農業技術 | 乾田直播による水田経営革新 | ||
Vol.14 ウルグアイのコメ業界視察 | 農業経営者4月号 | (2007/04/01)
【コメ産業コンサルタント 田牧一郎 -profile
】
日本品種との交配により育種開発を進める試験場
ウルグアイで訪れた育種試験場では、カリフォルニアの大学で学んだという若い育種家から、育成中の品種を見せてもらうことができた。日本品種との交配から、倒伏しにくい品種や脱粒性の良い品種を開発することを主な目的としている。育成中のモミは目標通りスムースで、芒がなく枝梗も取れやすいように見えた。
食味については、日本品種の良い部分を受け継ぐことを目指しているというが、まったくの未知数である。果たして売れるコメになるのか、大きな疑問はある。
収量は10a当たりモミ700~800kg。現在栽培している長粒種と比較して、遜色ない結果を出しているとのことであった。
種子の乾燥保管と選別プラントでは、生モミの荷受から出荷まで異品種との混入が起きないよう、厳重な管理が行なわれている。品質向上の目的からも種子の更新率は高く、契約栽培の場合は、基本的に種子の購入を義務付けると話していた。
乾燥施設でも品種間のコンタミ防止に気を使っている。仕上がり水分も常に均一になるように設定されている。生産者が所有する乾燥施設もあるが、現在では買い取りモミの95%が、精米会社直営の乾燥施設に運ばれているという。
理由は経済性と品質安定対策の一環として、刈り取り時や仕上がり時の水分を管理するためである。また胴割れ対策として、送風の温度管理やテンパリング時間の調整など、乾燥技術の向上にも力を入れている。このため生産者の乾燥施設とはモミの品質に差が出てきたことも、管理の一元化に拍車をかけたようだ。
精米歩留まりの悪いモミは、買い取り価格も低いため、生産者にとっては売上額が減少することになる。スケールメリットを追求した大型施設と、個人経営による小型乾燥所とでは乾燥コストに差が出るため、委託乾燥に出したほうが安く上がるとの判断があるという。
乾燥・精米プラントには、生産指導できる技術者が必ず雇用されている。生産者に栽培技術を教えると同時に、刈り取り適期の指導や、モミの荷受け予定を調整することも彼らの仕事である。
ここでも買い手から生産者へ、要求が直接伝わるシステムが構築されている。栽培品種の選定は、買い手である精米会社の販売事情に左右されると推測できる。生産者は信頼できる精米業者と契約することでコメを完売できるし、また収益確保が可能な価格で買い取ってもらえることで、経営を継続できるのである。
生産指導員に栽培技術を学んでもらい、その情報を生産者に還元する。それが精米工場に必要な原料を供給することにつながり、販売競争力を高める仕組みになっている。2人の指導員に会って話を聞いたが、栽培や乾燥についての知識は豊富だった。
ウルグアイでのコメ作りは、100%乾田直播栽培である。日本品種及びその由来品種の生産には、コスト的にも品質的にも、もっとも安全な栽培方法が乾田直播栽培だと思う。特に大面積を経営する場合には、必要不可欠な栽培方式である。この技術を長粒種に用いているとはいえ、ウルグアイの生産者は豊富な経験を持っている。
収穫時に脱粒性「難」の日本品種に対応するには、日本製コンバインがベストだが、価格が高すぎる。現実的な判断から、米国製コンバインが候補となる。実際、訪問した農家では、米国製コンバインを4台導入していた。
栽培から乾燥・保管までのハードウェアは、短粒良質米生産の条件が既に満たされていると言える。しかし良食味米の栽培ノウハウはゼロである。このソフトウェアの部分を誰がどのように担うかが、将来の鍵を握るともいえる。
精米工場では、最近導入されたという精米機が動いていた。長粒種の精米歩留まりを第一に考え、よく設計された精米プラントである。色彩選別機もヨーロッパ製の一世代前のタイプだが、うまく使われていた。
商品の売り先と顧客の要求を加味し、経済性を追及してできた精米プラントだとの印象を持った。運転技術はしっかりしており、品質検査ラボも充実している。
しかしカリフォルニアに精米工場を作り、運転してきた私の経験から、短粒良質米市場向けの商品を作るには課題が多いことを感じた。市場の要求を満たすには、そのための機械類と運転技術がさらに必要となってくるだろう。
世界のコメ需給や価格の推移、貿易量の展望などについて、精米会社の経営者と意見交換を行なった。私は米国農務省の見解や欧米コメ業界の現状、さらに台湾の事情や日本のコメ輸入制度について説明した。見学のお礼としては、我ながら内容の濃い情報を提供したように思う。
ウルグアイは、生産したコメの90%以上を輸出している。その国を代表する輸出業者や精米業者との会話は楽しかった。彼らは経験豊富な南米のビジネスマンである。時折このような方々と会話することが、私自身の刺激にもなり勉強になる。
