30年間で3分の1以下に激減した散布回数
専門家 いよいよ「防除ラボ」も今回が最終回。特別ゲストとして、本誌執筆陣の関さんにご登場いただくことになりました。茶の栽培歴が大変長い方なので、その間の病害虫の変遷やその原因をうかがってみたいですね。また、農薬使用回数がかなり少ないので、IPM(総合的病害虫管理)の実践面でのお話も聞いてみたいと思います。
関 茶の栽培については私は2代目なんですが、取り組み始めて32年になります。コンサルタント業務がありますから、茶を専業でやるわけにはいきませんけど、病虫害の変遷はつぶさに見てきました。
専門家32年の間に、どんな変化があったのですか?
関 コカクモンハマキとチャハマキの被害がだいぶ減りましたね。防除をかなりサボっても、あんまり出てこないんですよ。かつては静岡県の南部地域にたくさんいたんですけど、その密度が減って、今では50㎞くらい北にある川根茶の産地で増えているようです。原因には気候の変化もあるかもしれないけど、それ以上に防除の仕方が変わってきたからじゃないかな。
専門家 IGR剤やネオニコ剤が普及し始めてから20年近く経ち、茶では特にそれ以前の殺虫剤は目立たなくなりましたよね。ハマキコン(交信攪乱剤。虫のフェロモンを散布することにより、雄と雌が出会うことを防ぐ。フェロモン剤とも呼ばれる)により、ハマキ類の密度が下がったとも考えられます。
関 そうですね。天敵への影響が強い合ピレ系を、みんな使わなくなってきたんですよ。コカクモンハマキとチャハマキの幼虫は、若齢のうちはほかの殺虫剤にも弱いんだけど、タイミングが遅れて加齢すると、昔は強い合ピレ系じゃないと対処できなかったんです。そういう中でロムダンのようなIGR剤が出てきて、天敵への悪影響が少なくなったことが、害虫全般が減った主要因だと考えています。近年もカスケードなどの脱皮阻害系の新薬が結構出ましたしね。
(以下つつづく)