農業技術 | 乾田直播による水田経営革新 | ||
Vol.15 短粒種の良質米が世界に理解される日は来るか | 農業経営者5月号 | (2007/05/01)
生産体制が整いつつあるウルグアイのコメ農場
昨年末に訪問したウルグアイの大規模コメ生産農場、アグリダイアモンド社では、水田の整備はもちろん、乾燥・精米施設の改良工事など、設備の更新が進んでいた。
良質米の生産農場として、種子生産から製品作り、販売まで、一貫した基盤固めをしている。
2006年のウルグアイは冬の雨量が少なく、コメの作付面積が10%以上も減少した。しかし、アグリダイアモンド社は豊富な水源を抱えていることから、計画通りの作付面積を確保した。雑草である赤米の対策として夏場に耕し整地を行なう「夏季耕作」をほとんどの面積で実施し、ほかの雑草対策も含めて確実な対応ができつつある。
理解されない日本の栽培技術場
しかし共通認識の持てない栽培技術があることも、今回の訪問で明らかになった。カリフォルニアでも体験していたことだが、プライドのある栽培技術者は、熱く自説を通してしまうのである。矢久保氏の乾田直播栽培を紹介したDVDを見てもらっても、長年培ってきた長粒種の栽培技術で、短粒種も栽培すると言う。つまり「播種量が多くなければ収量は得られない」との考え方である。少量の種子を播き、その後の苗立ちと分ケツの確保、そして一歩の着粒数を計算し、期待する等熟歩合と千粒重から単位面積あたりの収量を導き出す基本が、理解されない。たくさん種を播いて多くの苗立ちを確保することが多収につながるという、分ケツの少ない長粒種の栽培技術との認識の違いである。
栽培中のイネは、現地基準でちょうど追肥の時期であり、飛行機による施肥作業が行なわれていた。この時期の追肥の目的と予測される結果について議論となったが、認識の隔たりは消えなかった。通訳をしていたアグリダイアモンド社副社長の田村氏には、「無理して理解してもらわなくともよいですよ」とお願いした。
日本以外では、日本品種の栽培についてのノウハウや、生育特徴に関する情報は皆無に等しいため、理解できないことも無理はない。解決策は唯一やって見せることしかないことを知っている。生産農家は見たことや体験したことの中から、低コストで利益につながることは、教えられなくとも実行するのである。
日本の栽培理論と技術を使い、現実のものとして見せることが重要である。矢久保方式による実証事業の必要性を、強く感じた視察であった。
世界中のうねりがコメ市場を揺るがす
昨年末のUSライス連合会の大会でも、米国農務省の担当官が今後の世界のコメ需給について発表している。生産は横ばい、消費は増加して、需給はタイトになる。バイオディーゼルやエタノール燃料用にコーンなどを使用するため、穀物相場が上昇してコメ価格も押し上げられる。
そして遺伝子組み換え長粒種の混入問題から、EUが米国南部の長粒米を買わないことも原因して、コメ産地の出荷価格が上昇している。ウルグアイでも中東向け輸出が増加し、高価格で出荷されている。水不足によるオーストラリアの作付面積の激減から、アジアや中東などの市場にもカリフォルニアやウルグアイのコメがアクセスしやすくなった。
そして最近のSBSでは、中国米の日本へのオファー減少など、従来と違ったパターンが見える。中国のコメ生産も、国内事情から生産刺激対策は取らないだろうとの予測があり、総生産量は良くて横ばいであろうと見られている。大規模な農地の減少や農業従事者の都会への流出、農村と都市の賃金格差など、日本や韓国、台湾といった工業化の進んだ国が経験してきたことが、中国で現実のものになっているという。この影響が世界の価格や貿易量に良くも悪くも反映されることになる。
短粒種良質米市場は今後どう動くのか
このような状況の中で、日本品種が主となっている短粒種良質米は、今後どのような動きをするのだろうか? 私の見解は次の通りである。
(1)寿司需要の増加
世界的な日本食ブーム、寿司ブームは、長く継続すると思われる。南米のレストランでもメニューに寿司が入っており、短粒種を使用している。米国では中華料理のバイキング店が急増しているが、そこにも必ず寿司があり、良く売れている。価格の安い中粒種が使われているが、寿司人口を増加させる役割を果たしている。
(2)二流品質米の台頭
ただし、ご飯で食べて美味しいコメが絶対的に不足している。栽培ノウハウだけでなく、乾燥や精米技術の重要性も理解されていない。美味しいコメの品質が理解されないまま出荷されるため、価格競争に陥ってしまう。その結果いつまでも品質向上対策に投資できず、二流品質米のみ流通が増加する。
カリフォルニアやウルグアイの業界でも、この見方に理解を示す人々がいる。栽培方法の工夫や、乾燥・精米設備の改善を行ない、食味の良いコメの生産をめざして試行錯誤を繰り返している例もあるのである。これらの取り組みについては、また別の機会に紹介しよう。
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