由でどうしても広告を検閲したいのなら、本誌のタイトルを歪曲することなく、報道機関として同新聞がタイトルのどの単語を問題にしているのか同読者に明示する責任があるのではないか」と、と伝えました。結果、「罪」「犠牲者」「貸しはがし」「矛盾」の4つの単語が「農協・・・利害に反する」ため黒く塗りつぶしたいとの回答を得、本誌は同意しました。しかし、連絡を受けた時間が印刷工程の締め切りを過ぎていたため、翌11月1日掲載予定の本誌広告が見送られることになりました。また、翌日昼までに修正を反映したFAXを本誌編集部に送信してほしいと依頼し、これにも合意しました。 その段階での合意内容は以下の通りです。
<修正箇所と修正内容>
◎当初の原稿→10月31日19時の段階で修正に双方合意した原稿
※●はスミ塗りつぶし箇所
集落営農の罪を問う
→集落営農の●を問う
集落営農の犠牲者 岩手県北上市で起こっている「貸しはがし」事件記
→集落営農の●●● 岩手県北上市で起こっている「●●●●●」事件記
農水大臣も善処を約束した貸しはがし事件
→農水大臣も善処を約束した●●●●●事件
試算表に見る集落営農の矛盾
→試算表に見る集落営農の●●
集落営農による貸しはがしは善処する
→集落営農による●●●●●は善処する
ところが、11月1日13時、本誌編集部あてにFAXが届き、確認したところ、昨晩の合意事項である「矛盾」「罪」「犠牲者」「貸しはがし」の4つの単語以外の文言までも塗りつぶしてありました。同日17時、FAXを確認したところ、昨日の合意を得ていない箇所までも塗りつぶされている点を指摘し、約束を守るように伝え、かつ塗りつぶし箇所の痕跡がなくなっているのでどの部分が問題なのかを読者に明示できるようにするよう改めて申し入れ、ともに合意しました。しかし、本誌編集部が修正原稿をFAXされるのを待っていたところ、19時の段階になって、同新聞広告部は本誌編集部に連絡し、「そもそも昨日および同日17時の時点での合意事項はなかった」として、合意事項を反故にしました。そして、再度、どの文言が問題なのか明確にわかる形にして修正を送って欲しいと伝えましたが、同新聞広告部担当者は「それはできない。当方の修正のままでなければ広告掲載を取りやめる」旨通告があったのと同時に、「今回は広告料金を無料にする」旨も伝えてきました。本誌編集部は、翌2日再度話し合いたいと伝え、「本誌は経済的な取引に応じるつもり全くない。したがって、広告料金を無料にする必要はない」と答えました。以上が経緯です。
◎11月1日13時に日本農業新聞が本誌に連絡してきた原稿の内容
10月31日19時の段階で修正に双方合意した原稿→11月1日13時の段階で本誌編集部に送られてきた原稿
※●はスミ塗りつぶし箇所
集落営農の●を問う
→集落営農●●を問う
集落営農の●●● 岩手県北上市で起こっている「●●●●●」事件記
→集落営農●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
農水大臣も善処を約束した●●●●●事件
→●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
試算表に見る集落営農の●●
→試算表に見る●●●●●●●
集落営農による●●●●●は善処する
→集落営農に●●●●●●●●善処する
3.本誌の見解
「日本農業新聞」と『農業経営者』は読者層も異なり、 報道・編集方針も異なるため、利害が相違することも当然ありえます。 その場合、同新聞が本誌の広告掲載を取りやめるという選択肢があります。
しかしながら、本誌編集部が取材の上、得られた事実に基づき発表した言論を、日本農業新聞が明確に、意図的に変える形での掲載をすることは、日本国憲法第21条で保障された<表現の自由>、そのひとつの権利である報道の自由および編集権を実質的に侵害するものにほかなりません。
社団法人日本新聞協会では、日本国憲法で認められた編集権について、1948年3月16日に声明を出しています(以下、日本新聞協会のホームページから引用)。
3.編集権の確保
新聞の経営、編集管理者は常時編集権確保に必要な手段を講ずると共に個人たると、団体たると、外部たると、内部たるとを問わずあらゆるものに対し編集権を守る義務がある。外部からの侵害に対してはあくまでこれを拒否する。また内部においても故意に報道、評論の真実公正および公表方法の適正を害しあるいは定められた編集方針に従わぬものは何人といえども編集権を侵害したものとしてこれを排除する。編集内容を理由として印刷、配布を妨害する行為は編集権の侵害である。(引用終わり)
本誌は、日本国憲法第21条で保障された<表現の自由>はもちろん、社団法人日本新聞協会の提唱する「編集権」の概念について、日本農業新聞はもちろん、本誌を含めた報道機関にすべからく認められるべきであると考えます。
