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編集長コラム

NHKの討論番組を見て | 農業経営者 12月号 |  (2007/12/01)

【「農業経営者」編集長 昆 吉則 -profile
10月の第2週以降、NHKが農業・食糧問題を集中して取り上げていた。20日には「日本の、これから『どうする?私たちの主食』」という生討論番組が行なわれた。

同番組には本誌読者もたくさん出ていた。しかし、出演した農業経営者の言葉は、日ごろとは違い、農民代表を演じさせられていた。それは番組中に出される質問が、生産者対消費者との対立を際立たせようという意図で作られていたからだ。
宮城県の面川氏はそんな番組作りの中で、「農民代表」を演じさせられていることへの苛立ちを隠せないかのように、自らも自由化の必要性を自覚しつつ、であればこそ現在の農村の現実をもっと知って欲しい、と述べていた。彼は無原則に農家や農業を守れと言っているのではなく、あたかも農業や農家を安楽死させたいと思っているかのような農業政策や農業の現場を理解して欲しいということだったのだと、翌日に筆者を訪ねてきて話していた。

他の生産者の中にもそうした人々が少なからずいたことは想像がつく。面川氏が、お客さんを招いて農業や農村を伝える一方で、こつこつと営業を重ね、顧客本位の生産者として仕事を続けていることを知っている。すでに少なからぬ農業経営者たちは、十分に顧客本位の仕事をしている。というより、番組の主題である食糧自給率なんてことを考えるより、自分なりのやり方で顧客に必要とされて選ばれていこうと行動している。日本国の食糧自給率を語ることより、自らの農場をどう成立させていくかの方が重要であり、そんなことを言いたくはないのだ。

しかし、生産者として登場している人の中には、生産者の側から食糧自給率の必要性を語り、「国民を食べさせているという責任を自覚して」などと話す人もいた。でも、現代の日本社会の中で、彼らの自らを守って欲しいという本音を実現するためにも、そういう発言が逆効果であることにそろそろ気付くべきだ。

それは、「被害者としての農家・農村」という図式とともに、農業団体が常に語ることである。彼はそれを素直に受け売りさせられている。
一緒に見ていた筆者の娘が言った。
「それなら、看護師さんや介護の仕事をする人はどうだというのでしょうね? そんな人が自分の経済要求を雇用者や社会に伝えることはあって不思議ではないけど、それを言うのに、自分の仕事が尊い仕事だからなんて言ったとしたら、聞く人は白けるよね」

わが娘ながらその通りなのだ。消費者あるいは国民がそう言うのならまだ分かるが、生産者がそれをことさらに語ることへの国民の反応は期待するものとはまったく反対の結果になるのではないだろうか。番組中で行なわれた視聴者アンケートでは、生産者を支持する、自由化反対の意見が圧倒的に多かった。でも、会場の意見と視聴者アンケートの数字のギャップは何なのだろうか。そこに動員された組織的な回答があるのではないだろうか。

番組中でも一部語られていたが、わが国の食糧自給率が下がった理由の一番大きな理由は、日本人の食生活・食文化が変化したことにある。ヨーロッパの国々で自給率が上がったことを指摘する人もいたが、もうひとつ知るべきことがある。ヨーロッパの国々では、昔も今も基本的には食文化が変化していないということだ。筆者は、そうした先進国の対応とは異なる、日本であればこその農業の発展の方向があると思う。
Posted by 編集部 08:30

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コメント

やはり、そうでしたか。生産者の中に自由化は必要であるとの論旨の展開をなさりたいながら、役を演じさせられるように引っ張られてしまったという顔をなさった方がおられましたね。

Posted by 亀山宏  2007/11/06 22:47:13

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