減反強化で農家の農協離れを誘発
石破茂農水相の「減反見直し」発言に、自民党農政族が猛反発している。その「理論的支柱」は、いまや農政族の幹部クラスにのし上がった農業政策基本委員会の西川公也委員長。最近、「理論」の集大成を党の機関誌に連載(3回)してこられた。さすが学究の道(東京農工大・大学院卒)にも進まれただけあって、タイトルも「農業政策講座」。中身は羊頭狗肉。選挙前とあってか、単なる政党のプロパガンダでしかない。
本論の前に、「減反見直し」発言についての総括を改めてご披露しておきたい。これを打ち出した石破農水相の本意は、米価を国際水準近くにまで下げて、コメの需要拡大につなげ、日本のコメに「元気」を注入、生産者には米価下落分を経営安定対策で埋めようというものであろう。
これは水田の潜在的な生産力に着目した至極真っ当な政策である。少々粗っぽく説明すれば、米価を国際水準価格近くにまで近づけてコスト競争力を増せば、コメの需要は飼料用米や米粉など新たな需要や、加工用の需要も増えるであろうと考えたのである。マーケットのメカニズムを正しく理解した考えで、筆者も大賛成。
小学生でも分かるのは、国際水準価格近くにまで近づければ、年間80万tに達したミニマム・アクセス(MA)米の扱いも整理ができる。それだけでも減反緩和の一助になると期待できる。いずれWTO農業交渉も決着する。かりに低率関税受諾という展開になれば、減反制度が従来のままというわけには参らない。
それはそれとして、減反面積の上積みはこれ以上無理。これ以上強制的に農家に割り当てれば農家の猛反発を喰らうだけ。その矛先は政治と行政と農協に向かうことは火を見るより明らか。早晩、「減反見直し」発言は避けられないのである。
西川センセーほどのインテリが、これに反対するのは解せない。手を変え品を変え従来の減反手法を続けても、米価を維持することは不可能なことがご理解頂けないのは残念。それよりも日本のコメが競争力をなくし、若い農業後継者も育てることができなかったことをいかにお考えか。農協も減反強化と同じペースですっかり元気をなくしてしまった。
「減反見直し」発言に西川センセーが猛反対する理由。懸命なる読者諸兄は何となくお分かりだろう。「減反見直し」発言の前提に「選択減反制」導入があり、これに農協組織が猛反対していて、西川センセーはそれを忠実に代弁しただけの話。
(以下つづく)