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農場視察セミナー『農業経営者』編集長と訪ねる日本の農業現場 第4回開催 (2013/10/23)
農場視察セミナー
『農業経営者』編集長と訪ねる日本の農業現場
大小を問わず日本農業の現在を示唆する多様な農業・農村経営の現場を訪ねてみませんか?
そこで、農業をやってみたいと考えている方や、起業や新事業開発を考えていらっしゃる皆様を主な対象として、農業経営の現場を視察しつつその意議と多様な日本農業の可能性を学ぶ『農通農業塾・農場視察セミナー』を開催いたします。視察には『農業経営者』編集長の昆吉則が解説役として同行致します。 皆様のご参加をお待ちいたしております。
水田農業イノベーションの実際を現地に観る
農地は借り手市場に変わる。問題は規模拡大を実現する技術的課題
水田農業あるいはコメ生産のコストダウンのために多くの農業関係者は、規模拡大あるいは農地の集積の困難さが問題であると語ります。しかし、それは本当でしょうか。農地の貸借はすでに貸し手市場から借り手市場に変化している地域も少なくありません。規模拡大や農地の集積はやがて問題ではなくなります。しかし、仮に規模拡大や農地集積が可能になったとしても、それだけでは稲作経営のドラスティックなコストダウンはできないのです。ところが、規模拡大の結果だけではない水田経営のコストダウンを実現するイノベーションに取り組む農業経営者たちが登場し始めています。
今回ご紹介する水田経営者の話題は、行政関係者や農業経済学者が語る農業問題の一般論とは異なると思います。しかし、あと数年もすれば水田農業は彼らのようなイノベーションを実現できるものでなければ経営的に成立できなくなるでしょう。彼らの取り組みとその課題を知ることは、農業関連業界人の今後の事業展開を考える上で極めて重要であり、行政関係者や農業問題を考える企業人にとっても、語られている農業問題とは違う先端的経営者の実際を知ることにつながるはずです。
今回の視察セミナーでは、千葉県柏市の(有)沼南ファーム(橋本茂社長)と(有)柏みらい農場(染谷茂社長)という二人の水田経営者を訪ね、水田経営の規模拡大や農地集積についての現状と課題を知ると共に、先端的農業経営者が取り組む水田経営イノベーションの実際を紹介解説します。同時に、関係者のご協力を得て、水稲生産のイノベーションの核となる技術である代かき・田植えをしない乾田直播の作業実演をご覧いただく機会を作りました。水田経営の新しい可能性を知る機会として多くの皆様のご参加をお待ちいたします。
今回の視察先のひとつである千葉県柏市の(有)沼南ファーム(橋本茂代表)は稲麦を併せて100ha弱の経営です。作業エリアは約200haに及びますが、数年後には「沼南ファームがその200haのほぼ全てを面倒見ざるを得ないことになるだろう。また、そうした地域の要請に答えていくのが我が社の責任」であると橋本氏は言います。なぜなら、その200haのエリアの水田農家で後継者がいるのは沼南ファームだけだからです。年金農家も高齢化し、これ以上の機械投資ができる農家はもういません。これは、都市近郊である千葉県柏市だけのことではありません。日本のどこでも同じことが起こっているのです。それに対応して湘南ファームでは200haに対応できる乾燥調製施設を新設するとともに、借地した作業条件の悪い湿田の改良と圃場の合筆を自らの手で進めています。沼南ファームのケースは我が国の平場の水田農業の未来を示していると思われます。
(有)沼南ファームの記事
また、仮に規模拡大が進み、農地が集約されればコストが下がるという議論も正しくはありません。規模拡大や農地集積は必要なことですが、それだけではない慣行稲作技術のイノベーションがなければ、稲作のコストダウンは実現しません。