また、レストランで昼食中、ウルグアイの産業大臣を紹介された。大臣は昨年11月に東京で行なわれた南米3国の物産紹介展のために訪日し、農産物の輸入促進を行なってきたばかりであった。ウルグアイのコメも日本に輸出できるよう、コメ業界の努力に期待しているとのことであった。
収量は10a当たりモミ700~800kg。現在栽培している長粒種と比較して、遜色ない結果を出しているとのことであった。
集中乾燥システムで低コストと品質安定を実現
種子の乾燥保管と選別プラントでは、生モミの荷受から出荷まで異品種との混入が起きないよう、厳重な管理が行なわれている。品質向上の目的からも種子の更新率は高く、契約栽培の場合は、基本的に種子の購入を義務付けると話していた。
乾燥施設でも品種間のコンタミ防止に気を使っている。仕上がり水分も常に均一になるように設定されている。生産者が所有する乾燥施設もあるが、現在では買い取りモミの95%が、精米会社直営の乾燥施設に運ばれているという。
理由は経済性と品質安定対策の一環として、刈り取り時や仕上がり時の水分を管理するためである。また胴割れ対策として、送風の温度管理やテンパリング時間の調整など、乾燥技術の向上にも力を入れている。このため生産者の乾燥施設とはモミの品質に差が出てきたことも、管理の一元化に拍車をかけたようだ。
精米歩留まりの悪いモミは、買い取り価格も低いため、生産者にとっては売上額が減少することになる。スケールメリットを追求した大型施設と、個人経営による小型乾燥所とでは乾燥コストに差が出るため、委託乾燥に出したほうが安く上がるとの判断があるという。
販売競争力を高める技術指導員の役割
乾燥・精米プラントには、生産指導できる技術者が必ず雇用されている。生産者に栽培技術を教えると同時に、刈り取り適期の指導や、モミの荷受け予定を調整することも彼らの仕事である。
ここでも買い手から生産者へ、要求が直接伝わるシステムが構築されている。栽培品種の選定は、買い手である精米会社の販売事情に左右されると推測できる。生産者は信頼できる精米業者と契約することでコメを完売できるし、また収益確保が可能な価格で買い取ってもらえることで、経営を継続できるのである。
生産指導員に栽培技術を学んでもらい、その情報を生産者に還元する。それが精米工場に必要な原料を供給することにつながり、販売競争力を高める仕組みになっている。2人の指導員に会って話を聞いたが、栽培や乾燥についての知識は豊富だった。
ウルグアイの生産技術に欠けているものとは?
ウルグアイでのコメ作りは、100%乾田直播栽培である。日本品種及びその由来品種の生産には、コスト的にも品質的にも、もっとも安全な栽培方法が乾田直播栽培だと思う。特に大面積を経営する場合には、必要不可欠な栽培方式である。この技術を長粒種に用いているとはいえ、ウルグアイの生産者は豊富な経験を持っている。
収穫時に脱粒性「難」の日本品種に対応するには、日本製コンバインがベストだが、価格が高すぎる。現実的な判断から、米国製コンバインが候補となる。実際、訪問した農家では、米国製コンバインを4台導入していた。
栽培から乾燥・保管までのハードウェアは、短粒良質米生産の条件が既に満たされていると言える。しかし良食味米の栽培ノウハウはゼロである。このソフトウェアの部分を誰がどのように担うかが、将来の鍵を握るともいえる。
長粒種市場に対応した経済性重視の精米工場
精米工場では、最近導入されたという精米機が動いていた。長粒種の精米歩留まりを第一に考え、よく設計された精米プラントである。色彩選別機もヨーロッパ製の一世代前のタイプだが、うまく使われていた。
商品の売り先と顧客の要求を加味し、経済性を追及してできた精米プラントだとの印象を持った。運転技術はしっかりしており、品質検査ラボも充実している。
しかしカリフォルニアに精米工場を作り、運転してきた私の経験から、短粒良質米市場向けの商品を作るには課題が多いことを感じた。市場の要求を満たすには、そのための機械類と運転技術がさらに必要となってくるだろう。
異国のコメ関係者と有意義なディスカッション
世界のコメ需給や価格の推移、貿易量の展望などについて、精米会社の経営者と意見交換を行なった。私は米国農務省の見解や欧米コメ業界の現状、さらに台湾の事情や日本のコメ輸入制度について説明した。見学のお礼としては、我ながら内容の濃い情報を提供したように思う。
ウルグアイは、生産したコメの90%以上を輸出している。その国を代表する輸出業者や精米業者との会話は楽しかった。彼らは経験豊富な南米のビジネスマンである。時折このような方々と会話することが、私自身の刺激にもなり勉強になる。
また、レストランで昼食中、ウルグアイの産業大臣を紹介された。大臣は昨年11月に東京で行なわれた南米3国の物産紹介展のために訪日し、農産物の輸入促進を行なってきたばかりであった。ウルグアイのコメも日本に輸出できるよう、コメ業界の努力に期待しているとのことであった。
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