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顧客主義の農業経営者から学ぶコメ経営再生のヒント | 農業経営者 1月号 | (2008/01/01)
先月号ではコメ経営者の経営破綻の事態にあたって、事業者としてなすべきことについてお伝えした。しかし、コメ経営そのものに可能性がなくなってしまったというわけではない。経営努力次第で可能性は広がるのである。では、何をなすべきか? 農業経営者に生まれ変わるためにはどうすればいいのか? 本特集では本誌読者の経営事例を紹介することで、経営改善の方法論のヒントを提示したい。
【第1章】変わらないコメ農政 変えなければいけないコメ経営
先月号の特集「農業経営破綻のとき、あなたは…」について、編集部には様々な意見が寄せられた。記事体裁で恥ずかしい不備がありながらも、読者の方々は内容について評価をしてくださった。まずはそのことについて感謝申し上げたい。
今回の特集は、表裏一体の関係にある「破綻と再生」の「再生」について論を進めるものである。特に第2章では、現在は優れた農業経営者として活躍されている方々のターニングポイントについてまとめた。まだ意識が生産者レベルで事業者になっていない(しかしなろうとされている)方々に、何らかのヒントがお届けできればと思っている次第である。
農業を取り囲むマインドコントロール
特にこの特集で問題にする農業経営者とは、稲作を中心とする水田経営を主たる仕事としている事業者のことだとお考えいただきたい。
本誌は農業経営者に「農業ではなく自らの農場を語れ」と呼びかける。その意味をもう一度確認したい。
農業経営者が目指すべきものは、何よりも自らの農場の経営的成功である。農業経営者が背負っているのは、日本の食糧自給率の低さを心配することでも、集落の維持でもない。あなたは日本農業や地域の“担い手”だから農業に取り組むのではなく、自分の利益を追求するためのはず。それは誰に頼まれるからではなく、自らの意思に基づく人生の選択であるはずだ。その損も得もあなた自身が背負わざるを得ないのだ。その結果においてこそ国や社会あるいは地域に対しての役割を果たしているのだ。 (以下つづく)
仮渡金下落! 今後の事前計画
仮渡金下落ショックが全国を駆け巡って数ヶ月、コメ経営者は今、どんな事業計画を描いているのか? 下落の影響がある人ない人、農協出荷率の高い人低い人で、はっきりとした差が出た。先月号に引き続き、編集部実施のアンケート結果から読み解く。
回答者の28%が「販路拡大」に取り組むと答え、2番目の「コスト削減(25%)」と合わせると5割を超えた。有利な売り先を開拓しながら、経営体質の強化を図ろうとする姿勢を示す極めて順当な結果となった。
次いで、「規模拡大(13%)」「農協出荷縮小・停止(12%)」「新しい転作・作目展開(12%)」がほぼ同列で並ぶ。
回答者を仮渡金影響度別にみると、影響がある層は「農協出荷縮小・停止」を計画する人が2割近くもいることが明らかになった。 (以下つづく)
意気軒昂! 米価低落に負けないコメ経営者の声
去る11月9日、『農業経営者』読者の会では、土門剛氏を講師に招き「コメ価格暴落後の日本のコメ経営」と題した定例セミナーを開催した。また、講演会後の懇親会では、昆編集長の司会で全農仮渡金ショックによる地域の姿、自ら目指す経営のあり方などについて意見をうかがった。
――どのような販売スタイルか?
「基本的には食べてくれるところに届ける、という販売方法をとっている。売るというのはそういうことで、商系に売ればそれでいいということではない。その原則に立って、現在は4割をお客さんに直売している。」
――価格を下げてといった要望は?
「全然ない。味を評価してもらっているので、下げなくていいという声が上がっている」
――顧客開拓としてはどういう方法を考えているか?
