提言 | 視点 | ||
こだわりから共有の農業経営 | 農業経営者 11月号 | (2007/11/01)
内実のない“こだわり”
研究を続けていると、野菜に対する一般的なイメージと実際のギャップに気づかされることがしばしばある。以前、当社の契約生産者が外食用に作ったコマツナと、スーパーの店頭で「こだわり野菜」として販売されている、値段の高いコマツナとを比較分析したことがあった。こだわり野菜の方が栄養的に優れている印象を持ちがちであるが、現実はその逆だった。こだわりのコマツナに含まれた硝酸は、EUの基準値をはるかに超え、糖度は外食用の半分にも満たなかった。また、当たり前の話だが、農法にこだわったからといって、必ずしもおいしい野菜ができるわけではない。できた作物を測定して検証すること、いいか悪いかを判断する作業こそが大事なのだ。今の時代、消費者はそういったエビデンスを食品に求めている。
成分分析の結果を生産者に伝えると、反応は大きく二つに分かれる。「何を言ってるんだ?」と不満を漏らすか、もしくは「あ、そうだよね」と納得するかのどちらかだ。研究を始めた4年前は、前者の反応ばかりだったが、中身の重要性が伝わってきたのか、最近では後者の反応が増えている。
アドバイスの受け止め方
各地での講演会後、野菜自慢の生産者から、自ら生産した野菜の分析を頼まれることがある。なかには「数値だけ欲しい」と主張し、自らの農法や履歴については明かさない人もいる。1回の分析では判断しにくいと説明するものの、悪いデータが出ると怒ってそれ以降は連絡がつかないというような人もいた。こちらとしては偽りのない数値を明確にすることで、よい作物を作るお手伝いができればと考えているのに、耳を閉ざす姿勢は非常に残念に思う。
一方で、アドバイスに素直に耳を傾けてくれる人が部会の中に一人でもいると、部会全体の取り組み方が変わるケースもあった。ますます情報化が進むこれからの時代は、「自分の畑だけがよければいい」という心構えでは、本当に大切な価値を実現できない。農業経営においても、話を聞き、自分の情報を開示するオープンマインドな姿勢が必要とされるのではないだろうか。
http://www.delica.co.jp/
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