提言 | 視点 | ||
菌が醸す人間世界の和 | 農業経営者8月号 | (2007/08/01)
作品の中では、擬人化した菌が色々なことをしゃべる。といっても、僕自身、ファンタジーは嫌いなので、大学図書館で学術書を読んだりして、菌の名前や特徴を勉強した。
コメ粒はすべて同じか
農業は不思議な世界だと思う。たとえば、需給調整のために野菜が廃棄される様子を見ると、これでビジネスになるのかなと感じる。
作中では、登場人物の学生が「日本人は農への関心がえらく低いくせに、安全で安くて安定したモンを欲しがりやがる」と叫ぶ。
べつに社会批判をするつもりはないけれど、スーパーの食品売り場に行けば、いつも「同じもの」が並んでいる。それは誰かがちゃんと作っているからだが、本当は「同じもの」ではない。
僕らが昨日食べたコメと今日食べるコメは違う。茶碗の中の一粒ずつも全部違う。そういうことが現代人にはわからなくなってきている。
農産物の輸入が自由化されそうになると、急に国産品に注目が集まるとか、都会人が田舎暮らしに憧れるとか、そうした風潮についても、ちょっと違うんじゃないかという気がする。
きっと日本の耕作面積はもっと少なくても大丈夫だろうし、「田んぼの広がる風景は安らぐ」と言われると、水田は立派な人工の生産工場ではないのかと首を傾げたくなる。
わずか50回のビジネス
これも作中人物だが、発酵学者にこんなセリフを語らせた。
「コメ作りにプロなんていないんだ。まして完璧なノウハウなんてある訳がない。毎回が一発勝負、しかもお天気という最強にワケ分かんない相手との闘いを毎年行わねばならない」
農家はプロではないなどと言うつもりはなく、ただ農業にはそんな面があるのではないかと、漠然と僕は考えてきた。20歳から70歳までコメ作りを続けても、50回しか経験を積めない。そんなビジネスはほかにない。
主人公が今後、農業とどうかかわっていくかはまだ決めていない。どちらかと言うと、この作品のテーマは、うごめく菌たちが発する「かもすぞー」という言葉に表れている。発酵の世界を通じて、人の和を醸すような物語を描いていきたい。
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