農業技術 | 乾田直播による水田経営革新 | ||
Vol.16 拡大する愛知県の乾田直播 | 農業経営者6月号 | (2007/06/01)
【コメ産業コンサルタント 田牧一郎 -profile
】
関係者の協力で確立された不耕起V溝直播栽培の技術
愛知県農業総合試験場を訪問し、作物研究部の小出俊則・林元樹の両先生から乾田直播栽培技術について説明をうかがった。愛知県は日本農業の先進地であり、その農業技術開発の中心を担ってきたのが、農業総合試験場である。研究機関としての豊富な技術蓄積があり、直播システムの開発、そして技術マニュアルの公開もできている。
説明してくださった林先生から、この技術は現場との密接な関わりから生まれたものであるとの説明があった。生産者からアイディアや要望が出され、機械メーカーの試行錯誤による作業機開発、普及センターの努力など、関係者がそれぞれの役割を果たして知恵を集積した結果、ここまで安定した技術に仕上がってきたのだという。下に示す表1~2から、この直播栽培は確立された技術であることがうかがえる。大きな特徴は次の5点である。
表1 表2
土中に播いた種子は、接触している土からの水分や、降雨の水分によって発芽状態になる。しかし水中の種子は、2~3日で発芽障害を起こしてしまう。降雨による表面水をいかに早く排出するかが、収量にも直接影響する。
まず播種後、芽が出る直前にグリホサート剤(ラウンドアップ)を散布し、地表に出ているすべての雑草を枯らす。次に苗立ちが確保され、イネが2・5~3葉期になったところで、クリンチャーあるいはクリンチャーバスを散布して、ヒエなどのイネ科雑草を枯らす。そして水を入れてすぐに一発剤を散布し、多年生雑草の対策を行なう。この組み合わせでほぼ完璧に雑草を封じ込めることが可能になる。
問題は散布時期である。農繁期のためにほかの農作業と重なり、散布時期が遅くなったり早すぎたりして、本来期待している効果が出ないことがある。適期適量で効果を最大限にするタイミングを逃さないことが重要である。
表1の中で、順調に増加していた普及面積が、2006年に急ブレーキがかかったように停滞しているのがわかる。理由は春先の長雨で、田が乾く時間が取れなかったのである。このため、直播栽培の準備をしながらも、結局移植に切り替えざるを得なかった面積があった。雨が主たる原因であったことに間違いはないが、関係者は基本技術の徹底が重要であることも痛感したという。排水対策が徹底していたのかに疑問があったとのことである。代かき後に土が落ち着き、作った溝が崩れない程度の固さになった時、溝切り機で一定の間隔で走行することで排水溝ができる。昨年の教訓を生かすように、今年3月中旬の栽培予定地には、いくつもの排水溝が見られた。
(1)代かき作業
冬季代かきによって刈り跡の稲わらや稲株・残渣を土中に入れ、表面をきれいにする。これが播種作業に重要な役割を果たす。代かきは冬季とはいうものの、前作の収穫後から播種までの長い期間の間に行なえばよい。代かき作業の本来の目的である漏水防止にもなる。(2)乾田化
代かき作業の後は溝切りをして雨水対策を行なう。乾田状態で種子を播くため、本田を乾かさなければならない。雨水を早く排水し播種作業をスムーズに行なうため、そして播種から発芽苗立ちまで順調な生育を確保することを目的としている。土中に播いた種子は、接触している土からの水分や、降雨の水分によって発芽状態になる。しかし水中の種子は、2~3日で発芽障害を起こしてしまう。降雨による表面水をいかに早く排出するかが、収量にも直接影響する。
(3)播種作業
充分に乾いた本田に、鋤柄農機製のユニークな播種機で種子を播いていく。ロータリの爪の部分に溝切り円盤を付け、強制回転させ一定の幅と深さの溝を作る。深さと幅の組み合わせが、播種後の鳥害対策にもなっている。地表から5㎝がカラスの嘴が届かない深さであり、幅2㎝は鳥が溝に入れない幅である。 種子は選別後の乾籾を使用し、殺菌剤チウラム水和剤の粉衣のみである。播種量は10aあたり6㎏を標準としているが、3月の早期播種時には8㎏、5月の気温が上がった時期には5㎏程度の播種で十分といえる。催芽は行なわない。特に早期に播くものは、気温が上がるまで種子は動かず、催芽処理は意味を持たない。(4)肥培管理
肥料は播種時の全量1回散布方式である。即効性肥料では種子が肥料焼けを起こし、発芽障害が出ることから、窒素を遅効性の肥料に加工している。つまり苗立ちが確保されてから、徐々に窒素分が吸収される仕組みである。生育後期の窒素が必要な時期に、その多くが使われるようになっており、直播専用肥料として肥料メーカーから発売されている。施肥作業の究極の省力技術である。(5)雑草対策
栽培管理上もっとも問題となる雑草対策であるが、3種類の除草剤でほぼ完全に対応できるという。まず播種後、芽が出る直前にグリホサート剤(ラウンドアップ)を散布し、地表に出ているすべての雑草を枯らす。次に苗立ちが確保され、イネが2・5~3葉期になったところで、クリンチャーあるいはクリンチャーバスを散布して、ヒエなどのイネ科雑草を枯らす。そして水を入れてすぐに一発剤を散布し、多年生雑草の対策を行なう。この組み合わせでほぼ完璧に雑草を封じ込めることが可能になる。
問題は散布時期である。農繁期のためにほかの農作業と重なり、散布時期が遅くなったり早すぎたりして、本来期待している効果が出ないことがある。適期適量で効果を最大限にするタイミングを逃さないことが重要である。
予期せぬ障害雨による作業遅れ対策
表1の中で、順調に増加していた普及面積が、2006年に急ブレーキがかかったように停滞しているのがわかる。理由は春先の長雨で、田が乾く時間が取れなかったのである。このため、直播栽培の準備をしながらも、結局移植に切り替えざるを得なかった面積があった。雨が主たる原因であったことに間違いはないが、関係者は基本技術の徹底が重要であることも痛感したという。排水対策が徹底していたのかに疑問があったとのことである。代かき後に土が落ち着き、作った溝が崩れない程度の固さになった時、溝切り機で一定の間隔で走行することで排水溝ができる。昨年の教訓を生かすように、今年3月中旬の栽培予定地には、いくつもの排水溝が見られた。
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