編集長コラム | ||
「食料自給率39%」の嘘に気付いてください | 農業経営者 10月号 | (2008/10/01)
【「農業経営者」編集長 昆 吉則 -profile
】
多分、本誌は食料自給率が39%になったという大騒ぎやそれが40%になった喜びの大臣会見も、「それがどうしたの? たいした問題ではないジャン」という立場に立つ日本で唯一の農業雑誌だろう。いや農業紙誌に限らず、あらゆるメディアが農水省の大本営発表よろしく垂れ流す、食料自給率(カロリーベース)危機論に載せられているようだ。それが農水省の自給率向上キャンペーンに使う17億円の予算や農業団体が行なうキャンペーンの広告費用を期待してのことだとしたら、メディアとしてあまりにも情けない。せめて役所が配布するプレスリリースに依存するだけの記者の怠慢と無知の結果なのだと思いたい。
「食料自給率」問題が声高に叫ばれるようになったのは最近のことである。しかし、当初はなぜか農業団体を含めた生産者サイドから叫ばれていた。実は議論の中身を検証する以前に、食料自給率論を生産者側が語ることに、僕は怪しさを感じた。乱暴な奴だと思われるかもしれないが、「農業問題」と言われてきたことの本質は「農業関係者問題」であり、それは農業関係者の居場所作りのために語られ続けている、と言ってきた人間である。居場所作りをする農業関係者の中核にいる農水省の大本営発表を、産業としての農業、誇りある職業あるいは事業としての農業経営を実現させようという立場から聞いてきた僕としては、自然の反応だったのである。
そもそも、食料不足を心配する立場にあるのは生産者ではなく消費者のはず。食料が不足して困るのは消費者であり、生産者はむしろそれで儲かるわけだからだ。
言われる通り、日本の自給率が先進国中最低だとしても、今も昔も基本的に食文化が変わっていない欧米先進国と、肉食や油脂の利用を増やしてきたという食文化の大きな変化を体験した日本とを単純比較すること自体、馬鹿げている。現代の日本人は、もともと日本国内で生産されてきた農産物だけでは賄いきれない食文化になっているのだ。しかもエネルギー自給率4%にすぎない国なのである。さらに鉄鉱石、レアメタル、農業生産に必要なリン酸肥料やカリ肥料は、自給率ゼロではないか。それでいて栄養過剰の日本でことさらにカロリー.ベースの食料自給率を騒ぎ立てることの本音は何なのだ。むしろ、世界中で日本食が「最も健康的な食文化」としてブームになっていることを考えれば、日本の農業界や食産業界の経験は世界の食マーケットに大きなビジネスチャンスを与えているではないか。僕がメイド・バイ・ジャパニーズでの海外農業生産の意義を語るのも、そのためだ。
この食料自給率論も農業関係者の居場所作りのための議論であり、矛盾に満ち、日本農業を安楽死させることにしか繋がらない農業政策の破綻を繕うために農水省が考え出した、ウルトラC級の情報操作のキーワードなのだ。
さて、今月号では、すでに世界から相手にされなくなっている、日本政府のWTO農業交渉の愚かしさを伝え、世界の常識に立ったとき、農業経営者は何を覚悟すべきなのかを特集した。その理解を助けるためにも、農水省による大本営発表の典型例として、「食料自給率39%の嘘」を解説した。また、この「インチキ食料自給率に騙されるな」の記事は、読者以外の人々にもご認識を得ていただきたいので、本誌ホームページ上に公開することを読者にお断りしてお許しをいただきたい。
そもそも、食料不足を心配する立場にあるのは生産者ではなく消費者のはず。食料が不足して困るのは消費者であり、生産者はむしろそれで儲かるわけだからだ。
言われる通り、日本の自給率が先進国中最低だとしても、今も昔も基本的に食文化が変わっていない欧米先進国と、肉食や油脂の利用を増やしてきたという食文化の大きな変化を体験した日本とを単純比較すること自体、馬鹿げている。現代の日本人は、もともと日本国内で生産されてきた農産物だけでは賄いきれない食文化になっているのだ。しかもエネルギー自給率4%にすぎない国なのである。さらに鉄鉱石、レアメタル、農業生産に必要なリン酸肥料やカリ肥料は、自給率ゼロではないか。それでいて栄養過剰の日本でことさらにカロリー.ベースの食料自給率を騒ぎ立てることの本音は何なのだ。むしろ、世界中で日本食が「最も健康的な食文化」としてブームになっていることを考えれば、日本の農業界や食産業界の経験は世界の食マーケットに大きなビジネスチャンスを与えているではないか。僕がメイド・バイ・ジャパニーズでの海外農業生産の意義を語るのも、そのためだ。
この食料自給率論も農業関係者の居場所作りのための議論であり、矛盾に満ち、日本農業を安楽死させることにしか繋がらない農業政策の破綻を繕うために農水省が考え出した、ウルトラC級の情報操作のキーワードなのだ。
さて、今月号では、すでに世界から相手にされなくなっている、日本政府のWTO農業交渉の愚かしさを伝え、世界の常識に立ったとき、農業経営者は何を覚悟すべきなのかを特集した。その理解を助けるためにも、農水省による大本営発表の典型例として、「食料自給率39%の嘘」を解説した。また、この「インチキ食料自給率に騙されるな」の記事は、読者以外の人々にもご認識を得ていただきたいので、本誌ホームページ上に公開することを読者にお断りしてお許しをいただきたい。