集落営農組織化が進められている現在、農業経営者が被っている経営被害について、日本農業新聞が報道するかどうかは、まさしく日本農業新聞の編集権であり、本誌編集部は一切関知・関与、変更を強要するものではありません。しかしながら、本誌と編集方針が異なる前提があるとはいえ、広告のタイトルの文言を本誌編集部の編集方針とは異なるものに歪曲し、結果的に間違った事実を伝えることは、本誌の編集権の侵害のみならず同新聞の読者にとっての権利、すなわち日本国憲法第21条<表現の自由>で認められている「知る権利」を阻害するもの以外の何物でもありません。
しかしながら、憲法云々以前の根源的な問いを投げかけるとすれば、日本農業新聞が報道機関として、読者に対する説明責任を放棄してしまっているのではないかと思うのです。同新聞は本誌編集部とのやりとりの中で「矛盾」「罪」「犠牲者」「貸しはがし」の4つの単語のみ、「農協組織が進めている集落営農を拡大する運動の利害に反する」言葉だと定義して、双方で紙面では塗りつぶすということで合意していました。にもかかわらず、最終的には必要以上の文言を塗りつぶし、どの文言が問題なのかという痕跡を隠蔽しました。つまりこのことは、結局どの言葉が「集落営農を拡大する運動の利害に反する」言葉なのかを、同新聞が読者に伝えることを意図的に避けて、かつ説明することをも放棄した言わざるをえません。同新聞が「国民に事実を伝える」という使命を持った報道機関であればこそ何が問題であるのかどうか、紙面で明確にする必要があるはずなのです。
また、松岡利勝農林水産大臣インタビューのタイトルについては、本誌編集部が取材の中で、松岡大臣が発言した言葉をその通りに引き出したものです。たとえその発言が「農協組織が進めている集落営農を推進する運動の利害」と抵触するものだからといって、発言の真意を歪曲するような修正を本誌の同意もなく、同時に発言者である松岡農水大臣の同意もなく勝手に行なうことは、報道機関の姿勢として真摯に問われるべきものであります。
また、「集落営農の犠牲者 岩手県北上市で起こっている「貸しはがし」事件記」に登場している、“集落営農の犠牲者”すなわち経営被害者とは、現在北上市農協に所属する伊藤栄喜氏であります。同新聞は「JA組合員の自立とJAグループの総合力発揮に寄与」することを理念に掲げていますが、同企画のタイトルを故意に隠すことも「JA組合員の自立とJAグループの総合力発揮に寄与」することにつながるというのでしょうか。
4.最後に
日本農業新聞が加盟する日本新聞協会の新聞倫理綱領(2000年6月21日制定)は、次のように謳っています。
「国民の「知る権利」は民主主義社会をささえる普遍の原理である。この権利は、言論・表現の自由のもと、高い倫理意識を備え、あらゆる権力から独立したメディアが存在して初めて保障される。新聞はそれにもっともふさわしい担い手であり続けたい」。
また、同協会の新聞広告倫理綱領(1958年10月7日制定・1976年5月19日改正)では、次のように定めています。
「言論・表現の自由を守り、広告の信用をたかめるために広告に関する規制は、法規制や行政介入をさけ広告関係者の協力、合意にもとづき自主的に行うことが望ましい。本来、広告内容に関する責任はいっさい広告主(署名者)にある。しかし、その掲載にあたって、新聞社は新聞広告の及ぼす社会的影響を考え、不当な広告を排除し、読者の利益を守り、新聞広告の信用を維持、高揚するための原則を持つ必要がある。ここに、日本新聞協会は会員新聞社の合意にもとづいて「新聞広告倫理綱領」を定め、広告掲載にあたっての基本原則を宣言し、その姿勢を明らかにした。(中略)1. 新聞広告は、真実を伝えるものでなければならない。1. 新聞広告は、紙面の品位を損なうものであってはならない。1. 新聞広告は、関係諸法規に違反するものであってはならない。」
さらに、ホームページ上で公開されている日本農業新聞の理念は、次のようなものです(ホームページより引用。下線は本誌編集部による)。
1.農業・農村が持つ多面的な役割や価値を発信し、国民各層と手を携えて、共生する公平な社会づくりに貢献します。
2.JA組合員の自立とJAグループの総合力発揮に寄与し、あらゆる協同組合組織と提携、組織連帯のきずなとなります。
3.言論や表現の自由を守り、社会的・文化的使命を果たすため、役員・社員が高い倫理観を持ち、公正で品格ある紙面づくりに努力します。
繰り返しになりますが、本誌編集部がタイトルなどを含めた誌面上でどのような報道をするか、たとえその報道によってどのような結果をもたらすものであろうとも、本誌編集部だけが引き受けなければならない責務であります。日本農業新聞が、タイトル歪曲という形で本誌の報道に関わってきたことについては、非常な憤りと疑問を感じざるをえません。本誌では日本農業新聞に対して、本件に対する紙面を通じての明確な説明を求めるものです。
free dating near you
dating