平成23年度の全国平均の1俵当り水稲入生産費は1万6,001円です。15ha以上規模の平均でも1万1,080円であり、それ以上の規模になっても必ずしも生産コストは下がっていません。その理由を多くの農業関係者は、農地が集積されておらず圃場間移動が必要なためであると解説しますが、それだけではありません。今回ご紹介する乾田直播の技術体系で水稲生産をする岩手県花巻市の盛川農場では、1俵当り6,500〜7,000円での米作りを実現しています。盛川農場の実績に関しては、東北農業研究センターによる報告も出されています。
仮に、規模拡大が進み、農地の集積ができたとしても、水稲の慣行技術体系であるロータリによる耕耘や代かき、そして田植え機による移植を行なっている限り、その作業速度に限界があり、適期に作業を済ませようとすれば、追加的な機械投資や労働力が必要になるため、生産コスト低減は頭打ちになります。場合によっては規模拡大がコストアップの原因になることすらあります。
例えば、ロータリ耕の作業速度は時速2km程度、田植機で1.5km程度と、畑作で一般的に使われる作業機と比べて作業スピードの制約があります。これに対して、畑作の耕耘手段として使われるプラウやスタブルカルチあるいは畑作用鎮圧作業機では時速6〜8km、水稲の播種にも使えるドリルシーダでは10〜13kmといったスピードで作業が行えます。その作業速度は慣行技術体系の3倍から10倍近いスピードです。こうした畑作作業機を使い、春作業は麦の場合と同じ技術体系で代かき・移植を行わずに水稲生産をするのが乾田直播という技術です。カリフォルニアやイタリアなどの稲作との比較では、規模の差だけではなくこの作業手段の違いが生産コストの差を広げる要因の一つになっているのです。
また、移植体系では育苗とその苗運搬には多くの労働費を必要とし、育苗ハウスなどに設備・資材コストも掛かります。そのために水稲の直播が推奨されていますが、現在の我が国の直播の主流は代かきをした上で直播する堪水直播が主流です。堪水直播も省力・コストダウンにつながり、特に雨の多い我が国の稲作では必要な技術です。しかし、低速での代かき作業をしている限りその作業時間がコストアップの要因になります。でも、乾田直播では畑状態でレーザーレベラやバーチカルハローあるいはカルチパッカ等の鎮圧作業機を使うことで代かきをせずに水稲作を行なえます。ただし、乾田直播はトラクタによる作業となるため、雨が降ると作業ができません。その場合でも、無代かきのまま田に水を入れ、堪水直播や無代掻きでの田植えが行えます。乾田直播か堪水直播かの違い、あるいは移植をするかどうかではなく、代かきをせずに畑作作業機での高速作業で水稲作を行うことに水田経営のイノベーションがあるのです。
その価値は、作業速度が速く適期を守って規模拡大ができるだけではありません。水稲も麦も大豆も、さらにはジャガイモその他の野菜やトウモロコシなどのような飼料作物も同じ技術体系になることにより、機械の償却コストを低減させ、稲作だけではなく他の作物も含めてのコストダウンがはかれることになるのです。しかも、乾田直播による稲作では圃場が固く締まることで秋の収穫作業が容易になるだけでなく、適正な技術が定着すればコストの低減だけでなく収量・品質も向上します。
視察当日には、柏みらい農場において、水稲の場合と全く同じ技術体系で小麦のための耕耘・砕土・整地・播種・鎮圧の作業を見ていただきます。
2013年11月13日(水)13:00~17:00
[視察場所]
(有)沼南ファーム(橋本茂社長)
(有)柏みらい農場(染谷茂社長)
【視察コース】(予定)
13:00 JR常磐線我孫子駅集合
13:10 バスにて出発
13:30 (有)沼南ファーム 視察
橋本茂氏、橋本英介氏による説明と質疑応答
14:30 バスにて柏みらい農場へ移動
15:00 (有)柏みらい農場到着
15:10 柏みらい農場圃場にて作業見学と質疑応答
(乾田直播と同じ技術体系である小麦の砕土・整地・播種・鎮圧作業を見学)
16:30 バスにて柏みらい農場出発
17:00 JR柏駅にて解散
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