編集長コラム | ||
田牧・木村両氏の“メイド・バイ・ジャパニーズ” | 農業経営者 8月号 | (2008/08/01)
【「農業経営者」編集長 昆 吉則 -profile
】
6月7日、カリフォルニア在住の田牧一郎氏が訪ねて来た。「農・業界」でも紹介した通り、同氏は三井物産との合弁でウルグアイに技術指導と種苗管理を行う現地法人を設立するとの報告のためであった。同時に、そこで一緒に働いてくれる青年を紹介してほしいとも。関心のある方は筆者までお問い合わせを。
同氏は、ウルグアイでの“メイド・バイ・ジャパニーズ”を目指して、本誌とともに読者へ呼びかけてきた。数名の読者とともに現地を訪れ、現地の日系農場との農地貸借に関する交渉も進んでいたが、最終的に日本企業である農場オーナーの了解が取れないまま、計画は頓挫した。それだけに、同氏による現地法人設立の話題は、明るいニュースとして報告しておきたい。
ただし、ウルグアイでは、世界的な穀物高騰を受けて、インディカ米も高騰しており、さらにコメより生産が容易な大豆への転換も進んでいるという。そんな状況の中で、同地でのジャポニカ米生産が急激に伸びるとは言えそうもない。しかし、それは“メイド・バイ・ジャパニーズ”を狙う日本人にとっては競争がなく、むしろチャンスだと田牧氏。しかも、燃料代が上がるにつれて、カリフォルニアから米国東海岸に陸送するより海路で南米から移送する方が物流費も安く済むとか。また、同氏は日本製のレベラーや汎用コンバインがその作業精度の高さや刈り取りロスの少なさゆえに、カリフォルニアやウルグアイで高い市場性を持つことをあらためて強調していた。
一方、青森県の木村慎一氏がウクライナでの大豆栽培に取り組むという話題も、本誌で紹介している。現地に常駐して生産に取り組む甥の木村潤氏の報告を写真データとともに「編集長ブログ」に転載してあるのでご覧いただきたい。ウクライナの素晴らしい土壌を使って木村氏が狙う、無肥料でのNON_GM大豆をカルチベータ体系で栽培する様子が報告されている。
しかし、木村氏の場合も、穀物価格高騰のあおりを受けて、現地の対応が、昨年、一昨年とは大きく変化している。当初は願ったりかなったりの条件を提示して木村氏を迎えていた現地関係者は、手のひらを返したかのように態度が変わってきている。当初、300haで試験栽培する予定が、35haに縮小され、「これでは自分が日本でやっているより小面積」と木村氏。6月17日に再度ウクライナに向かった木村氏からの報告では、新たな農地貸借の交渉もはかばかしくはない様子。でも、同地に向かう前日に会った木村氏は、「そんな簡単にいくとは思っていないよ。ましてや外国。そもそも農業って1年や2年でうまくいくモンじゃない。そんなものでないか?」と例の豪快な笑いとともに話していた。
そんな折も折り、人口爆発と食糧危機への対処を訴え続けているレスター・ブラウン氏(アースポリシー研究所)の単独インタビューをする機会を得た。同氏に二人の話を紹介すると、“本当にそんな日本人がいるのか?”という顔をしながら「それは素晴らしい」と絶賛していた。 世界の食糧争奪戦は確かに存在するが、それとはまったく別次元にある日本国内のコメ生産過剰。意味を成さない生産調整。そして、メディアも急激に食糧問題を取り上げるが、我が国が肥料原料を買い負けしていることの深刻さは、ほとんど認識されていない。田牧氏や本誌関係者の活躍とは裏腹に、鎖国日本はまだ続いていると苦笑して別れた。
ただし、ウルグアイでは、世界的な穀物高騰を受けて、インディカ米も高騰しており、さらにコメより生産が容易な大豆への転換も進んでいるという。そんな状況の中で、同地でのジャポニカ米生産が急激に伸びるとは言えそうもない。しかし、それは“メイド・バイ・ジャパニーズ”を狙う日本人にとっては競争がなく、むしろチャンスだと田牧氏。しかも、燃料代が上がるにつれて、カリフォルニアから米国東海岸に陸送するより海路で南米から移送する方が物流費も安く済むとか。また、同氏は日本製のレベラーや汎用コンバインがその作業精度の高さや刈り取りロスの少なさゆえに、カリフォルニアやウルグアイで高い市場性を持つことをあらためて強調していた。
一方、青森県の木村慎一氏がウクライナでの大豆栽培に取り組むという話題も、本誌で紹介している。現地に常駐して生産に取り組む甥の木村潤氏の報告を写真データとともに「編集長ブログ」に転載してあるのでご覧いただきたい。ウクライナの素晴らしい土壌を使って木村氏が狙う、無肥料でのNON_GM大豆をカルチベータ体系で栽培する様子が報告されている。
しかし、木村氏の場合も、穀物価格高騰のあおりを受けて、現地の対応が、昨年、一昨年とは大きく変化している。当初は願ったりかなったりの条件を提示して木村氏を迎えていた現地関係者は、手のひらを返したかのように態度が変わってきている。当初、300haで試験栽培する予定が、35haに縮小され、「これでは自分が日本でやっているより小面積」と木村氏。6月17日に再度ウクライナに向かった木村氏からの報告では、新たな農地貸借の交渉もはかばかしくはない様子。でも、同地に向かう前日に会った木村氏は、「そんな簡単にいくとは思っていないよ。ましてや外国。そもそも農業って1年や2年でうまくいくモンじゃない。そんなものでないか?」と例の豪快な笑いとともに話していた。
そんな折も折り、人口爆発と食糧危機への対処を訴え続けているレスター・ブラウン氏(アースポリシー研究所)の単独インタビューをする機会を得た。同氏に二人の話を紹介すると、“本当にそんな日本人がいるのか?”という顔をしながら「それは素晴らしい」と絶賛していた。 世界の食糧争奪戦は確かに存在するが、それとはまったく別次元にある日本国内のコメ生産過剰。意味を成さない生産調整。そして、メディアも急激に食糧問題を取り上げるが、我が国が肥料原料を買い負けしていることの深刻さは、ほとんど認識されていない。田牧氏や本誌関係者の活躍とは裏腹に、鎖国日本はまだ続いていると苦笑して別れた。