特集 | ||
あなたの「退き際」、しっかり見つめていますか?
農業経営から撤退する自由 | 農業経営者 12月号 | (2006/12/01)
「引退」そして「撤退」—。これらの言葉に、農業経営者であるあなたは どんな印象を持つのだろうか。農業の世界では「離農」を語ることが、 一種のタブーとして受け取られてきたようにも思う。 しかし、経営における合理的な判断の選択肢として撤退すること、 新たな人生を目指して引退することは、決して否定されるべきものではない。 農業を取り巻く環境が激動な時代だからこそ、離農という 「経営者の勇気ある決断」について、率直に考えてみようではないか。
撤退・引退は経営者が自ら考えよ
日本農業に地すべり的な変化が起きている。その変化は本誌が目指す農業の産業化に向かう変化である。同時にその変化は、農業からの撤退を余儀なくされる者も生み出す。
創刊号以来の読者が、“離農”を理由に購読中止のご連絡をいただくことが増えている。本誌は職業あるいは事業として農業を選び、それにチャレンジする人々を対象とする雑誌である。そんな雑誌をご購読いただいた方々が離農される。そのご報告を特別の想いで聞かせていただいている。
一部地域での集落営農の推進が経営者の意欲を萎えさせることもある。行政や農協関係者による集落営農の推進の中で、ある読者は「僕は自営業者なのです。何で今さら集落の農作業管理人にならなければならないの。もう、こんな村づきあいはうんざりですよ」と、この一連の経緯の中で農業へチャレンジする意欲を失ったと話していた。
現代という時代であればこそ、日本農業には多様なビジネスチャンスがある。とはいえ、地縁関係の中で発展させねばならない農業経営には、他の事業にはない困難も存在するのだ。
一方、昭和13年生まれという北陸地方の読者からは、この秋の収穫を最後に農業を引退したとのお電話をいただいた。3人のお嬢さんはそれぞれ幸福な結婚をし、農業を継ぐ者はいない。でも、老後を奥様と2人で楽しみたいと話しておられた。ハッピーリタイアメントである。
今、現役の読者諸氏は自らの引退の準備をどのように考えているだろうか?
さらに、行政や農協の指導の元で過大な融資や補助金に依存してきた経営力の伴わぬ法人経営が、ただ規模拡大を進めるだけで、市場の変化に対応できず、経営危機に陥っているケースも少なくない。そうした人々の中にも事業撤退を余儀なくされる方もいるだろう。
そんな様々なケースを想定して、今回の特集を考えてみた。
あえて言おう。撤退の道を選ぶことは同時に、新しい人生の出発点に立つことでもある、と。
「経営者よ、自由になれ、本当にやりたいことをやれ!」
経営が順調で「退き際」を考えていないあなたへ…その経営で本当に大丈夫?
読者の中には、今のところまったく事業撤退など考えておらず、 引退する年齢にもなってない、というような人も多いだろう。 しかし、ここで立ち止まって考えてほしい。 経営は順調な時ほど、簡単に落とし穴にはまってしまうものだ。 そこで、本誌から非常にシンプルな問いかけをしてみたい。 「退き際」とは無縁だと思いこんでいるあなたへ…。
●該当する項目にチェックを入れよ
(以下つづく)
現役・元農業経営者が語る 私が離農を考えた理由
経営者が離農を考えたり、離農を決めたりした理由はどのようなものなのか。ここでは、現役・元農業経営者に、それぞれの決断をしようと思った理由について話を聞いた(なお、プライバシーに配慮し、名前や年齢などを変えております)。 (以下つづく)
農業経営というキャリアを活かした第二の人生
様々な理由で農業経営から撤退しながらも、新たな可能性を切り開く人々。 前職のキャリアを最大限に活かすケースもあれば、 新たな能力に磨きをかけて成長することもある。 (以下つづく)
農業経営からの撤退について、数年前なら「もし辞めたらあれをこうやって」と、いつでも考えていたので、農業技術通信社からアンケートが来たとき、「ちょっと書いてやれ」とおもって、キーボードをたたき始めた。
しかし、手がぱたりと動かなくなってしまった。
そう、最近は、そんなこと全く考えていなかったことに気がついたからだった。
今考えているのは、農業経営からの撤退ではなく、部門(作目)ごとに、「これがうまくいかなくなったら、あっちの部門のあれを増やして」等、経営内での事業展開の変更(改善)程度。
経営内での部門毎の撤退こそ考えていても、広い意味でのトータルの農業経営からの撤退は考えないようになってしまっていた。
さまざまな経営形態がある農業に、決まったものは無いと思えるようになってしまった為か(単に鈍感なのかもしれないが)、農業の可能性が無限に広がっているように感じてしまって、撤退が考えられなくなってしまったのかもしれない。
ただ、他によいと思われるもの(自分で出来そうなものが)が見つかったときは、いつでも辞められる準備をしておこうと考えながら、アンテナを高くしようと心がけています。