編集長コラム | ||
『リーダーシップの旅』を読みましたか? | 農業経営者4月号 | (2007/04/01)
そんな2人が論じるリーダーシップ論は、組織論や企業の管理職研修などで一般的に語られるそれとはやや趣が異なる。著者は「人をリーダーシップへと駆り立てるのは、私たち一人ひとりが『内なる声』に突き動かされて、『見えないもの』を見ようとする意思だ」という。さらに野田氏は言う。
「リーダーシップは『見えないもの』を見る旅だ。ある人が、『見えないもの』、つまり現在、現実には存在せず、多くの人がビジョンや理想と呼ぶようなものを見る、もしくは見ようとする。そして、その人は実現に向けて行動を起こす。…(中略)…旅はたった一人で始まる」
そんなリーダーシップを示す例として、野田氏は1989年に「天安門広場で戦車を止めようとして一人で立ちはだかった、名も知れぬ若い中国人の男性」をあげる。天安門の無名の青年にリーダーシップを感じると語ったのは、野田氏が行った南アフリカでのセミナーに参加した若い白人のエグゼクティブだそうだ。
たぶん、かの中国人青年は誰に指示されたわけでもなく、政治的効果を期待したわけでもあるまい。ただ、その彼自身の「内なる声」がそうさせたのだろう。そして、世界に配信された彼の姿は、世界中の人々に中国の歴史の転換を予感させた。同時に、世界の裏側にいる白人の企業管理者に、青年の「内なる声」に共振している自分の心を自覚させたのだ。
中国の変革に力を与えたのは、 鄭小平などの政治権力者たちではなく、その無名の青年のリーダーシップではないのか。そして、彼は、世界中の人々に勇気を与えたのだ。
この本を読んで、筆者は優れた農業経営者たちを思った。最初の動機は様々である。お金を稼ぎたい、もっと大きな農場を経営したい。そんな彼(彼女)の中にある夢(ビジョンや理想)を実現するために、困難にチャレンジする。抵抗にもあう。逆に、変革を望まぬ地域や業界や農業界からお金や名誉を与えられる代償として彼らの居場所作りの手先にされてしまうようなこともある。
でも、少なからぬ人々は、やがて自らが考えていた目先の目的を超えて、自分に与えられた「使命」を自覚するようになっていく。
今、農業そして日本が大きく変わろうとしている。単に農業にビジネスチャンスが訪れているというだけでなく、農業経営者であればこそ果たせる使命を自覚できないだろうか。
最後に、同書の後書きにも紹介されているが、この著作を世に出すために、北上の貸しはがし事件記をはじめとする本誌ライターである秋山基氏の働きがあったことを、我が仲間として誇りに思う。
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