ひとは誰しも必ず死ぬ「苦」の世界に生きている。ところが、苦を解く「和」の世界について考える人は少ない。人生の大半を占める“働く”という場に和をつくれば、ひとは努力し自ら育つ。結果、組織も成長する。
数年前、土壌関係の学会に講演に呼ばれた時、「我が団体には若い人が入ってくれないで困っている。どうすれば組織が活性化するのか?」と聞かれた。手前味噌だが、僕の話をきいて和郷園には若い人がたくさんいて、組織がうまく機能している印象を受けたのだろう。これはどうしてなのだろうか。その要因を自分なりに考えてみると、組織作りで大事にしている「和」の効果であるような気がする。
大層なことを言ってしまえば、人は必ず死ぬ、「苦」の世界を生きている。そこで必要なのが和の世界だ。和があれば、苦の世界から少しでも遠ざかれる。もちろん家庭生活や趣味で和を作るのもいい。ただし人生の大きな時間を占める“働く”という世界においては、自分達の組織の中で自発的に和を作っていきたい。その和の郷土が「和郷園」というわけだ。
(以下つづく)
木内博一(きうち ひろかず)
1967年千葉県生まれ。農業者大学校卒業後、90年に就農。96年事業会社㈲和郷を、98年生産組合㈱和郷園を設立。生産・流通事業のほか、リサイクル事業や冷凍工場、カット・パッキングセンター、直営店舗の展開をすすめる。05年海外事業部を立ち上げ、タイでマンゴー、バナナの生産開始。07年日本から香港への輸出事業スタート。現在、ターゲット国を拡大準備中。本連載では、起業わずか10年でグループ売上約50億円の農系企業を築き上げた木内の「和のマネジメントと郷の精神」。本連載ではその“事業ビジョンの本質”を解き明かす。