農業技術 | 乾田直播による水田経営革新 | ||
Vol.18 不耕起V溝直播栽培への期待 | 農業経営者8月号 | (2007/08/01)
【コメ産業コンサルタント 田牧一郎 -profile
】
低コストを追求し稲作経営の競争力を強化
コメの価格低下から、競争力のある稲作経営への挑戦が続いている。低コスト栽培はその切り札である。
愛知県では、長年の研究から不耕起V溝直播栽培の技術が確立され、同時にこの技術の普及に関係機関の力が注がれてきた。この技術による作付面積は、愛知県外においても年々増加の傾向にある。
その主な理由は、リスクを伴うものの多くのメリットを持つ新技術を導入し、定着を検討しようとする行政の動きにある。播種機や専用肥料などがセットで導入され、その地方の実態に合うよう改良されていくのであろう。このような取り組みが、競争力ある農業経営の確立に役立つことを期待している。
前回も触れたが、この技術の魅力のひとつは、作業を分散させることである。一人あるいは一農家あたりの移植栽培面積の限界が言われていたが、直播栽培と移植栽培を組み合わせることにより、限界値が大きく上昇した。
また、売れるコメであるコシヒカリの栽培が、比較的容易になったことも大きい。もともと愛知県では倒伏しやすいコシヒカリの栽培は敬遠されてきたが、その問題もほぼ解決された。
移植栽培と比較して収量を落とすことなく、イネを倒さずに育てられることは、生産者にとって大きな魅力となった。
乾田直播栽培の技術体系において重要なポイントはいくつかあるが、精度の高い播種の実現もそのひとつである。
種子を目標通り一定の深さに、一定量播くことが求められる。深さは発芽と苗立ちへの影響、量は株あたりの確保茎数への影響と、いずれも収量に影響する大事なポイントである。移植栽培において株あたり何本何㎝の深さに植えつけるか、という問題と同じ意味を持っている。土中の種子から発芽苗立ちを待つため、移植栽培よりも計画的で正確な作業が必要である。
播種機の開発と製造を行なっているのは、岡崎市の鋤柄農機株式会社である。170年の歴史を有する農機具メーカーで、鎌・鍬の農具鍛冶から作業機メーカーへ発展してきた。「基本は農業の発展と共にある」との考えで、様々な作業機の開発製造に徹している。
乾田直播用の播種機は、愛知県農業総合試験場の試験機をもとに実用化したもので、溝切輪を強制回転させてV溝を作る。その深さと幅は鳥害を防止できるよう計算されており、覆土用チェーンで溝をけずりながら少量の土を種子に被せていく仕組みである。
本体および播種部は社外品だが、これは低コストの機械づくりの基本でもある。すべてを社内で手がけるのではなく、柔軟な対応でコストダウンを図っている。
不耕起V溝直播栽培の技術の確立は、この播種機があってこそ成立したとも言える。当然ながら、耐久性に優れ、使い勝手の良い機械は、作業者からの最大の要求である。一方で、栽培技術の研究者からは、作業精度の高い機械が求められる。さらにメーカーとしては、低コストで生産することが強く求められるところである。
時として矛盾することさえある様々な要求を、可能な限り満足させる技術を結集し、鋤柄農機はこの播種機を世に出した。まだまだ改良の余地はあるだろうが、これからもその高い技術力に期待したいところである。
また、代かき後の排水溝切り作業には、水田管理機を利用しているが、溝の両側に土を盛ってしまい、スムーズに排水できなくなる問題があった。溝切り機を改良し、この問題を解決したのも鋤柄農機である。
道具づくりでは、作業を行なう現場と密接な接点がなければ、よい物は生まれない。農機具づくりの原点である、利用者のニーズに応える姿勢。そこには、170年の歴史の中で一貫して守られている企業理念があった。
不耕起V溝直播栽培の普及面積が、今後も拡大していくことは間違いないと思える。近年は、北陸や東北地方にも広がっている。
この理由は、生産者のコスト意識の表れや、前述のような生産技術に関する普及・研究機関、そして行政も含めた積極的な取り組みの成果と見ることができる。とりわけ大規模生産者においては、作業の集中を避けて総作付面積を拡大することは重要である。