「無理には広げない。口コミ、もしくはちゃんとしたつながりがもてるところとかかわりを持つ。無理すると必ずしっぺ返しを食らうと思う」
【第2章】彼らはかくして生産者から農業経営者になった
CASE1:事業者としての魅力が複数の販路を切り開く
農協出荷は楽だが、それでいいのかという思いも生産者が経営者に生まれ変わる上で問われてくる資質は、自分の商品を売り込む表現力であり、最終的には人間としての魅力にほかならない。それがなければ、経営危機を打開する販路拡大もおぼつかないであろう。顧客との出会いのドラマは多様にあるが、ここでは染野実・(有)ソメノグリーンファーム社長の事例を紹介しよう。
茨城県坂東市でコメ23ha、畑作42haを経営する(有)ソメノグリーンファームは、早くからコメを農協出荷から直販に切り替え、規模とともに販路を拡大してきた農場のひとつ。 「うちの農場ではコメ23haに対して、40ha分の注文がある。不足分は、ほかの農家から集めているが、売り先があると声をかけられても、お断りしている状態だ」 (以下つづく)
CASE2:小さな積み重ねが大きなコスト削減を生み出す
価格競争に巻き込まれても生き残るために必要長期的な米価低迷は避けられないことは言うまでもないだろう。どれぐらいの価格で落ち着きを見せるかは、まさに市場次第である。その過程で起こってくるのは今以上の価格競争。これに目を背けるかのごとく、高コストで上質、高級感あるコメを作ることに専念し、自分で価格を設定するという選択もあるかもしれない。しかし、適正な価格での販売を求める顧客の声が高まっていくことは自明の理である。
離農者が増え、以前よりも規模拡大を行ないやすい環境が整いつつある。その意味では、これまで以上にコスト削減に取り組みやすくはなった。 そんななか、米価低落状況に先んじて、長期的な取り組みで経費削減を果たしてきた農業経営者は尊敬に値しよう。地域の条件によってその方法も様々だろうが、ここでは二人の経営者の事例を紹介する。 (以下つづく)
CASE3:コメにとらわれない柔軟な経営姿勢を確立
柔軟な経営姿勢で新たな展望を切り開くそれは伝統なのか、それとも習慣なのか、あるいは勝手な思い込み……。稲作経営を取り巻く環境が変わりつつあることを自覚しつつも、大胆な経営転換ができないのは、コメが高く売れた時代の記憶を捨てきれないからにほかならない。だが、事業者としての経営判断は合理的なものでなければならない。今年の集荷価格で生産費割れが明らかであれば、本格的な経営内容の見直しをしていただきたいと思う。
口幅ったいことを申し上げてしまうことになるが、もはやありきたりのコメ経営を続けていれば、農業をやめざるをえなくなる事態に陥る可能性が否定できないはずである。 しかし、採算がとれないコメづくりをやめることで、農業経営の新しい展望が広がっていくのではなかろうか。また、水田としての土地利用も後作の土壌条件にプラスに働くだけでない。農地を遊休させることなくフルに活用することができるはずである。 (以下つづく)
【第3章】転作品目としての裸麦に秘められた可能性
本誌は府県における畑作野菜経営の可能性を追求してきた。しかし、今まさに経営破綻の危機に瀕す可能性がある “稲作生産者”が取り組むにはリスクが大きい。では、どうすればいいか。本誌としては「生産者から農業経営者への向かうための窮余策として」という留保をつけるが、品目横断補助金交付の対象作物に取り組んでみるのも悪くはない。対象作物の中でも注目したいのが麦、特に裸麦である。
「雑穀は、200億~300億円の市場規模と言われており、今後健康ブームの追い風を受けてさらなる成長が期待できる」
こう語るのは、小塩幹雄・岐阜米穀(株)社長。同社は国産雑穀の半分以上を扱っている卸業者である。関連会社の(株)ライスアイランドのアンテナショップ(東京都千代田区)では、健康機能性を謳ったブレンド雑穀が好評を博している。
「このエリアの客層は健康に対する興味が強い。雑穀に対するニーズは確実にあると感じている。日本人の好みに最も合う、裸麦の生産量が増えればいいのにと思う」と、裸麦に対する買い手側なりの期待を表す。 (以下つづく)
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