編集長コラム | ||
撤退する外資小売業に似た農業界 | 農業経営者7月号 | (2007/07/01)
【「農業経営者」編集長 昆 吉則 -profile
】
流通業界のジャーナリスト・緒方知行氏が主幹する雑誌「2020Value creator(価値創造者)」の5月号に「世界一の流通企業ウォルマートは、日本の市場に歯が立たないのか?」という企画記事が出ている。商業界の人々の市場を見つめる視点と分析は、単純な規模やコスト問題だけでしかマーケットを考えないわが農業界の敗北主義の愚かさと、市場社会(顧客)に向かう自らの立ち位置の傲慢さを恥じるヒントを提供してくれる。ご一読をお勧めする。
かつて小売業界にとって「黒船」といわれて日本市場に参入した外資のウォルマート(西友)の苦戦とカルフールの撤退の理由を分析する座談会の中で、柳田信之氏((株)トム代表取締役)はこう解説する。
「同じ成熟といっても日本と欧米では次元の異なるところがあります。日本と欧米の違いは社会の階層の問題だと思うのです。日本は貧乏な人でも、どんなに安かろうとサービスや質が悪いと怒る。彼ら(外資)の、安いんだからこのくらいのサービスで納得するはずだという割り切りには日本人は納得しない。…中略…日本人は状況によっては貧富の差は関係なく、自分の生活観まで変えてしまう。…中略…そのへんを理解しない限り、どんなに量のメリットを追求して価格を下げようとも、日本ではうまくいくはずがないのです」
さらに、日本の小売業のありようをこう説明する。
「矛盾というのを日本人は両立させようと努力します。ところが、西洋の理論は矛盾は矛盾なんだから(仕方が無い)と整理しちゃうのです。だから、(日本の)コンビニが宅配をするとか、御用聞きをするとか、こんなこと考えられないわけです」
わが農業界は、顧客視点どころかいつまで経っても生産者のご都合から自由になれずにいる。さらには「食糧自給率」などと時代錯誤なことを言い出す。食文化の変化に伴って輸入が増えた油脂類と飼料穀物が自給率を下げている原因である。昔の貧しい食生活で人々が満足するというのだろうか。もとより、いくら政治的に農業や農村を守っても、食糧輸入が止まるより先に切実な問題となるはずの石油輸入が止まったら、誰かが鍬で田畑を耕すというのだ。そんな空論を語るより、お客様(国民)に選ばれる農業であり経営者そして農村になる努力をすべきなのだ。
こんな農業界の論理と立ち位置とは、市場からの撤退を余儀なくされる外資の論理のありようにそっくりではないか。ただし、彼らは傲慢さゆえに敗北する侵略者であるが、わが農業界は甘やかされたゆえの駄々っ子の傲慢さを持った臆病な敗北主義者なのである。
欧米の食品小売業の上位5社の市場占有率は欧州では60%、米国でも40%に達する。しかし、日本では10%にも満たない。その理由は、外資が誤解したような安ければという合理性だけでは動かない日本人の文化、あるいはその多様な食文化の要求に応える小売業の競争があるからだろう。そして、ここに日本農業の可能性も見えるはずだ。
大量のコメ在庫を抱えた農協がある半面で、産地評価の低い地域であるにもかかわらず注文に応えきれないと語るコメ経営者も少なくない。顧客そしてビジネスパートナーは産地でも価格でもなく人と経営を見ているのである。
オフィス2020新社の連絡先は03-5573-9037。
さらに、日本の小売業のありようをこう説明する。
「矛盾というのを日本人は両立させようと努力します。ところが、西洋の理論は矛盾は矛盾なんだから(仕方が無い)と整理しちゃうのです。だから、(日本の)コンビニが宅配をするとか、御用聞きをするとか、こんなこと考えられないわけです」
わが農業界は、顧客視点どころかいつまで経っても生産者のご都合から自由になれずにいる。さらには「食糧自給率」などと時代錯誤なことを言い出す。食文化の変化に伴って輸入が増えた油脂類と飼料穀物が自給率を下げている原因である。昔の貧しい食生活で人々が満足するというのだろうか。もとより、いくら政治的に農業や農村を守っても、食糧輸入が止まるより先に切実な問題となるはずの石油輸入が止まったら、誰かが鍬で田畑を耕すというのだ。そんな空論を語るより、お客様(国民)に選ばれる農業であり経営者そして農村になる努力をすべきなのだ。
こんな農業界の論理と立ち位置とは、市場からの撤退を余儀なくされる外資の論理のありようにそっくりではないか。ただし、彼らは傲慢さゆえに敗北する侵略者であるが、わが農業界は甘やかされたゆえの駄々っ子の傲慢さを持った臆病な敗北主義者なのである。
欧米の食品小売業の上位5社の市場占有率は欧州では60%、米国でも40%に達する。しかし、日本では10%にも満たない。その理由は、外資が誤解したような安ければという合理性だけでは動かない日本人の文化、あるいはその多様な食文化の要求に応える小売業の競争があるからだろう。そして、ここに日本農業の可能性も見えるはずだ。
大量のコメ在庫を抱えた農協がある半面で、産地評価の低い地域であるにもかかわらず注文に応えきれないと語るコメ経営者も少なくない。顧客そしてビジネスパートナーは産地でも価格でもなく人と経営を見ているのである。
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