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新春仮想対談・政権交代と政界再編が農業界に及ぼす影響 | 農業経営者 2月号 | (2009/02/01)
【土門 剛 -profile
】
読者諸兄、新しい年をいかが迎えられたかな。今年の干支は己丑、つちのと・うしと読む。訓読みでは、「きちゅう」。「己」の原義は抑屈して起こるなり。絡み合った状態を整理して、新しい時代を進展させる働きという意味。陽明学の秦斗、安岡正篤先生は「己は紀なり」、紀律ができる年という解釈を残している。「丑」、紐でしめるというのが原義。表意からも連想できるように、手で締め付け、握ることである。社会構造に大きな変化が起き、混乱の中から新たな仕組みが誕生してくる。政界に目を向ければ、政権交代と政界再編が同時進行で起きる。その影響は農業界にも確実に及ぶ。これらを酒の肴に寿丑君と知己君に対談を願った。
知己君 年初から政権交代と政界再編で話題沸騰だな。
寿丑君 民主党に政権が移れば、自民党農政族を裏で動かしていた農協組織の「権力操縦術」にも大きな影響が出てくる。その民主党は、マニフェストを読めば、自民党の農業政策と違って、どちらかといえば、零細規模農へ配慮する方に軸足がある。当面、政策のすり合わせに大きなエネルギーを費やさなければなるまい。
知己君 別の意味で大変だね。
寿丑君 昔懐かしい言葉を使えば、農水省、自民党、農業団体の三者による「55年体制」の崩壊かな。霞が関にとっては、まさに未体験ゾーンの領域に入っていくわけだ。しかも民主党が長期政権になる可能性は少なく、いずれ政界再編という事態も十分に想定できる。政界の大津波を受けても政策が揺るぎないようにするには、自分たちの足元をしっかりと固めておく必要がある。
知己君 そんな深謀遠慮もあって農水省改革チームを立ち上げて緊急提言をまとめたのだね。
寿丑君 それもそうだが、やはり直接のきっかけは、事故米スキャンダルで大臣と次官のダブル辞任だった。石破茂大臣は、防衛オタクでもあるが、もともとは農政族。防衛省だけでなく農水省のことももよく知っている。大臣が、このままではいけないと思い、改革を決断されたのだ。石破大臣は、谷津義男や西川公也のように全農に使い走りをさせられている農政族とは違って改革を志向する政治家の一人である。米政策改革大綱を策定する際に自民党内で立役者の一人だった。
知己君 悪評さくさくの麻生政権で石破さんを農水大臣に据えたのはヒット作だったね。
寿丑君 どんな政権でも一つぐらい見所があるものだ。石破さんの長所は、物事をよく理解して、目的と目標をはっきりと定め、直線的に解決しようという政策手法かな。
知己君 それが改革チームにも反映したのか。
寿丑君 課長クラスだけで編成したのも石破さんだ。局長クラスも入れた編成だと旧弊に流されるが、若手ならその恐れがないと考えたのであろう。チームを立ち上げて2カ月弱で緊急提言をまとめたよ。
知己君 大手メディアの評価はイマイチだったね。
(以下つづく)