【同志社大学政策学部 教授 経済学博士 太田 肇】
これまでの日本社会は、自分の所属する企業や共同体などの組織を“公”と呼び、それを“私”よりも優先してきた。組織に従順だったのは、忠誠を尽くせば生活や仕事が保証される暗黙の了解があったからである。
しかしこうした組織では、個人の視点が内部に向かってしまう弊害が生まれる。顧客には組織が一丸となって対応するため、外を見ているのはトップだけ。構成員は組織という囲いの中で内側だけを見ていればよかった。結果、個人は上司の評価や同僚との比較ばかりを気にして、競争するにも努力の方向がずれてしまう。外国の組織だと個人は仕事の成果を上げることに専念するが、日本の場合、いかに頑張っているかという「様子」のみをアピールするのだ。