地域の営農集団でも、なんらかの省力化に取り組まなければ、稲作が継続できなくなる恐れがあることを感じているのではないだろうか。
理由の如何を問わず、低コストの稲作技術が普及することは、今後の価格競争に影響を及ぼす。さらなる研究とその普及が望まれるところである。
■参考/愛知県農業総合試験場
http://www.pref.aichi.jp/nososi/
前回も触れたが、この技術の魅力のひとつは、作業を分散させることである。一人あるいは一農家あたりの移植栽培面積の限界が言われていたが、直播栽培と移植栽培を組み合わせることにより、限界値が大きく上昇した。
また、売れるコメであるコシヒカリの栽培が、比較的容易になったことも大きい。もともと愛知県では倒伏しやすいコシヒカリの栽培は敬遠されてきたが、その問題もほぼ解決された。
移植栽培と比較して収量を落とすことなく、イネを倒さずに育てられることは、生産者にとって大きな魅力となった。
播種機を実用化した老舗メーカー・鋤柄農機
乾田直播栽培の技術体系において重要なポイントはいくつかあるが、精度の高い播種の実現もそのひとつである。
種子を目標通り一定の深さに、一定量播くことが求められる。深さは発芽と苗立ちへの影響、量は株あたりの確保茎数への影響と、いずれも収量に影響する大事なポイントである。移植栽培において株あたり何本何㎝の深さに植えつけるか、という問題と同じ意味を持っている。土中の種子から発芽苗立ちを待つため、移植栽培よりも計画的で正確な作業が必要である。
播種機の開発と製造を行なっているのは、岡崎市の鋤柄農機株式会社である。170年の歴史を有する農機具メーカーで、鎌・鍬の農具鍛冶から作業機メーカーへ発展してきた。「基本は農業の発展と共にある」との考えで、様々な作業機の開発製造に徹している。
乾田直播用の播種機は、愛知県農業総合試験場の試験機をもとに実用化したもので、溝切輪を強制回転させてV溝を作る。その深さと幅は鳥害を防止できるよう計算されており、覆土用チェーンで溝をけずりながら少量の土を種子に被せていく仕組みである。
本体および播種部は社外品だが、これは低コストの機械づくりの基本でもある。すべてを社内で手がけるのではなく、柔軟な対応でコストダウンを図っている。
不耕起V溝直播栽培の技術の確立は、この播種機があってこそ成立したとも言える。当然ながら、耐久性に優れ、使い勝手の良い機械は、作業者からの最大の要求である。一方で、栽培技術の研究者からは、作業精度の高い機械が求められる。さらにメーカーとしては、低コストで生産することが強く求められるところである。
時として矛盾することさえある様々な要求を、可能な限り満足させる技術を結集し、鋤柄農機はこの播種機を世に出した。まだまだ改良の余地はあるだろうが、これからもその高い技術力に期待したいところである。
また、代かき後の排水溝切り作業には、水田管理機を利用しているが、溝の両側に土を盛ってしまい、スムーズに排水できなくなる問題があった。溝切り機を改良し、この問題を解決したのも鋤柄農機である。
道具づくりでは、作業を行なう現場と密接な接点がなければ、よい物は生まれない。農機具づくりの原点である、利用者のニーズに応える姿勢。そこには、170年の歴史の中で一貫して守られている企業理念があった。
全国へ広がるV溝直播栽培
不耕起V溝直播栽培の普及面積が、今後も拡大していくことは間違いないと思える。近年は、北陸や東北地方にも広がっている。
この理由は、生産者のコスト意識の表れや、前述のような生産技術に関する普及・研究機関、そして行政も含めた積極的な取り組みの成果と見ることができる。とりわけ大規模生産者においては、作業の集中を避けて総作付面積を拡大することは重要である。
地域の営農集団でも、なんらかの省力化に取り組まなければ、稲作が継続できなくなる恐れがあることを感じているのではないだろうか。
理由の如何を問わず、低コストの稲作技術が普及することは、今後の価格競争に影響を及ぼす。さらなる研究とその普及が望まれるところである。
■参考/愛知県農業総合試験場
http://www.pref.aichi.jp/nososi/
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