編集長コラム | ||
父の姿が格好良かったから農業を目指した | 農業経営者9月号 | (2007/09/01)
庭先果樹として沖縄にもあったマンゴーを日本ならでは高品質な果物として商品化する技術を確立したのは同氏の父、清一氏である。清一氏の取り組みは30年以上前だ。周りからは変人扱いされ、経済的にも苦しかった。でも、厚氏が中学時代に自分の進むべき道は農業だと決めたのは、マンゴーの栽培技術を確立しようと一心に取り組む「父親が格好良かったから」だという。そして、父は自分の仕事を継げとは言わなかったが、農業を仕事に選ぼうと決めていた当時の大城少年の夢を父以外の誰もが反対していたのだった。文字通り親の背中、その生き様を見て自らの進路と決め生き方を学んだ。
現在でこそ農場は大きな利益を出しているが、経営的に安定したのは最近のことだ。この地に農地を求め自らパイプを組んだ。苦しくとも補助金は一切使うべきでないという考えも親子は一致していた。しかし、生産が安定するようになっても苦労は続いた。営業に走り回った。でも、相手にしてくれる取引先は少なかった。ましてや1o3000円という値段も驚かれた時代もあった。それでも原則を曲げなかったのは清一氏の生き方を見ていたからだろう。
そんな大城さんが今、一番心がけていることは人材の育成だ。しかし、県外から来た若者に土地取得の相談に乗ってあげようとしても思い通りにいかない沖縄人の精神風土もある。耕作放棄状態の農地があっても、島内の人間である大城さんですら、よそ者としてなかなか規模拡大の土地取得ができないのだ。彼らを挫けさせないためにも、大城氏は父が示してくれた生き様を若者たちにも見せようとしているようだ。
ところで、農業関係者たちが「農業に後継者が少ないのは儲からないからだ」と、ことさらのように言うのを僕は嘘だと思う。あえて言えば、その親が子供たちに職業を通して誇りある姿を見せていないからだ。
年に一作か二作という資本の回転の少ない農業は他の職業と比べて儲からないのは事実かもしれない。しかし、稲作でも酪農、畜産、あるいは果樹や野菜などの園芸部門でも、しかるべき利益を出している人は必ずいる。
親にない誇りなど受け継ぎようもないが、誇りある親の姿を見て育った子供であれば、農業を継がずとも誇りある職業人になっていくものだ。それどころか、仮に経済的には困難を極めていても、一心に何かを求め続ける親は、その姿で次世代を育てている。
そもそも、今時、農家だから農業を継ぐ必要などないのだ。好きであればこそ選択であるべきだ。真に受け継ぐべきものがあるとすれば、それは親の誇りなのである。
農業に後継者が少ないのは儲からないからだ
は間違いのない真実である。
給料も小遣いも出ないような職種に参加したい人間はいない。
誇り半分、収入半分。
どっちか片方だけが満たされても頭の良い若者は満足しないのである。
いい加減な事言わず実態をちゃんと反映した物言いすべきだろう。