編集長コラム | ||
肥料原料問題での全農と農水省の責任 | 農業経営者 7月号 | (2008/07/01)
連休明けに訪ねてきた土門剛氏が開口一番にそう言った。その話を聞いて、予定していた特集を変更し、急遽、肥料問題を今月の特集とした。
「食糧危機は来ない」という意見に関しては九州大学の伊東教授のサイトを参照されたい。 その反面で、肥料問題あるいは肥料原料調達問題に関して、その日本農業への深刻な影響についてまだ一般メディアはあまり関心がないようだ。また、農業メディアにおいても、世界的な肥料原料高騰に関しては伝えても、こうした事態が招来した原因のひとつ、日本国内の肥料供給で大きなシェアを持つ全農の原料調達における失態があることを伝えてはいない。そして、このような事態が生じていることに対して有効な対応をしてこなかった農水省や政治家の怠慢も厳しく問われるべきだと僕は思う。
土門氏の記事と重複するかもしれないが、その背景をここでも紹介しておこう。肥料原料が投機の対象となり高騰していることは農業関係者の間では早くから語られていた。しかし、僕も土門氏の話しを聞くまで、日本ヨルダン肥料会社(NJFC)が生産している「アラジン」の原料について、ヨルダン燐鉱公社(JPMC)からの調達が困難になっているとは知らなかった。NJFCは、全農を中心としたグループ(全農30%、三菱商事10%、三菱化学10%、朝日工業10%で日本側資本60%)とヨルダンの政府系企業JPMCが合弁で設立したのだが、JPMCは1953年には上場、06年に民営化された。その後、アブダビの政府系ファンドであるカミール社が37%の株を持つ筆頭株主になったのだ。投資ファンドが筆頭株主の会社であれば、より高く原料を買う会社(国)を優先するのは当然だろう。NJFC(日本)はインドなどの肥料会社に「買い負け」をしてしまった。原料供給先と合弁会社を作りながら、全農アラジン工場はリン鉱石が手に入らないわけだ。何のためにヨルダンに肥料工場を作ったのだろうか。せめて日本国内市場だけでなく海外マーケットも売り先にできる三菱商事が日本側の主力企業であれば、別の対応もあったかもしれない。でも、鎖国した国の農業団体はそういう思考をしなかったのだろう。また、販売価格を上げられないという国内肥料マーケットの事情もある。
リンやカリといった輸入原料を主体とする化学肥料が不足することは、水田以上に野菜や果樹あるいは麦大豆などの畑作物生産に大きな影響を与える。化学肥料は日本の農業を牽引する役割を果たしてきた。確かに、代替可能な鶏糞は山ほどある。海外から肥料原料の調達が困難になることで、廃棄物の山に埋まった我が国の社会や農業をまともな方向に変える良いチャンスだともいえなくもない。しかし、有機肥料だけで安定した、ましてや低コストに農産物栽培を行なうことは困難であり、消費者はさらに高い農産物を買わなければならなくなるのだということも忘れてはならない。
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